グッドイヤーウェルトとマッケイ、製法による革靴の履き心地を考える

 

革靴の製法っていくつか種類がありますが、その中でよく比較されるのがグッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法です。
それぞれに特徴があり、それが履き心地に関係してきます。そこが革靴のおもしろさのひとつです。
その辺りをご紹介しつつ、それぞれの履き心地について考えてみたいと思います。

 

ちょっと長くなりますが、いろんな角度から比較をしてみたいと思います。
よければお付き合いください!

 

 

グッドイヤーウェルト製法とマッケイ製法の違い

このふたつがよく比較されるのは、革靴の代表的な製法だからではないでしょうか。
それぞれの製法についても

 

グッドイヤーウェルト製法とは

まずは、グッドイヤーウェルト製法(英語:Goodyear Welt / Welted)のご紹介です。グッドイヤーウェルテッドと表記されることもあります。

 

 

特徴
製法 ・リブテープを使った丈夫な底付け
・高さが生じるので中物が多い
見た目 ・コバが出っ張り重厚感が出やすい

 

 

上のイメージのように中底の下にリブテープという、アッパーとウェルトを縫い付けるためのテープを機械で接着することで、つくりの丈夫な靴底を実現していることが特徴です。

 

リブテープにより高さが出て、中底と本底(アウトソール)の間の『中物(コルクなど)』を比較的多く入れられるため、長時間履いても比較的疲れにくいという特徴があります。
逆に、その靴を長く履いているとだんだん中物が圧迫され、中底が沈むという特徴もあります。
また、ウェルトを介して本底を縫い付けるため、コバの幅に幅が生じて見た目にも重厚感のある靴底に仕上がります。

 

本底はレザーソール(革底)もダイナイトなどのゴム底もどちらも使われることがあります。
多くの製造工程を機械によって製造するため、オーソドックスな高級イギリス靴だけでなく、海外ブランドや日本製のブランドにも多い製法です。

 

 

ちなみに、名前の語源はグッドイヤーさんによって作られたことが、名前の由来になっています。グッドイヤーウェルト製法の特許を取得したのは1897年と言われています。

 

マッケイ製法とは

マッケイ製法(英語:McKay)とは、上のイメージのように中底から、アッパーと本底を丸ごと縫い合わせるのが特徴です。マッケイ式製法と呼ばれることもあります。

 

 

特徴
製法 ・中底、アッパー、本底をまとめて縫い合わせる
・作業工程が少なく素材も少ない
見た目 ・コバが出ない細身のシルエット

 

 

靴底がアッパーより外側に出っ張らないので、細身でエレガントなシルエットの革靴を実現できます。
また、構造上マッケイ製法はグッドイヤーと比べると作業の工程が少なくなります。リブテープがなく、中物を入れる量も少なくなるため、軽くて柔軟性の高い靴に仕上がります。

 

ちなみに、ゴードン・マッケイさんがこの製法用の機械(ミシン)を発展させたことが由来であると言われています。マッケイさんがライアン・ブレイクさんからミシンを買い取ったのが1856年。そこから徐々にマッケイ製法が確率されたのだと考えられます。

 

グッドイヤーとマッケイの見分け方

それぞれの見分け方です。
上の図でもご紹介しましたが、ソールの縫い付け方に違いがあります。

 

 

グッドイヤーは、中底にリブテープを貼るため、縫い目がありません。
逆にマッケイは、中底と本底をまとめて縫い付けるため、靴の内側から縫い目が確認できます。

 

 

その他の製法については、こちらの記事でご紹介しています。

革靴の底付け製法まとめ

 

 

グッドイヤーとマッケイのメリット・デメリットを比較

次に、それぞれ特徴を、メリットとデメリットという形で比較していきたいと思います。
まずはざっくり大まかにそれぞれの特徴を一覧にしてみましょう。

 

グッドイヤー マッケイ
履き心地 ・馴染むまで時間がかかる
・中物のクッション性
・長期的にみると疲れにくい
・返りが良く足を包み込む履き心地
・クッション性は低い
・長時間の着用は疲れやすい
軽さ ・素材が多いので重い ・比較的軽い
値段 ・作業工程が多く価格は抑えにくい ・構造が単純なのでコストを抑えやすい
防水性 ・比較的防水性が高い ・本底の縫い目から水が染み込みやすい
寿命 ・ソール交換しやすい
・修理をすれば長く履ける
・ソール交換に向かない
・グッドイヤーよりは短命になりやすい

 

ざっくりですが、こんな感じです!

 

おすすめなのはどっち?

まず、一番先にお伝えしたいのは、どちらがおすすめでどちらが優れているということはありません。
それぞれに良さがあり、それぞれに特徴があるからです。

 

僕はどっちも好きです!

 

馴染み方と履き心地の違い

製法が違えば足への馴染み方が違います。
履き心地という観点からも、それぞれの製法を比較してみましょう!

 

馴染み方
履き心地
メリット デメリット
グッドイヤー ・沈み込んで馴染む
・長時間着用に向く
・馴染むまで時間かかる
・返りが悪い
マッケイ ・柔らかい履き心地
・返りが良い
・中物のクッション性低い
・長時間着用に向かない

 

グッドイヤーの沈み込み

先にご紹介したようにグッドイヤーの方が中物を多く使用しているので、長く履いていると体重がかかって微量ながら圧縮され、足の裏に馴染んでいきます。
これを『沈み込み』と呼びます。

 

履いているうちに革が伸びたと思われている方は、もしかするとこの沈み込みのせいで靴が大きくなったと思われているのかもしれませんね。

 

また、沈み込みを考慮して、少しだけキツめでサイズ選びをした方が、後々ちょうどよいサイズで履けるかもしれません。ただ、キツめの靴が足に馴染むまでキツくてキツくてたまらない、というのは避けるべき。
立ち仕事や外回りの方はきっと辛いです。笑

 

マッケイの靴も中物が使われているので、多少沈み込みがありますがグッドイヤーと比較すると少なくなります。なのでマッケイの方が、クッション性が低いという考え方もあります。

 

マッケイは返りが良い

また、グッドイヤーは中底にリブテープが貼られているため、マッケイに比べると靴の屈曲がしにくい構造になっています。
これは歩く時の靴の屈曲に影響し、『返り(かえり)』が良いとか悪いと表現されます。
グッドイヤーの方がマッケイに比べて返りが悪いので歩きにくさを感じたり、靴のサイズが合ってないとかかとが浮きやすくなったりすることがあります。

 

一方マッケイは、新品の状態でもグッドイヤーほどの硬さがなく、ストレスなく履ける場合も多いと考えられます。

 

軽さの違い

次は靴の軽さについてです。

 

軽さ
グッドイヤー ・素材が多いので重い
マッケイ ・比較的軽い

 

マッケイより、グッドイヤーの方が靴底に使われる素材が多くなります。なので、グッドイヤーの方が重くなる場合が多いです。

 

しかし個人的には、重さは歩く上ではそれほど関係なく、靴の硬さや返りの良し悪しによって、なんとなく歩きにくく感じ、それを重いとか軽いと勘違いしているのではないかと思います。グッドイヤーでもそれなりに馴染んでしまえば、重くて歩きにくいと感じたことは僕はありません。

 

しかし、全てのことに共通することだと思いますが、靴のデザインやサイズによっても感覚は変わると思うので、一概に製法のせいと決めつけるのは相応しくないのではと思ってます。

 

値段・安さの違い

次は値段についてです。

 

値段
グッドイヤー ・素材も工程も多いので高い?
マッケイ ・比較的安い?

 

マッケイ製法で作られた革靴の方が素材の数や作業工程が少ない分、安い値段がつけられてもよいハズです…。

 

しかし、値段はブランドにもよるので、マッケイ製法が安いかと言われれば全然そんなことはありません!なので、安いから劣った靴、高いから優れた靴と考えるのは、あまり賢明ではないと考えます。

 

雨の浸水性と通気性

次は浸水性と通気性についてです。

 

浸水性
グッドイヤー ・比較的に内側へは浸水しにくい
マッケイ ・靴底の縫い目から浸水しやすい

 

マッケイは浸水性、良し

マッケイ製法は、靴底と中底を直接縫い付けるため、雨の日には浸水しやすい構造であると言えましょう。
僕の経験上、雨の日に浸水しやすいマッケイの靴もありますが、内側にはほぼ水が入ってこないマッケイの靴もあります。

 

でも確かにグッドイヤーの靴は内側まで浸水しにくい気はしますが、靴底がレザーソールの場合はもれなく雨水を吸いますので、マッケイでもグッドイヤーでも雨の日にはレザーソールを履かないのが一番だと思います!

 

通気性はどちらも…

グッドイヤーもマッケイもどちらも通気性はいいとか悪いとかではなく、蒸れるもんは蒸れる。笑

 

もちろん通気性を考えられて設計されている靴もありますが、1日履いた靴は2〜3日休ませるのがベストだと思います!

 

 

グッドイヤーとマッケイの寿命と修理について

製法が違えば修理の方法も違ってきます。
これが靴の寿命に大きく影響してくるわけですね。

 

修理 寿命
グッドイヤー ・オールソールしやすい ・修理可能で長く履ける
マッケイ ・オールソールには向かない ・グッドイヤーよりは寿命が短い

 

オールソールの回数

オールソールは磨り減った靴底をまるごと取り換える修理のことです。
グッドイヤーはウェルトをそのままに、本底を張り替えることができるので、修理をすることで靴の寿命は長く保てます。
靴のつくりにもよりますが、オールソールの回数も、1〜3回程度できると聞いています。

 

逆にマッケイは、構造上オールソールには向きませんので、寿命は短くなる可能性は高くなります。

 

つま先はスチールで延命!

 

かかとは取り替えがしやすい部位ですが、つま先が摩耗しまうと修理が難しいです。

 

ラバーのつま先補修もあるので、できないことはありませんが、できれば新品の状態でトゥスチールをつけておくのが、個人的にはおすすめです。
これはグッドイヤーとかマッケイに限ったことではないですね。他の製法でも言えることだと思っています。

 

マッケイにハーフラバーはおすすめ

 

オールソールに向かないマッケイ製法の靴には、ある程度靴底が摩耗してしまう前にハーフラバーを貼るのがおすすめです。

 

履き心地は損ねず、靴底を摩耗から守ることができます。ラバーもなかなかに丈夫で長持ちしてくれます。ハーフラバーが減ってきたら、また新しいハーフラバーを貼ってあげて長く履くというのは、靴への負担を最小限に抑えられる良い手段かなぁという気がしています。

 

 

グッドイヤーとマッケイの履き心地

さ、ようやくここからが本題です!
僕の持っている靴を例に、製法ごとの履き心地について簡単に考えてみたいと思います。

 

どうもはじめまして、くすみ(kusumincom)と申します。
ひとつの記事でおさめようとするから、こんなに長くなってしまうのでしょうか。反省はしてません。

 

初めてのグッドイヤーはタッセルローファー

バーウィックのタッセルローファー。

 

思い返せば、僕にとって初めてのグッドイヤーでした。
雨の日しか履かないのとダイナイトソール(ゴム底)だからかわかりませんが、いつまでたっても靴底の柔らかさはありません。笑

 

沈み込んで少しゆるい

 

でも、つくりは丈夫なので、雨の日にはガシガシ履くことができるという良さはあります。
雨の日は迷わずコレ!ちょっと寒いですけどね。笑

 

やはりグッドイヤーなので、かなり沈み込みました。
サイズ的には問題ないものの、もともと甲が高い設計のようで、薄めのインソールを入れて履いていましたが、沈み込んだせいでもう少しだけ厚いインソールにしてもいいのかなぁという気がしています。

 

出番の少ない靴なので、まだ修理は一度も経験していません。
バーウィック・タッセルローファーのご紹介

 

グッドイヤーのドレスシューズ

カルミナのキャップトゥと、ホールカットはどちらもグッドイヤーです。

 

 

しかし不思議なことに、こちらのふたつは今まで全く靴擦れをしていません。グッドイヤーらしからぬ柔軟さです。
サイズ的には少しだけ大き目ですがかかとが抜ける感覚もなく、歩きにくさはありません。
ブランドによってこういうことがあるからわからないですねぇ。笑
カルミナ・パンチドキャップトゥのご紹介

 

 

沈み込みは感じてます。
最初はこの程度だった羽根の開きが…

 

履き下ろし時

 

今では少しだけ閉まっています。

 

現在

 

そんなにかわんないか!笑
でも紐は以前よりきつく締めれるようになりました。
カルミナ・ホールカットのご紹介

 

国産ブランドのグッドイヤー

 

スコッチグレイン。かなり固めの仕上がりです。
23.5cmの靴なのでスーパージャストサイズですが、最初はボールジョイントがキツく感じて痛かったんです。でも、3シーズン履いてようやく馴染んできました!!

 

この痛い期間はなかなかの苦行だったんですけどね、これが馴染んだら気持ちがいいんです。この喜びは何にも変え難い。もちろん、沈み込みもコミで馴染みました。ややこしい表現ですが、それなりに沈みました。
その痛みと苦しみが靴への愛を育むんですよね!

 

ちなみに、スコッチグレインはオールソールを3回してもウェルトが全く緩まないという話を聞いたことがあります。それだけ丈夫なつくりということは、修理を繰り返して長く履くことのできる靴であるということも言えるはず!
スコッチグレイン・匠シリーズのご紹介

 

 

こちらはまだ1ヶ月ちょいですが、集中的に履いたので早くも沈み込みを感じています。

 

スコッチグレイン・インペリアルフランスのご紹介

 

マッケイのダブルモンク

 

マグナーニのダブルモンク。
先日、丸3年を迎えようとしている靴ですが、こちらもそれなりに固さを感じていました。

 

でもそれは靴底の固さというよりは、アッパーの固さです。最初は靴擦れも何度か経験しました。
オイルやクリームでケアしているうちに、完全に柔らかくなりました。今ではすごく履きやすい、とても思い入れのある靴に仕上がっています。

 

履き心地は、マッケイとかグッドイヤーみたいな製法の話に限らず、デザインやアッパーも大いに関係してるんだなってことを思い知った靴でした。

 

 

この靴にはハーフラバーとトゥスチールを貼っていますが、特段履き心地に影響は感じていません。
むしろ靴底の摩耗を気にせず履けるので、すごく重宝しています!ほんとにおすすめ。
マグナーニ・ダブルモンクのご紹介

 

マッケイのローファー

 

この靴は、靴擦れとか痛みを感じたことは一度もありませんでした。
履き心地だけでなく、見た目もコバが出てないので、シルエットもスッキリしています。

 

すごく履きやすいです。
そして脱げやすいです。笑

 

歩いていて脱げてしまうことはありませんが、ちょっとスーパーとかコンビニに買い物に行くときに、サッと履けるので便利。製法は関係ないですね。笑

 

 

ハーフラバーを貼って、かかと交換も経験しました。
ゴムはやはり張り替えればいいという安心感がある。安心して履けるというのも、大事なことかもしれませんね。

 

マッケイのストチ

 

こちらも靴擦れや痛みを感じたことは一度もありません。返りもあって本当にストレスなく履けます。

 

足に馴染むのも早かったです。沈み込みはそれほど感じませんでした。
マッケイだからというわけではありませんが、アッパーが足に馴染むまで早かった。全体的に柔らかい靴です。もしかすると、つくりもそれほど丈夫じゃないかもしれません。

 

つま先にラバーの補修と、かかと交換を経験しましたが、まったく履き心地に影響ありません。
繰り返しになりますが、本当にストレスなく履ける靴です。
ISETANブランド靴のご紹介

 

 

最後に

履き心地に関して個人的に思っていることをまとめてみました。
それぞれの製法に特徴はあるものの、履き心地は靴のサイズやデザインにも影響される部分もあると感じています。

 

履き心地
グッドイヤー ・沈み込みは少なからずある
・固いものもあればそうでないものもある
・キツいものは痛くなりやすい
・長時間履いても疲れるときは疲れる
マッケイ ・アッパーが馴染めば痛さや固さはない
・確かに返りはよい
・柔らかいせいか履きやすい

 

 

靴の特徴を知っておくのは、靴選びだけじゃなく靴との付き合い方の指針にもなるので、僕はすごく大切なことだと思っています。

 

靴を購入するときは、是非いろんな靴を試着してみてください。
長く履かないとわからないこともあるけど、足を入れた瞬間に気持ちよく感じるかも重要だと思います。

 

少しでも靴選びの参考になれば嬉しいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!

革靴の磨き方もご紹介しています!

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レザーシューメディア・くすみ
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1986.9.25 愛知県生まれ
趣味で靴を磨いて8〜9年。革靴・靴磨きに関して情報発信をしています。自分のやりたいことをして生きる人生を模索しています。
音楽と甘いものも好きです。
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