個人的には、靴にレーダーオイルを塗って一晩寝かせた後の「しっとりとした革の質感」と「透明感のある強すぎないツヤ」がとても気に入っています。
ズボラケア推奨派としては、塗ってブラッシングをするだけなので、ケアの工程が少なくて済むのも魅力。
ただ、日本ではあまり頻繁にタピールの情報が公開されているわけではなく、もう少し詳しい話を伺ってみたいと常々思っていました。
そんなレーダーオイル愛好家のワタクシ、ドイツのレザーケアブランド・タピール [Tapir] 本国に質問をさせていただきました。
ブランドの公式的な見解を聞かせていただきましたので、タピールユーザーの方々もそうでない方々もご覧ください。
タピールの哲学と活動の指針


タピールというブランドはどのように生まれたのでしょうか?
1980 年代のはじめ、代表者であるボド・レングスハウゼンフィッシュバハ [Bodo Rengshausen-Fischbach] がまだ学生だった頃、古い Volvo を修理しているときに、革製シートがボロボロだったので、どうにかしてしなやかさを取り戻したいと思いました。
ただし自然な方法で、つまり天然の原料だけで、石油系の素材を使わない方法で、環境問題に関心のあった彼はそう考えました。
早速ボドは図書館で沢山の文献にあたり、その中から古い調合レシピを見つけました。
そのレシピは今でもレーダーフェット、レーダーバルサム、レーダーオイルに生かされています。

古い文献のレシピということは、昔から採用されていて、実績のある成分配合をなんですね。
このレシピが革にとても良いケアになると思いましたが、そのような製品は市販されていませんでした。
ボドは化学の知識がある友人とこのレシピをもとに試行錯誤を重ねてタピールの独自のレシピを完成させ、革靴と革製品のためのケア製品としてバクのロゴをつけて製造販売を開始しました。
そして、1983年にアーメルゼンという小さな村に小さな工場 タピールワックス製品 [Tapir Wachswaren] を創設し、今もそこで、ひとつひとつ手作業で製造しています。


タピールは動物のバクという意味ですが、なぜバクから名前を取ったのでしょうか?
今でもそうですが、靴墨の缶には動物の絵が描かれていることが多いですよね?
日本ではキウイ、ドイツではカエルなのですが、そうした親しみがあって人の目にとまりやすい、そんな動物を探していました。
そんな時、『ブレーム動物図鑑 [Brehms Tierleben] 』(Alfred Brehms 著)という本で、バクを見つけました。
バクはきれい好きで水を好み、内気でおっとりしていて、動物図鑑に載ることも少ないエキゾチックな動物。ということで、ドイツ人にとってはファンタジーな動物かと思わせるバクを採用しま
した。
タピールのロゴに使われているのは、バクの中でも白と黒のマレーバクで、このマレーバクを
もとに自然界では存在しない柄にしています。
大人のマレーバクは白と黒の 2色で点々はありません。点々の模様は、いのししのように子供の時に現れる柄で、大人になると 2 色になりますが、タピールのロゴは両方を混ぜていることになります。

ボド氏のお人柄が垣間見えた気がします。
では、天然成分にこだわって製品を設計されているのはどうしてでしょうか?
それぞれの自然素材が皮革のケアに適しているからです。
自然のオイルやワックスの特性に沿って製品化すると、それぞれの成分の特性を革製品のケアに活かすことができます。
タピール社の哲学と活動の指針は、自然の再生可能な原材料だけで製品を作るということです。
レーダーオイルは、革をしなやかに保つ働きがあります。
革は使い込むうちに脆くなったりひび割れたりすることがありますが、レーダーオイルはそれを防ぐことができます。
レーダーオイルに使われているオイルは革によく浸透して、深くまで栄養を与え、革の表面には撥水性と光沢を与えます。
また、酢には浄化・除菌作用があり、また成分を互いに結びつける作用もあります。


酢にはそんな効果があったのですね。確かにレーダーオイルの浸透性はとても高いと感じます。
可能な範囲で結構ですので、成分である自然素材が革に対してどんな役割を果たしているか教えていただけますか?
レーダーオイルの成分
- ひまし油
- なたね油
- バルサムテレピンオイル
- オレンジテレピンオイル
- 酢
ひまし油となたね油は革に栄養としなやかさを与える役割があります。
オレンジテレピンオイルは、革の表面の汚れ(主に油性のよごれ)を落とす働きがあり、またひまし油となたね油が革に深く浸透するのを助けます。
酢は汚れを落とす働きと除菌の働きがあります。
バルサムテレピンオイルは松樹皮から取れるオイルですが、様々な理由により現在使用していません。
もともとヨーロッパでの松樹皮から生産されているものを使用していましたが、松林が減り、保護対象になっていること、生産量が限られるために価格が高くなっていること、独特の強い香りがありアレルギーのある人もあること、などによります。
革のしなやかさを保つ効果


ありがとうございます。
レーダーオイルの油分は、革靴の厚くて硬い革素材との相性がいいと思っているのですが、革靴に使うことは想定されているのでしょうか?
レーダーオイルは広く革製品全般に使用することを想定しています。
栄養を与えることでしなやかさを保つ効果があり、また防水効果もありますが、ワックスを含んでいないので革の表面に被膜を作ることはできません。
靴にももちろん使うことができますが、ワックスが成分に入っている製品をプラスして使うことをおすすめします。
タピールの製品でしたらフレーゲクリーム(ワックス成分がメイン)またはレーダーフレーゲ(乳液)です。

あくまで革の状態を良く保つというのがレーダーオイルの位置付けなのですね。
世の中のレザーケア商品にはロウが含まれているものが多い中、レーダーオイルにはロウ分を含んでいないのは意図があるのでしょうか?
皮革製品の中にはワックスで被膜を作る必要のない場合もあるためです。
皮革製品全般の基本的なケアを目的にしているといえます。

たしかに、革靴のためだけのプロダクトというわけではありませんでしたね。失礼しました。
レーダーオイルはクリーナーとしての役割も果たしてくれるようですが、レーダーオイルひとつで革のお手入れは十分と考えてよいでしょうか?
はい。
レーダーオイルにはクリーナーとしても使用できます。古いワックスを穏やかに落とし、酢が除菌します。
多くの革製品はレーダーオイルだけのケアで十分ですが、靴などのように摩擦や雨にあたるといった使用目的の場合や、表面に艶を出したいというときには、革の表面に被膜を作る作用のあるワックスを含む製品を使うことをおすすめします。

つい、クリーナーはクリーナー、栄養補給はクリームやオイルと、工程ごとにケアアイテムが必要な気になってしまいます。
でも、レーダーオイルは靴に特化したプロダクトというわけではないし、それ単体で革を良い状態に保つことができるものなんですね。
塗りすぎ注意、ケアの頻度と使い方


レーダーオイルは塗りすぎるとベタつきが出るので、僕は少量を塗るように使っていますが、ブランド推奨の使い方などありますでしょうか?
タピールの製品全体に言えることですが、少量でよく伸びて十分な効果を発揮しますので、つけすぎないように使用してください。
使い方は、レーダーオイルは分離していますので、使用前によく振って混ぜてください。
そしてやわらかい布に少量を含ませてマッサージするように均一に伸ばします。
一通り伸ばしたら、きれいな布で革の表面の余分なオイルをふき取ります。
タピールの製品の使い方はとてもシンプルで、ほとんどの製品が同様の使い方です。

それに加えて、1 回革に塗布した後、次に塗布するまでどれくらい時間を空けるのがよいなど、最適なケアの頻度などあれば教えていただけますでしょうか?
革は汚れや乾燥が傷むきっかけになります。
革製品を使用した後は、まずブラッシングを。その後に、汚れている、疲れた感じがする、あるいは乾燥が気になる、そんなときにレーダーオイルでケアしてください。
革のなめし方や加工、仕上げなどにより、また使用頻度や使用した状況によって状態は様々で一概には言えません。
私が訪ねたタンナーさんでは、ブラッシングだけで十分と言い切られることもありました。
ですので、必要に応じてということになると思います。

納得です。革の種類や革製品、さらには環境によって違って当然ですね。
レーダーフレーゲやレーダーバルサムなどとは設計が違うようですが、それぞれ用途を簡単に教えていただけますでしょうか?
レーダーフレーゲはオイルとワックスを乳液状にすることで、オイルが浸透して皮革製品に栄養を与えてしなやかさを保ちながら、ワックスが革の表面に被膜も作ります。
被膜ができるので保護・艶・防水の作用があります。乳化性なので、使用後にブラッシングをすると比較的簡単にきれいな艶が出ます。
レーダーバルサムは主に靴に使うことを目的に作られていて、ワックスの配合が多いので革の表面でしっかりした被膜を作ることができます。この被膜は、摩擦や汚れや雨から革を保護します。
油性なので、塗っただけだとマットな仕上がりになりますが、水を使って磨くことで美しい艶になります。鏡面磨きにも向いています。
その際は、水にごく少量の酢を混ぜると艶になりやすいです。

ありがとうございました!
























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