チャーチ [Church’s] と言えば有名なモデルがいくつかございますが、「これぞ ザ チャーチ!」というべきアイコンシューズについて、木型の話も交えながらご紹介させていただきます。
チャーチについて理解が深まる記事になっていると思いますので、よければご覧になってみてください。
チャーチ[Church’s]とは
チャーチ [Church’s] は、1873年に靴作りの町として有名なイギリスのノーサンプトンで創業したシューメーカーです。グッドイヤーウェルテッド製法の正統派の英国靴として不動の地位を確立し、欧米のセレブリティや007のボンドも愛用することで知られています。
現在はプラダ [PRADA] の傘下にあり、正統派英国靴という文字通り、これぞイギリス靴と認知されたブランドのひとつです。
チャーチの有名なモデル
チャーチといえばこれ!という、アイコニックなモデルはこのあたりです。
- コンサル [Consul] (173)
- チェットウィンド [Chetwynd] (173)
- ディプロマット [Diplomat] (173)
- グラフトン [Grafton] (173)
- シャノン [Shannon] (103)
- バーウッド [Burwood] (81)
()内は木型名です。
一部他の木型で作られているモデルもありますが、記載したものがおおよそ代表的な木型となっています。では、いくつかご紹介をしてまいります。
コンサル [Consul]
コンサルは内羽根のストレートチップのモデルです。木型は173。
まさにこれぞ正統派英国靴というべき、丸すぎず長すぎず非常にアーバンでスタイリッシュなシルエットです。
余計な装飾は一切ないシンプルなデザインも、英国靴らしさを際立たせる要因になっています。
つま先は後ほどご紹介する 73 という木型を踏襲して、ユルめのセミスクエアという感じ。少し立体感のあるシルエットになっています。
アッパーの革は、イタリアのタンナー・イルチアのネバダカーフが使われています。
非常にキメの細かい美しい革です。靴底はしっかりしていますが、アッパーは意外にも柔らかく、嫌な硬さはありません。
コンサルは 173 というラストの他に73というラストのものもあります。こちらは 73 のコンサルです。73 という数字は創業年からとったもの。古くからある木型であることがわかります。
オールドチャーチという名前で呼ぶこともあります。
こちらは明るい色のコードバンが使われているのと、173 のコンサルと比べるとショートノーズなので少々カジュアル寄りな印象ですが、それでも変わらず英国靴らしさを放っています。個人的にはこの形こそが、いかにもチャーチ!という気がします。
木型:73、100、そして173
プラダ傘下になる前は、73 がチャーチ独自のラストでしたが、プラダ傘下になった後プラダが 100 というラストを作りました。しかし、100 が不評だったようで、73 と 100 を組み合わせた 173 というラストができたという歴史があります。
173 が使われているモデルはコンサルの他に…
- ディプロマット
- チェットウィンド
などが代表的なモデルです。
Diplomat / Chetwynd
173 の木型の特徴としては甲が低く、特に二の甲・三の甲が低くなっています。
173
73
73 の方がショートノーズなのがお分かりいただけるでしょうか。
上から見ると、印象が全然違いますね。
173・73
それぞれサイズが違うので厳密な比較はできませんが、つま先の雰囲気の違いはお分かりいただけると思います。
サイズは左:5、右:6.5
すごく簡単に表現すると 173 の方が細長い木型になっているので、足の細い方は 173 の木型をサイズを少しだけ落として履いていただくとよいかもしれません。
73 はショートノーズなので、足の細い方は捨て寸(つま先のゆとり)がなくなってしまい、指がつっかえてしまったり、小指が当たって痛みを感じることがあるかもしれません。
見る角度によってこんなにもキャップトゥが短く見えてしまうのが、この 73 ラストのかわいらしいところ。
コードバン、いい色
シャノン [Shannon]
続いてはシャノンです。
外羽根プレーントゥの代名詞的存在です。
通常、外羽根の靴は、靴紐を通すレースステイとタンが独立しているものが多いですが、シャノンはレースステイとタンが薄くて柔らかい革で繋がっています。
この革は『砂よけ』のような役割を果たすだけでなく、靴紐を締めたときに甲のまわりを柔らかく包み込んでくれるので、履き心地の良さにも一役買っているというわけです。
革はポリッシュドバインダーカーフです。
ポリッシュドバインダーカーフは樹脂でコーティングされている革なので、水にも強いのですが、逆にクリームも入っていかないのでカーフのような経年変化は味わうことができません。
しかし、文字通りカーフ(生後半年程度の若い牛の革)が使われているので、成牛の皮を使うガラスレザーに比べると柔らかく仕上がります。安いガラスレザーであれば2〜3年で寿命がきてしまうことがあっても、バインダーカーフは10年もつと言われています。
とにかく、雨でも気にせずガシガシ履けることと、お手入れの必要がないという利便性も、この靴の機能的なメリットのひとつでもあります。
多くのウェルとシューズは、土踏まずの部分までで出し縫いが終わっているものがほとんどです。しかしシャノンは、かかとまでウェルトがぐるッと一周していて、ボリューム感があります。
さらにソールもダブルソールなので、ビジネスユースだけでなく、オンオフ両用でも履くことができるのもこの靴が愛されている理由です。
木型:103
シャノンは 103 というラストです。
木型の特徴としては、前足部がかなりゆったりしていますが、かかとから土踏まずにかけてしっかりホールドしてくれる木型設計です。
甲が高い方や足幅が広い方でも、かかとと土踏まずだけでホールド感が得られるので、割とどんな足でも柔軟に合わせられるというのがこの木型の特徴です。
先にご紹介した 173 のようなラストとは木型の考え方が違うことがわかります。
バーウッド [Burwood]
バーウッドです。
同じ内羽根フルブローグのチェットウィンドと比べるとかなりボリューム感がありますね。
Chetwynd
ダブルソール
ダブルソールなのと木型のシルエットもあって、どちらかというとカントリーシューズに近い印象です。英国靴らしさはありますが、173 のようなアーバンな雰囲気ではなく、トリッカーズ [Tricker’s] のような丸みとボリューム感です。
こちらも先ほどのシャノンと同じ、ポリッシュドバインダーカーフのモデルです。
革の毛穴が見えないので 73 コンサルのコードバンのような見た目ですが、実際には少し雰囲気が違います。
ブローグひとつひとつの穴の大きさと革の厚みによって、ブローギングが強く際立っています。このブローギングの主張の強さもチャーチらしさのひとつだと思います。
茶色の靴なのでより際立って見えます。
個人的には、バーウッドのすべてのブローグにスタッズが埋め込まれているモデルがすごく好きです。靴の見た目的にはすごくロックでパンクな印象ですが、正統派英国靴を製造するハイブランドそういう奇抜なアイデアを採用するという心意気が素敵。
Burwood met
僕の足にこの木型が合うとは思えませんが、将来はこんな靴をさらっと履けるオッサン…いえ、粋なナイスミドルになりたいと思っております。
木型:81
木型は 81 です。オールドチャーチの 73 と考え方は似てると思います。
バーウッドはつま先が短めで全体的に丸みを帯びている木型です。
左:81、右:73
こう見るとやはりポリッシュドバインダーカーフは樹脂のコーティングが施されているため発色が良く、コードバンは革らしい自然な色ムラがあることがわかります。
バークロフト [Barcroft]
ちなみにですが、僕の持っているバークロフトというモデルも簡単にご紹介させてください。
今のチャーチのwebサイトに掲載されていないので、どういう扱いのモデルなのかわかりませんが、84 と言われる木型のこちらもオールドチャーチらしいシルエットが特徴のモデルです。
デザインはパンチドキャップトゥですが、キャップトゥの幅がとても短くてかわいらしいですよね。
この靴についてはこちらの記事でご紹介しています。
最後に
動画でもご紹介させていただいておりますので、よろしければご覧になってみてください。
今回はチャーチの有名モデルをご紹介させていただきましたが、チャーチのwebサイトを見ると時代の変化に合わせて、厚いサンモリッツのトレッドソールを合わせたコンフォート寄りのトレンドを意識した革靴も展開されています。
やはりプラダ傘下ということもあり、トラディショナルなシューメーカーというイメージではなく、ファッションの一環としての靴を提案している印象です。英国靴らしい堅牢なつくりの靴がアーバンで洗練されたスタイルへと変化していく柔軟さはブランドの強さだと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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