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世界5位の革靴を作る靴職人・安藤文也さんが語る、靴作りの難しさと喜び

[Loose & Colorful] For ladies page
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日々、ここが美しいとかここが好きとか、革靴というものを偉そうに語らせていただいております。
靴は履く道具という側面がありながらも、やはりその曲線の美しさや靴全体のフォルムにも革靴としての魅力を感じているからです。

 

その曲線やフォルムが一体どう生まれるのか。
そういうことが素人ながらに少しわかったような気がしました。

 

 

今回お話を伺った安藤文也さん。
安藤さんの世界5位の作品もご紹介させていただきますので、是非お付き合いください!

 

 

ANDO SHOEMAKER・安藤さん

 

もともとは美術系出身で現代美術の絵画制作をされていた安藤さん。
靴に興味を持ってからは、GUILDの山口さんが運営する靴の学校・Saruwaka Footwear Collegeに入学され、2年間靴の勉強をされます。

 

その後、靴修理の仕事をしながら靴制作を始められます。
同時にT.Shirakashi Bootmakerで白樫さんのアシスタントとして活動しつつ、白樫さんの紹介で英国ビスポーク靴のボトムメーカーであるTAKAHASHI氏の底付け(ボトムメイキング)のレッスンを受けられたようです。
現在は、TYE SHOEMAKERで、底付けのお手伝いをされながら、ご自身の勉強や制作とともに、独立に向けた準備を進められています。

 

 

Saruwaka Footwear College の1年目に作られたのが、茶色の外羽根プレーントゥのレディースの靴。

 

一番手前が靴作りを学んで一年目に作られた作品

 

TYE SHOEMAKERのインスタでよく見るシューツリー

 

この靴を作られたことでレディースの靴が持つ雰囲気や、メンズの靴とは違う美しさに惹かれ、レディースの靴を作っていくことを決心されたそうです。

 

 

こちらは安藤さんの知人のために作られた靴。

 

 

足の形が特徴的なその女性はその足に合う靴が無く、今までかなり苦労されてきたようでした。しかしこの靴を安藤さんが作ったことで、初めて足を均一に包み込む靴に出会えたと大変喜ばれたそうです。

 

 

また、安藤さんは作る相手によって、作る靴によって何がベストなのかを考えることに重きをおいて作られています。

 

反対側から

 

男性の足よりも女性の足は柔らかかったり、ヒールの高さが違ったりと、男性の靴の考え方とは違う部分があります。
そこも難しさのひとつと仰います。

 

また、靴の素材となる革は天然のもの。
例えば底材に使う革は、同じ部位(ショルダーやベンズなどの牛の部位)のものを調達しても、柔らかさや素材の性質が違うこともあるようです。
なので、柔らかい革ならレディースの靴に使ってみたり、固めならメンズの靴に使ってみたりと試行錯誤をされている様子。もちろん底だけでなくアッパーの革も同様に、その人のためにその靴を作るにはどうするのが一番良いのかということをすごく細かく考えられています。

 

 

でも、そういった困難ひとつひとつに向き合って作った靴が喜ばれると、やはりご自身も嬉しいとおっしゃっていました。

 

 

今後はレディース専門で

レディースの赤いサドルシューズ

 

独立をされても引き続きレディースの靴を専門で作られるようです。

 

工房を探したり他にも準備が必要なので、ご自身の工房を持つのはもう少し先になりそうですが、どういうブランドにされたいかという展望をうかがうと「オーソドックスを突き詰めていきたい」とのこと。

 

オーソドックスでクラシカルな革靴は、ある程度かたちが完成した普遍的なものです。
でもその中で安藤さんなりに良いものを追求していきたいとのことでした。

 

 

例えばこのブローグの靴。

 

 

 

こちらはメンズの靴で、デザインとしてはフルブローグという一般的な革靴のデザインではあります。
しかし、見てください。とってもゴージャスじゃありませんか!

 

 

穴飾りの大きさも密度も。
靴紐下のシャコどめも。
革の継ぎ目とステッチの隙間もものすごく狭くて、曲線もすごく滑らかです。

 

 

 

メダリオンもとっても綺麗です。

 

 

 

後ほどご紹介するんですが、靴を作る工程全てが大切と安藤さんは仰います。

 

 

こちらはレディースのギリーシューズ。

 

 

こちらもとってもエレガント。

 

 

 

木釘(ペース)が使われていたり、ソール全体が一枚の革で覆われています。

 

確かに、レディースの靴はメンズとは違った魅力があるように思います。

 

 

世界に評価される理由

世界大会で5位のオックスフォード

 

2018年、安藤さんはこちらの靴で靴作りの世界大会 [World Championships in Shoemaking] で5位を獲得されます。世界大会ということは世界中から職人の靴が集まるわけですが、その中で5位という偉業をなされたわけです。

 

僕はこの日お話を聞いて、安藤さんのこの作品が『世界に評価された靴たる理由』…みたいなものがわかったような気がしました。

 

曲線の美しさ

順番にご紹介していきたいんですけど、まずは靴が描く曲線の美しさ。
どこをとっても曲線が美しい。

 

 

靴全体の形を描く曲線も。革の断面も。ステッチも。
デコボコしてるところもなければ、のっぺりした野暮ったさみたいなものも全くありません。

 

 

 

 

あと、全体の形もすごくメリハリがある、と言いましょうか。

 

 

 

どの角度から見ても、滑らかな曲線を描いています。

 

 

 

かかと部分のアッパーからソールへのつながり方も秀逸です。

 

 

 

以前、ヌードのドローイングを約1000枚書かれたとおっしゃっていたので、そういうご経験も作品に活かされているはずです。
人間の体も直線の部位ってありません。立体を捉えたり、様々な曲線を表現する才能を磨いてこられた結果、この靴が出来上がっているのではないでしょうか。
きっとそうです。

 

完成形のイメージ

ふたつめの理由。
安藤さんはお話の中で「難しい」という言葉をすごく頻繁に使われていました。

 

特にアッパーは革靴の顔になる部分です。
靴は細かいパーツをたくさん組み合わせてできているわけですからどこかが歪んでしまってはいけません。
ひとつひとつの工程を丁寧にやらないとダメ。どこかで気を抜いてしまうと、それを最後まで引きずってしまう、とのことでした。
そういう職人さんならではの感想を聞かせていただきました。

 

 

エレガンス!

 

逆に、難しいと感じられるいうことは、ご自身の中に完成形のイメージが強くあるということ。

 

一応僕も革靴の作り方を知っているつもりでした。
誤解を恐れずすごく失礼な言い方をすると『切って縫う』という工程の繰り返しで、靴の形は木型に依存する部分が大きいのでは、みたいな安直な考えでした。

 

木型

 

でも話を聞けば聞くほど、細かい作業のひとつひとつが大切であることがわかります。
安藤さんの丁寧さや謙虚なお人柄が相まって、靴を作ることの大変さみたいなものを思い知らされます。

 

 

さらに作った靴を履くのは、自分ではない他人。だからこそ、その履き心地やフィット感を理解することがいかに難しいか、僕みたいな素人でも想像にかたくありません。

 

そういう部分も含めて、ご自分の靴を追求していきたいというお気持ちを語っていただいたのだと理解しています。

 

 

世界大会ではソールは染めたらダメ!汚れないよう要注意

 

さらに、完成形のイメージに到達するのが難しいということは、その理想も高いということ。
理想って成長と共に高くなっていくものなので、きっとこれから苦しい思いをされることもあるかもしれません。
でも、安藤さんの謙虚さと丁寧さがこれからも素晴らしい作品を生み出されるに違いないと確信しました。

 

また、ご自身の工房をお持ちになったときは、必ずお邪魔させてくださいと、強く念を押してきました。笑

 

 

ウェルティング(すくい縫い)

 

TYE SHOEMAKER で安藤さんが担当されている底付けの作業を少しだけ見せていただきました。

 

 

中底に掘った溝と、ライニングとアッパー、さらにウェルトに穴を開け…

 

 

 

そこを太い糸で縫ってキツく締める。

 

 

 

これを繰り返し繰り返し行うことで、最終的にはこうなります。

 

 

 

なんか、絵になるわぁ…

 

耳をすませばの天沢君のような爽やかさ

 

 

この日は TYE SHOEMAKER の工房で安藤さんにお会いすることができたので、少しだけ工房の写真を撮らせていただきました。

 

 

 

こういうのたまりません!

 

もはやアート作品

 

カワイイ&ゴージャス

 

メンズのサンプルや…

 

 

 

レディースのサンプルも。

 

 

安藤さんの後ろで、TYE SHOEMAKER の大野さんも作業をされていました。
コーヒの聖地と言われているバッハのコーヒーもご馳走になり、ご親切に対応いただき、さらに靴も見れてなんだか幸せな時間でした。

 

 

最後に

爽やかか!

 

最後に、安藤さんお会いしたあとにいただいたメール。

 

本日もお話しさせていただきましたが、TYEの大野さん島村さんをはじめ、白樫さんやTAKAHASHIさんとの出会い、教えがあったからこそ今の自分は靴作りを続けていけているのだと思っております。

 

ことごとく謙虚でいらっしゃる!
安藤さんの圧倒的な清潔感も相まって、なんというか心が洗われたような1日でした。

 

 

安藤さんのインスタはこちら(@andoshoemaker)

 

 

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#bespoke#bespokeshoes#supertrunk

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最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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