革靴の靴底の製法についてご紹介します。
靴底の付け方も製法によって特徴がそれぞれ違っていて、底付けの製法で靴の機能だったり目的だったり、もちろんコストにも影響してきます。
革靴と長く付き合っていくための考え方の指針にもなると考えています。
また、グッドいやーウェルテッド製法とマッケイ製法が代表的な製法として広く認識されていて、そのふたつを比較されることが多い印象です。
このふたつの比較についてはこちらのページで詳しくご紹介しています。
それぞれメリット・デメリットがあるので、靴を選ぶときの参考にしていただければと思います。
グッドイヤーウェルテッド製法
英国式のオーソドックスな紳士靴は、グッドイヤーウェルテッド製法で生産されていることが多いです。ちなみにグッドイヤーウェルト製法と表記されることもあります。
中底の端に、リブテープ(※)というT字型のテープを接着します。そこへアッパーとウェルトをすくい縫いします。ウェルトを介してアウトソールを縫い付けることでつくりが丈夫になり、靴底の重厚感が出ます。
また、中物の量が比較的多く入れられるため、長時間履いても疲れにくいというメリットもあります。
アウトソールのみの張り替えができるので、アッパーをケアすれば靴が長く履けるするという大きなメリットがあります。
しかし、靴の屈曲の方向と直角の方向にリブテープが貼られているため、ハンドソーンウェルテッド製法と比べると靴底の返りが悪くなるというデメリットもあります。
次にご紹介するハンドソーンウェルテッドを元に、機械で量産できるようにアレンジされた製法です。
※リブテープについては、スコッチグレインの製造工程の動画を見るととてもわかりやすいです。3:05あたりでリブテープが出てきます!
ヒドゥンチャネル
アウトソールの切れ込みに出し縫いの下端が隠され、直接地面に接しないようになっているものです。
なので、靴底を見ると縫い目がないような、美しい見た目に仕上がります。
また、摩耗や水の染み込みを防止する役割も果たします。
ストームウェルト
Y字型にしたウェルト、その一端がアッパーとウェルトの隙間を塞ぐかたちで取り付けられています。
防塵性・防水性に優れ、カントリーシューズに採用されることが多い製法です。
ハンドソーンウェルテッド製法
紳士靴の定番スタイルである、ウェルテッド製法の起源です。
厚手の中底にドブと呼ばれる溝を切り込み、そこからアッパーとウェルトをすくい縫いします。グッドイヤーウェルテッドと比べると構造が簡単なので返りが良く、足なじみが早いと言われます。
ただし、この製法は時間と技術が必要になるので、時間と技術が必要で大量生産には向きません。生産性が低いためコストが上がるため、高級既成靴やビスポークのみで見られる製法でした。
しかし、最近は比較的リーズナブルな価格でハンドソーンの靴が見られます。底付けの工程の中で、ウェルトのすくい縫いまでを手作業で行い、アウトソールの出し縫いのみを機械で行う九分仕立てという手法が多いからです。
出し縫いまで手作業で縫えば十分仕立て、あるいはフルハンドと呼ばれます。
マッケイ製法
中底とアッパーとアウトソールを靴の内側で一度に縫い合わせる製法です。
構造が単純なので、コストが安く抑えられます。また、軽くて柔軟性がありコバの張り出しが大きくならないため、細身なデザインを実現できるというのが大きなメリットです。
細身のデザインが可能になったことで、靴で表現できる形が広がりました。イタリア製の靴にはマッケイ製法が多く、ローファーなどにも多く採用されている製法です。
また、返りが良く、足を包み込むような履き心地を感じられます。
しかし、ステッチから靴の内部に水が染み込んできたり、繰り返し縫い直せないのでソール交換修理には向いていないことがデメリットです。
交換修理ができないわけではないので、修理屋さんに相談されることをおすすめします。
ノルウィージャンウェルト製法
ウェルトをL字に折り曲げた状態でアッパーの外側に重ねて縫い合わせる製法です。
アッパーとソールの隙間が埋まり、丈夫で防水性が高い製法です。
登山靴などに使用されている製法ですが、一部のカジュアルシューズにも採用されています。
ノルヴェジェーゼ製法
ノルウィージャンウェルト製法の派生型として、L字のウェルトを無くし、アッパーを外側に折り曲げて中底と縫い合わせた製法もあります。
ミッドソールが加わるため、足に馴染むまで時間がかかりますが、堅牢な見た目に仕上がります。
イタリアで開発された製法で、ドレスシューズによく使われる製法でもあります。
ちなみに、ノルヴェジェーゼというのは、ノルウィージャンのイタリア語からきています。
セメンテッド製法
アッパーとソールを接着剤で貼り合わせる製法です。
底付けの工程を機械化することができるので、大量生産に向き、コストダウンが可能になります。
樹脂製のため防水性が高く、軽く、返りもよいのがメリットです。
デザインの自由度も高いです。
ただ、ソールの張り替えができないので、靴自体が消耗品になってしまうことが多いのがデメリットです。
メリットだけ見れば優れている点は多いのですが、長く履けないというデメリットがあります。
オパンケ製法
ソールのヘリを巻き上げて、アッパーにかぶせて縫い付ける製法です。
縫い目が外側から見えるため、独特な見た目になります。
ソール全体に施す場合と土踏まずの部分のみに施す場合があります。土踏まずのフィット感が高まります。
上の図のように、ミッドソールをオパンケ縫い付けるもの以外にも、アウトソール自体を縫い付けるタイプもあります。
モカシン製法
北米の先住民が使っていた袋状の履物モカシンを発展させた製法です。
袋状にしたアッパーにアウトソールをマッケイ脱いで取り付けるため、マッケイ製法の派生型とも言われます。
甲の縫い目がUチップと同じようなモカステッチになります。
ボロネーゼ製法
ボローニャで生まれたマッケイ製法の派生型の製法です。
中底を使わずにライニングを筒状に縫い合わせ、そこにマッケイ縫いで底付けをします。
モカシンを逆さにしたような構造とも言えます。
丈夫さや安定性が必要になる靴の後ろ半分には、他の製法と同じく中底が入れられ、トゥには先芯も入れられるので、見た目はオーソドックスな紳士靴に近いものになります。
足を包み込むようなフィット感が得られ、軽くて柔軟性に富んだ仕上がりになります。
ブラックラピド製法
マッケイ縫いでミッドソールを縫い付けた後、さらにアウトソールで出し縫いで取り付ける製法です。
グッドイヤーウェルト製法のすくい縫いの部分をマッケイ縫いで代用したことによって、効率的に靴を作ることができます。
また、出し抜いでアウトソールを付けているので、マッケイ縫いの弱点であるソール交換修理ができないことや、靴内部に水が染み込むこともカバーしているという、バランスのとれた優れた製法です。
ステッチダウン製法
つり込みの際、アッパーの橋を外側に広げて、ソールとの縫いしろにする製法です。
ライニングは内側につり込まれ、中底に接着します。
出し縫いは、ウェルトの雰囲気を出すため、あるいは単純な装飾のため、細革というパーツを同時に縫い付けることがあります。
返りが良く構造がシンプルなので、製造効率も高いのですが、ソール交換修理には向かない製法です。また、見た目もカジュアルな雰囲気になります。
最後に
製法について知っておくと、靴選びの参考になりますし、靴とどう向き合っていくかという指針にもなると思っています。
もちろん靴は履くための道具ではありますが、いつまでも長く付き合いたい靴があるなら、その靴を履く頻度をを考えることも大切です。
また、修理のタイミングなども念頭に置いて、靴と付き合っていくことができれば、きっと靴は長持ちするに違いありません。
是非参考にしてみてください。
こちらの記事で、革靴の種類についてもご紹介していますので、よろしければご覧ください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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[…] 写真転載:革靴の底付け製法11種類の違いと特徴まとめ […]
[…] 御覧ください。 > 革靴の底付け製法11種類の違いと特徴まとめ – みんくすのぐーぶろ。 […]
[…] ※引用:底付け製法まとめ – みんくすのぐーぶろ。 […]
愛知在住の30代前半サラリーマンです。
このサイトに行き着き、過去のアーカイブをちょっとずつ拝見しています。周りに靴好きの人間はいませんが自分の好きな靴を大切に育てています。
本記事ですが、靴の製法はあらかたわかっているつもりでしたがここまで詳細に図解している個人サイトはまず無いため、大変勉強になりました!といってもグッドイヤーばかりなのですが。。。笑
クロケットやカルミナ、パラブーツと言った欧州メーカーを中心にたまにスコッチグレインという感じで楽しんでいます。
これからも記事を楽しみにしています( ̄▽ ̄)
スーさま、コメントありがとうございます!
そう言っていただけてよかったです。
僕もグッドイヤーがほとんどなのですが、他の製法も履き比べるとおもしろいですね!
8/11に名古屋で靴磨きの会を知人と一緒に開催予定です。よろしければそちらもご参加ください。今後ともよろしくお願いいたします!