クレムのナッパはどういうクリームですか? また、使う用途を教えてください
ちなみに、ナッパとレノベイターどちらがオススメですか?
最後に、ナッパって財布に使うこと出来ますか?
というご質問をいただきました。ありがとうございます。
結論としては、使うプロダクトによるのでどれが正解はないと思っています。
あと、ナッパは財布に使えます。
でもそうですよね。
クレムがあって、ナッパもレノベイターもあって…となると、なかなかその違いを理解するのは難しいかもしれません。
使ってみて革の状態や、時間の経過による仕上がりの違いなんかを見比べてみると、案外簡単な話なのですが、全部買うとそれなりにお値段もするわけで、用途に合ったものを選びたいというお気持ちはよくわかります。
簡単にまとめるとこんな感じでしょうか?
- 失敗が怖いならナッパ
- 汎用性を求めるならレノベイター
- 靴特化ならクレム
それぞれの違いをもう少し詳しくご説明していきたいのですが、まずはナッパという革の説明からはじめさせていただくのが良さそうです。
よければお付き合いください。
ナッパレザーとは?
ナッパレザーというものがあります。
ナッパレザーとは、ヤギだったりヒツジだったり牛だったり、あとクロム鞣しとかタンニン鞣しとか…とにかく諸説あるようですが、現在では牛の革であってもナッパレザーと呼ばれることがあるようです。
バッグや衣類、車のハンドルやシートにも使われるような革で、革のなめらかな風合いだけでなく、革時代の強さや耐久性もナッパレザーの特徴です。
まぁ簡単に言うと、「上質で柔らかくデリケートな銀付き革」とざっくりと一括りにする革であるようです。
さらっと仕上げたいならナッパ
バッグや衣類に使われるのがナッパレザーと申し上げましたが、肌に直接触れるものや洋服に触れる革はお手入れをしたあと、さらっと仕上げっているほうが望ましいでしょう。
冒頭に触れた財布に使えるというのも、そういう意味です。
こちらのスペシャルナッパデリケートクリームは、ロウ分を含んでおらず油分も比較的少ないクリームなので、肌や洋服に触れてもベタつきが残りません。
また、シミになりやすいデリケートな革もありますが、そういったデリケートな革でもシミになりにくいのがこのクリームの特徴です。
というわけで、デリケートな革や肌に直接触れるような革にはこのスペシャルナッパデリケートクリームを使うのがよさそうです。
成分含有量の違い
ではなぜ、デリケートな革にはナッパを使うのか、という疑問が出てきます。
申し上げた通り、スペシャルナッパデリケートクリームは、所謂デリケートクリーム(以下デリクリ)の類にカテゴライズされます。
デリクリの特徴は「失敗しにくいこと」です。
どんな革に使っても失敗しにくい、つまりシミになったり革が柔らかくなりすぎたりしないということです。
じゃあ、失敗する原因は何なのかと申しますと、それは概ね油分が原因でシミになることが多いです。
乾いた革に油分をガッツリ染み込ませると、乾いているぶんしっかり浸透するので、その部分だけ色が濃くなったり色ムラができたりします。それがシミと呼ばれる現象です。
真夏にグレーのTシャツを着ていると、汗で色が濃くなるアレと同じです。
水分は時間が経つと蒸発しますが、油分は揮発・蒸発しないものや、するまで時間がかかるものがあります。また、時間が経つと酸化して硬化するものもありますね。
なので革にとって油分は失敗しやすい、というかリスキーな成分なのです。
(逆に言うと、油分の方が革にとどまりやすいので、革を柔軟に保つ効果が長持ちするという考え方もできます。)
あと、ヌメ革に水を垂らすと、ある程度乾いたら元に戻るけど、少し薄い跡が残ることもあります。
あれは水が残っているからではなく、革の中に含まれる油分が水で押し流されて、色ムラができることによるシミ(跡)です。
約80%が水分
少々話が逸れましたが、デリクリにも油分が含まれます。
しかし、他のクリームと比較すると水分の方が圧倒的に多く、油分が薄められているような設計になっています。
それによって、革が油分を吸収しすぎてしまうというリスクを回避してくれるため、失敗しにくく革に優しいクリームという扱いになっているわけです。
デリクリに含まれる成分の約80%が水分とも言われているので、半分が優しさとうたっているバファリンより革に優しいと言っても過言ではありません。
さらに、水分が多いことによって塗り伸ばしやすく、仕上がりもさらっとしているため、そんな使い心地がデリクリの機能としてうたわれていますよね。
ちなみにナッパはロウ分を含まないので、レザーライニング(靴の裏地)に塗ってもさらっと仕上がって足馴染みを良くするという効果を発揮します。
乾燥した革に
乾燥した革は浸透しやすいです。
そんな乾燥した革というのは、クリームをがっつり吸い込み、シミになったり色ムラができやすい状態です。
そんな革にはまずデリクリを塗って革全体の浸透性を抑えておくことで、その後に塗るクリームの色ムラを抑えることもできます。
黒や濃い色の革はそんなに気にすることはありませんが、明るい色の靴はご注意ください。
効果持続性
水分が多いということは時間が経つと蒸発してしまうクリームでもあります。
ホホバオイルという化粧品にも使われている成分が含まれているので、単純な水よりも保湿力は高いものと思われますが、やはり油分の多いクリームと比較すると革の柔軟性を持続する能力は低めであると考えます。
クレム1925は靴用
逆に、クレム1925というクリームは水分を含まず、油性クリームというカテゴリのクリームになります。
水分を含まないということはつまり、油分もロウ分も濃いガッツリ系のクリームということで、ロウ分によるツヤや、油分による栄養補給の機能面で訴求されるクリームです。
デリクリであるナッパはさらっとしてるので靴以外の革製品全般に使えますが、クレムはしっかり濃いので直接肌や衣類に触れるバッグや財布などの革小物に使うことは推奨されていません。
でも革靴は、バッグや財布よりも耐久性が求められるし、1日に何千回と屈曲に晒されるプロダクトなので、コシがあって厚い革が使われています。
そういうしっかりした革には成分の濃いクリームを、という設計になっているわけですね。
逆にクレムは成分が濃いので、定期メンテナンスでしっかり落としてあげないと成分が蓄積してしまうこともあります。
クレムを使う場合は、汚れ落としも疎かにしてはいけない工程です。
とはいえ、ナッパもレノベイターも無色(ニュートラル)のみの展開ですが、クレムは色展開が豊富で、靴のお手入れに奥行きを持たせてくれるのも魅力です。
レノベイタークリーム、汎用的で万能
いやしかし、このレノベイターこそサフィールブランドにおける真の万能クリームであると個人的には感じます。
非常に使いやすい良いクリームだと思っています。
サフィールノワールの中ではかなりニュートラルというかクセのない汎用的なクリームというポジションです。
成分的にはクレムほど濃くないのでさらっと仕上がりますし、ナッパなどデリクリほどさっぱりもしていないので、革に油分が入ります。
レノベイターは動物性油脂であるミンクオイルが含まれています。動物性油脂は植物性のものと比べるとガッツリ重めの油ですが、クリームの設計としてはそこまで重めのクリームという感じではなく、良いバランスだと感じます。
また、レノベイターにはロウ分が含まれますので、靴に使うとじんわりとツヤも出ますし、無色のクリームなので汎用性も高い。比較的仕上がるので革小物などにも使えます。
クリームはひとつだけあればいい、という方にとっては一番心強い存在かもしれません。
ちなみに、ご存知ユニバーサルレザーローションというローションタイプのレザーケアグッズがありますが、ユニバーサルはレノベイターを薄くして液状にしたものです。
液状にするメリットは塗り伸ばしやすいことと、油分が入りすぎないこと。
申し上げた通り、局所的に油分が入りすぎてしまうとシミになることがありますし、薄い革に大量に油分を含ませると革のコシがなくなってふにゃふにゃになったり型崩れを起こします。
また、バッグやレザージャケット、家具などは革の面積が靴に比べると遥かに大きいです。そんな大きな革製品のためレノベイターを薄めて塗り伸ばしやすくしたのが、ユニバーサルというわけです。
もちろん靴にも使えます。
革靴のお手入れのためのクリームやオイルの違いをまとめた記事もございます。
よければご覧ください。
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