カラリストチャンピオン斗谷諒が繰り出す感性と個体が報われる仕上げの革

人生の時間を全て何かひとつのことに費やしたら見えるものがあるんじゃないかと思い、自分だけの味が出したいと入ったパン屋も気付けばそもそもパンがそれほど好きじゃなかったので3ヶ月で辞め、1日の半分をウイニングイレブンに費やした結果3ヶ月で全国12位になり、才能の使い方を間違えてそうなので自分にしかできないことをしたいと、もともと趣味でもあった革の世界に入り、日本橋三越のシューケアマイスターでシウマイ二等兵に昇格し、コルテでカラリストを経験して、靴磨き選手権大会のカラーリング部門でチャンピオンになったのがこの方。

斗谷 諒(はかりだに りょう)さん。

良い笑顔すぎ

こちらの本にも斗谷さんがチャンピオンになる前のコラムが載っていて、良い靴とは?という質問に対して「個性が楽しめる靴」と回答されています。それが僕にとって非常に興味深く、詳しくお話をうかがいたいと思っていました。

紳士靴完全バイブル

『チャンピオンは今…』ということで斗谷さんに密着してまいりました。(3回くらい飲みに行っただけ

自分にしかできないこと

薬品を扱うので計量器が命

自分にしかできないことがしたい、という中で導き出した DANI というブランド。サービスの内容としてはこちらの6つを想定されています。

  1. 革の材料屋さん
  2. 革製品染め
  3. オリジナルレザー製品のOEM
  4. オリジナルブランド
  5. 革に使う薬品の調合
  6. イベント・セミナー

革の2次加工という領域の技術を活かした活動内容です。2次加工というのは鞣した革に対するアプローチです。簡単に言うと革の染色をしたり顔料や塗膜をコートしたりする工程です。
それ以外にもメーカーとの共同開発をされています。

これだけだとイマイチイメージしにくいかもしれませんが、ブランドのコンセプトがおもしろいのです。自分にしかできないことという使命を全うされている感じ。斗谷さんの経験に基づいた『感性』と『革に対する想い』が存分に詰まったものづくりです。
さ、ここからがおもしろいっすよ!

感性

感性というものは、往々にして身を置く環境や出会う人によって磨かれるものですが、その外的刺激や自分以外の他人が持つ感覚に培われるものなので、それを受け取る側の姿勢が寛容でないといけないと思うのです。物事に対してフラットで、単一の視点のみで判断しない柔軟さが、多角的な視点を養い人生を豊かにするのではないかと。

斗谷さんは、コルテに入った後、カラリストとして染めの表現方法を学ばれます。
シンプルな染めの技術ではあるけど、木型の立体感を表現するコルテの仕上げをひたすら追求しつつ、ブランドの価値の理解を深めながら技術の引き出しを増やすわけですが、お客さんが求めるものをアウトプットするのは当たり前だけど、あくまでブランドの方向性とお客さんの好みの中で、自分の嗜好をねじ込んで提案する事が斗谷さんの自己表現の追求。

コルテのお客さんはラグジュリーであることが価値なのではなくて個性に対して価値を感じてくださる方が多い。斗谷さんもちゃんとそこを理解していて、ただただ色を再現すればいいというわけではなくて、お客さんの欲しいものを顕在化した上で、そこに対して自分のアプローチを提案する。ただし、自分の嗜好やアプローチでお客さんを言いくるめるわけでは決してなく、引き出しを出し切った上で、お客さんに応えるために足りない部分は補うという姿勢。
非常に柔軟で、自分のエゴだけでクリエイトしない姿勢が、斗谷さんのお人柄であり感性であり作品だと思うのです。

お客さんのグッとくるポイントを外しちゃうと、どんなに凝った染めでも感動してもらえない

- 斗谷 諒

こだわりや実現したいことがニッチな世界なので、そのコンセプトや商品の魅力を理解してくれる人と仕事をしていきたい。作品を理解してくれて、そこを気に入ってくれて買ってくれたお客さんを目の当たりにしたときの快感は半端ない。場合によっては、ご自身で作った材料が作り手と販売店を介してお客さんの手に渡る事もあるわけですが、それでもそこを理解してくれたときが嬉しい。だからあとは、いかに純度を高くそれを伝えていくかというところ…とおっしゃいます。
想いを伝えるところまでが作品。

次は、フラットでありながら相手に対して興味と理解を示す、そんな斗谷さんの感性が繰り出す『革の仕上げ』と『経年変化』について。

個が報われる仕上げと経年変化

血筋

例えば、自分の皮が鞣されるとして、人生をかけて悩んでできたシワ、楽しい経験によって刻まれた笑ジワがあるとしますよね。今の主流の仕上げは、そういった個体の特徴を全部隠す仕上げです。
「それって革が報われない」とおっしゃいます。

そしてもうひとつ。人間、特に日本人が普遍的に持っているであろう感覚。
例えば、古びたものの中に感じる迫力とか趣きみたいなもの。経年変化というやつです。

その経年変化がもたらす迫力に着想を得て、ご自身の感性とご経験を掛け合わせて作られた革が、カンサビル [KAMSABILL] です。

家にある長く使っているものがどういうわけか良い雰囲気を放っていることがあると思います。
それは愛着であったり、縁のようなものを自分が感じているからかもしれませんが、それと同時に物に魂が宿っているようなそんな気持ちを覚えることもあるでしょう。その、使い込んで古びた姿が持つ雰囲気の良さをかつて「神さびる」という言葉で表していたのです。

革の説明は是非ブランドサイト(制作中)をご覧いただきたいのですが、簡単に言うとカンサビルはこういう革。

  • 牛革のオイルドレザー
  • オイルワックスが多いためメンテフリー
  • キズやシワを前面に引き出す加工
  • トップコートを施さない
  • 使い込むとツヤとパサつきが生まれる
カンサビルの経年変化

動物個体の革の特徴を活かしつつ、さらに持ち主の使い方やエイジングが顕著に反映される、そんな仕上げの革。動物の個性と持ち主の個性を掛け合わせ、さらにエイジングを伴って唯一無二の表情を見せる、そんな革です。動物本来の傷や模様をネガティブなものと捉えるのではなく、ひとつの個性という今までの価値を覆す革。シウマイ二等兵の頃からそういう想いがあって、それを具現化した革です。
さらに、使い込むことでツヤとパサつきがうまれるという今までなかった経年変化を独自開発された、そんな革です。

よく良い革ってなんだろうって話になります。
それってすごく難しいトピックだと思っていて、靴の種類やデザインによってその靴を活かす革も変わってくるし、靴を際立たせるのも使う革次第だし、ドレスシューズにはツヤ革だけどブーツにはツヤ革かって言えばそうではないし。また、塗膜のない革は革らしいかもしれないけどシミになりやすいし、海外の高級車の内装は塗膜でバッチリコートされてる革だし、とかとか。
プロダクトによって『良い革 = 最適な革』という式は成り立たないし、今市場に出回っているほとんどの革が顔料や塗膜でコートされている以上、本物の革を見れる機会ってそもそもあるの?という。

カンサビルはその難しいトピックから少し離れて、革の優劣に捉われず個性こそに価値を見出した革です。
なにそれ、超ステキなんですけど

カンサビルを使って、革靴職人・和泉澤 良(いずみさわ りょう)さんに作ってもらった靴がこちら。

よく見ると血筋が出てます

靴のデザインも仕上げのディティールもかっこよすぎてズルいのはさておき、革の表情が一番目立つこの部分にカンサビルの個性が表現されている靴です。

先日オーダーしました♡

新品なのでツヤはありますが、これが経年変化を経てどう変化していくかがすごく楽しみだと思いませんか?カンサビルはメンテナンスフリーを謳ってるので、ブラッシングだけでメンテするのもありだと思うし、ツヤを保つクリームやワックスでケアするのもありだと思うし。
これもまた難しいトピックである、革にとって何が良いのか?という話ではなく、正解・不正解を決めることのできない楽しみ方があると思うのです。

いままで血筋とかシワとかがあることによって価値が低いとされていた革の原皮も、この革によって新しい価値として認識されるかもしれないとすら思いますよね。

DANI ベルト 他

DANI のブランドから出てるカンサビルの革を使ったベルトを作っていただきました。

パッケージのこだわりステキすぎ
緑っぽいけど色はオリーブ

写真だと伝わりづらいですが色はオリーブ。色の数も4種類くらいありますし、バックルの種類も4種類(2色展開なので正確には8種類)。ベルトもステッチが入っているドレス仕立てのフェザータイプと、ノンステッチのフラットタイプの2種類から選べるようです。

カンサビルはツヤと毛羽立ちのコントラストが特徴なわけですが、自分がこのベルトとどう付き合っていくのか、どうケアをしていくのかという、正解のないおもしろさ。とりあえずローション入れるっていう今までの発想ではなく、自由な発想で育てていこうではありませんか。

最後に

僭越ながら、実は僕も革の血筋とかシワがあった方が革の風合いというか柔らかさみたいなものが際立つわけだから、そういう靴があってもいいのに、と常々思っておりまして。
『今までと違う価値』なんて言うと大袈裟なようですが、正解・不正解ではない自分だけの個性を楽しむという捉え方にとても共感しました。
だからこの人の話を聞いているのがおもしろい。飲みに行くとさらにおもしろい。笑

斗谷さんのご活動や、制作中の革小物やベルトについてはご本人のインスタアカウントに随時更新されていますので、是非ご覧になってみてください。
instagram アカウント:@ryo_hakaridani

たいした染めじゃないですが

斗谷さんに見てもらうために自分で染めた靴を履いて行きました。「くすみさんは品のある仕上げが好きなんすね」と、お褒めに預かりました。
僕の品の良さが出ちゃってたみたいです

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
斗谷さんと一緒に企画しているこちらのイベントも是非ご覧ください。企画側の我々が一番盛り上がってます。笑

ネルチャン登録よろしくネ

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Profile プロフィール

くすみ
東京
1986.9.25 愛知県生まれ
『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行っています。
前職の経験からシューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども手がけています。
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