工場見学

エドワードグリーンとローク、ダンケルマンのファクトリーツアーへ【革靴工場見学①】

[Loose & Colorful] For ladies page
工場見学

 

イギリス革靴視察の旅に来ております。2日目、早速ノザープトンにやって参りました。
ファクトリーショップの記事はこちらをご覧ください。

 

2日間でファクトリーショップをめぐりながら、光栄にもファクトリーツアー(工場見学)をさせていただきました。
見学をさせていただいたのは、エドワードグリーン [Edward Green] とローク [Loake] の2工場。
本当はノーザンプトンのミュージアムにも行きたかったのですが事情があって断念。

 

あと、ケタリングという町にダンケルマン [Dunkelman & Son Ltd] という木型やシューツリーや作っている会社があるのですが、そちらも見学をさせていただきました。

 

かなりニッチな世界ですが、お好きな方は是非ご覧になってみてください。

 

 

ノーザンプトンで革靴が名高い理由

ノーザンプトンの街中に大きな金台

 

そもそもなぜノーザンプトンで革靴の生産が盛んなのかと申しますと、3つの要素が豊富なのが理由なのだそうです。

  • 革を鞣すための木
  • 革を鞣す時に必要な水
  • たくさんの牛を育てるための土地

 

この3つが豊富だったことから、ノーザンプトンを含む近隣の町では昔から小さな革靴メーカーがたくさんありました。
長い時間を経て、淘汰されたメーカーもあれば逆に買収したりされたりするメーカーもあり、今では名の知れたブランドが残るようになったのだそうです。

 

 

エドワードグリーン工場見学

 

まずはエドワードグリーンの工場見学へ。

 

残念ながら撮影できた写真はこちらの写真のみ。
やはり名高いブランドだけあってコンフィデンシャルなのでしょう。それでも工場内を見学させていただけたのは大変光栄なことです。
CEOのヒラリーさんと少しだけ挨拶を交わし、工場で作業されている方に連れられて各工程を見せていただきました。

 

ほんの数分でしたがヒラリーさんから覇気というか溢れ出る力強さを感じました。

 

 

案内してくださったアダムさんによると、恐らくエドワードグリーンで生産されている靴は週に300〜400足とのこと。
それも納得で、スピードと数を重視しているというよりは、手作業の工程がかなり多いようでした。

 

かなり大きく分けて、3つの工程ごとに部屋が分かれていました。

  • パターンでパーツを裁断する工程
  • 革を漉(す)いたり塗ったりする工程
  • 釣り込み、底付け、仕上げの工程

 

文字だけだと辛いので、簡単にご紹介してみます。

 

パーツの裁断

パターンはプラスチック?アクリル?の透明な板がサイズごとに用意されていて、それに沿って各パーツを裁断されていました。

 

ごく稀にプレス機でパーツを裁断することもあるようですが、裁断はほとんど手作業で行われています。
刃先がカーブした特殊な革包丁を見せてもらいました。常に刃先をシャープに保っていると、刃を研ぐ道具も一緒に見せてもらいました。

 

パーツの裁断の人数は他の工程と比べるとそれほど多くありませんが、ほとんどが男性によって行われています。

 

漉きと縫製

こちらは逆に、タトゥーよりも目立つアイラインが目立つ恐らく20代であろう方から70以上の白髪の女性まで、たくさんの女性が担当されていました。

 

漉きと縫製は靴のアッパー、つまり靴の顔となり見た目に大きく影響する部分ですね。
例えばこういうキャップトゥのステッチ。

 

 

こちらはダブルですがモデルによってはトリプルステッチの入ったものもあります。
これらは全て1つの針、1つのボビンで2回、もしくは3回塗っているんです。2つもしくは3つの針で同時に縫うと、これほど幅の狭いステッチは縫えないと担当の方がおっしゃっていました。

 

ちなみに、次の釣り込みや底付けの工程はほぼ男性によって行われているのですが、この男女比は昔から続いている伝統的な割合らしいです。なんとなく納得できるのは僕だけじゃないと思います。

 

 

とにかく女性の多さに驚いた、という個人的な感想でした。笑
単純に国民性なのかわかりませんが、みなさん明るい方が多くて魅力的でした。

 

釣り込み・底付け

釣り込みや底付けの工程は、日本でもみたことのある工程が多かったです。
使っている機械が同じかどうかは知りませんが、工程的に特別なことがあるかと言えばそうでもなさそうです。もちろん技術的な話は別として。

 

エドワードグリーンもグッドイヤーウェルテッドなメーカーですが、リブテープ、ウェルト、シャンクとコルク、そしてアウトソール(ヒドゥンチャンネルがデフォ)みたいな感じでした。

 

 

革を手作業でカットするというところを重要視している印象を持ちました。
作業工程云々というよりは、デザインやラスト、ブランディングに注力しているメーカーという気がします。
82ラストの靴を1足購入しましたが、やはりあの土踏まずの持ち上がり方は秀逸です。
履き心地、歩き心地にどれだけ影響するのかとっても楽しみですが、それと同じくらいトラディショナルとエレガンスを感じさせるシンプルなデザインは魅力的です。

 

写真撮りたかったなぁ…

 

 

ダンケルマン工場見学

 

ダンケルマンは日本にいたらなかなか名前を聞く機会のない会社ですが、サフィールやコルドヌリアングレーズと同じく、アルマグループの1社です。

 

 

 

ダンケルマンでは主に、シューケアブランドダスコ製品の販売と、シューツリーや木型を作っています。
ただし量産をするのではなく、木型のモデルを作ったり靴からツリーのモデルを起こしたりするのがメインです。また、ダスコというブランドでシューケアグッズを販売されたり、シューツリー製作の一環でシューストレッチャーなども作っています。

 

 

ショールームには名だたるブランドのツリーが。

 

 

 

 

こちらの大きな建物は倉庫も兼ねているので、ダスコ製品だけでなく、チャーチなどのシューブランドのツリーを袋に詰めたり、梱包や出荷作業をするところでもあります。

 

 

 

左端のエリアでは木型やシューキーパーなどの製作が行われています。
というわけで木材を削る機械がたくさん。

 

 

 

他にもレーザーで木材にブランドロゴを印字したり。

 

レーザーなら5秒で印字できます

 

 

こちらはかなりおもしろくて、ある木型の形を元にその形を忠実に複製できる機械です。

 

奥の木型をもとに複製します

 

仕組みとしてはアナログでとてもシンプルですが、すごく優秀な機械です。

 

 

ハンドルを少し回すと、細かくサイズ調整ができる優れもの。アナログなので5mm単位ではなく、もっと細かい単位でサイズ違いの複製が可能です。(説明すると1記事できてしまうので、簡単なご紹介にとどめておきます)

 

 

他にも3Dスキャンの技術を使ったり…

 

 

 

それをさらに滑らかなデータにしたり、パーツごとに細分化したり…

 

 

 

アナログ、デジタル、さらに最先端をうまく使って木型やツリーの設計をされているのがわかります。

 

 

この木型。

 

 

 

側面にポツポツしたしたマーキングがあるのお分りいただけるでしょうか?
これは文字通りマーキングの役割を果たし、このポツポツのラインに沿って木型をカットすると、さっきも出てきたあのブランドのシューツリーになりますね!

 

 

この辺りお仕事を積極的にされているフィルさんがいろいろと説明してくださいました。楽しんでどんどん新しいことに取り組んでお仕事をされている姿勢がお話から伝わりました。
ちなみに息子さんはG&Gで、シューメイキングの世界チャンピオンになった方と一緒にお仕事をされているのだとか。

 

 

ローク工場見学

 

ロークは生産数が圧倒的に多いブランドです。
タイにも提携工場があってそちらで週に2,500足、現地の工場と合わせると週に6,000足を生産されているとのこと。

 

日本でのロークのイメージってこの靴ですが、これは現地ではそうではありません。

 

amazon

 

 

紳士靴、それも結構トレンドを意識しつつ生産モデルや生産数を管理して作られています。モデル数だけでいうと160種類以上のモデルがあり、革の種類や色の違いを含めると390種類以上のモデルを生産しているようなメーカーです。

 

数を作るかわりにクオリティが低いかといえば全くそんなことはなく綺麗な靴ばかりです。工場のとなりにファクトリーショップがなかったことが残念です。笑

 

ロークは生まれてからずっと家族経営のシューメーカーです。
その一家の考え方でもあるのですが、利益をそれほど求めず、いいものとたくさん作りたいと考える人たちによって経営されているのだそうです。

 

数と効率重視の生産

ロークのすごいところは、新しいモデルが頻繁に作られていること。
デザインとパターンの部門も見せてもらいましたが、思った以上にデジタルでした。基本となるサイズ8の木型でデザインをし、そのパターンをソフトウェアで全サイズに展開。

 

 

 

さらに、それを出力すると厚紙を自動で裁断して、パターンを切り出してくれるという先進っぷり。タトゥーとヒゲのいかついおっちゃんが、手でやるよりこっちの方が効率的で正確だろ?と説明してくれました。

 

 

こんなマシンです。

 

 

それを製作部門に持っていけば、木型にぴったりあったサンプルが2〜3日で出来上がるというしくみ。いちいち外に依頼してたら2〜3週間かかるだろ?と隣にいたイケメンのミュージシャンみたいなお兄ちゃんが説明してくれました。

 

 

これ以外は、生産工程は日本でも見たことのある工程と似ています。

 

 

ただし、圧倒的な数をこなせる体制があります。
工場はレンガづくりの結構古い建物ですが、かなり広く、機械の数も多い印象です。

 

 

 

これ。

 

 

かかとの積み上げをプレス機で裁断するための型です。めっちゃイカつい!笑
これで一気に4枚の積み上げをガチャンとカットしたり、ソールも同じような型でガチャンです。

 

クオリティへのこだわり

 

革はヨーロッパから仕入れているようですが、検品は結構厳しい印象です。
革特有の模様は靴に避けられることが多い印象ですが、そういったものを細かくチェックして時にはロット単位で返品してクオリティを保っています。

 

効率重視とは言え、手作業による工程も多いのでどうしても担当者のスキルに依存するところがあります。
このモデル数と生産数をどうやって管理しているのかと言えば、やはり手作業や目視確認などを徹底していると説明をしてもらいました。

 

 

靴作りの歴史・ケタリング

 

工場見学ではありませんが、ノーザンプトンの近隣の街のご紹介です。

 

ケタリング [Kettering] もノーザンプトン州 [shire] の街のひとつです。
こちらも靴づくりが盛んだった街で、街の中心に無料公開している博物館があります。

 

 

 

1775年にタンナーができて、1858年にケタリングではじめての靴工場ができて、1914年にブーツの生産がはじまり、1939年以降は世界大戦の軍用ブーツを生産していたりという歴史があります。

 

ケタリングで作られた靴が初めてエベレストを登頂した靴だったりとか、ノーザンプトン州一帯で靴作りが盛んであったようです。

 

 

最後に

グリーンとローク、それぞれ違った特徴を持つシューメーカーをご紹介できたのはおもしろかったんじゃないかなぁと思います。

 

もう少し工場見学の予定がありますので、また後日ご紹介してまいります。これもまた違ってきっとおもしろいと思います。

 

 

 

毎日こういう食事が続いてます。
何食べても美味しく感じられる幸せな舌なので、まだ全然大丈夫ですが、ロンドンに来たのでそろそろ違ったものが食べたいなぁと思います。

 

Sushi MANIA とか WASABI っていうお店はいかにもって感じがしますが。笑

 

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