ユニオンインペリアルの木型設計について聞いてきました [Union Imperial]

 

ユニオンインペリアル [Union Imperial] を製造されている、世界長ユニオン株式會社にお邪魔してきました。
3〜4万円台で靴を提供してくださってるブランドということもあり、個人的に非常に気になっていました。webサイトには『歩行科学に基づく木型の設計』について記載があり、それも気になっていたポイントですが、既成靴は24.0cmからなので、僕のサイズがない…

 

ただ、工場には23cm 用のサイズサンプルがあって試着もさせていただきました。
履き心地やサイズ感、その木型についてもご紹介してまいりますので、是非ご覧になってみてください。

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世界長ユニオンとは?

 

ご存知ない方のために簡単にメーカーのご説明を。
世界長ユニオン株式會社さんは戦後 [1952年] に創業。当時、日本の靴業界にはグッドイヤーの靴しかありませんでしたが、その頃から接着剤の技術が発達してマッケイ製法の靴やセメンテッド製法の靴が発達してきました。
また、他社がグッドイヤーのウェルト靴を作っていたことや、マッケイの軽くて足に馴染む靴がまだ日本に紹介されていなかったので先んじてイタリアのデザイナーを招いたり日本の技術者をイタリアに送ったりして、技術や機械を導入されイタリア的な靴の流行に大きく貢献したメーカーさんです。
それが『マッケイのユニオン』と称される所以でもあります。

 

 

 

現在ユニオンインペリアルにはベーシックに寄ったデザインの靴が多いですが、世界長ユニオンさんで作られているマレリー [Marelli] というブランドもイタリアに起源があったり、デザインやマッケイ製法など技術的な面でもイタリア的な靴づくりを元に発展されてきたメーカーさんです。
マッケイだけじゃなく、ハンドソーンにもグッドイヤーにも対応されているのも特徴だったり、カルマンソロジー [Calmanthology] のOEMを受け持っていたり、何かと幅広いメーカーさんです。

 

 

ユニオンインペリアル

 

次はユニオンインペリアルというブランドについて。
現在、ユニオンインペリアルには3つのラインがあります。

 

  1. プレミアム [Premium]
  2. プレステージ [Prestige]
  3. グッドイヤーウェルテッド [Goodyear Welted]

 

プレミアムとプレステージはハンドソーンウェルテッド製法(九分仕立て)。グッドイヤーウェルテッドは文字通りグッドイヤーウェルテッド製法で作られています。
ちなみに、世界長ユニオンさんとトレーディングポストさんのコラボブランド、ソフィス&ソリッド [Sofice&Solid] というブランドも展開されていて、ボロネーゼ式グッドイヤー・ウェルテッド製法という、全足部は柔らかく中足部は硬いという特殊な製法の靴もあります。

 

Sofice&Solid = 柔らかい&硬いの意

 

 

というわけで、まずはデザインの一部をご覧ください。
ストレートチップ。革の継ぎ目の縫い目が見えない仕様になっています。

 

 

 

ホールカット。こちらはチゼルトゥですね。
木型は大きく分けると3種類、細かく分けると12種類です。
このようにモデルによってつま先の形状が少々違う場合もあります。木型の話ももちろん後ほど。

 

 

 

撥水加工の施された革とラバーソールが使われた雨用の靴なども展開されています。雨の季節は嬉しいですね。この日も雨でした。

 

撥水レザー青キレイ

 

アノネイのデッドストックの革を使った、ちょっとカジュアル感強めの外羽根ウイングチップ。
サイジングがデカすぎなければビジネスでも全然いけそうですね!

 

 

 

 

スエードのUチップ。
こちらはC.F.ステッド社のデッドストックのカーフスエード [Janus Suede] です。毛足が整っていてとっても綺麗ですよね。

 

 

ここでご紹介したものは極々一部です。
9月に日比谷に直営店ができるようですが、そこで販売されるモデルになります。今百貨店で売られてるモデルとはちょっと違って、こっちは少し高めの価格設定になる模様。

 

 

価格

価格帯はこんな感じです。

 

プレミアム ハンドソーン ¥48,000
プレステージ ハンドソーン ¥39,000〜¥43,000
グッドイヤー グッドイヤー ¥36,000〜¥38,000
ソフィス&ソリッド ボロネーゼグッドイヤー ¥54,000

 

お気付きかと思いますが、靴の製法や使われている革を見てもかなりリーズナブルです。
僕もそこがとにかく不思議でした。ハンドソーンウェルテッド製法なのであれば100%国産だと実現は難しいはず…。

 

理由は簡単で、関税が優遇されるベトナムで製造されているモデルがあるので、商品の単価を抑えられるから。ベトナムには良い革がないのでヨーロッパから仕入れる必要がありますが、現地の方々は若くて素直なのでクオリティの高いものを仕上げてくれるようです。
日本ではどんどん職人さんが少なくなってきているのと、ベトナムの技術もどんどんよくなっているので、無理やりメイドインジャパンをうたわなくても我々消費者にとってはメリットがある時代がくるのかもしないとユニオンインペリアル担当の小田さんはおっしゃいます。
逆に、製造の一部を日本で担うことでメイドインジャパンをうたうことができたとしても、価格競争で負けてしまうとか、価格を下げることによってスペックを諦めなければいけないのではあれば本末転倒ですよね、という話。

 

製造コストを抑える仕組みは納得できましたが、メーカー独自の強みや付加価値があるはず。というかなければならないはず。
ユニオンインペリアルの靴の『木型』について詳しいお話をうかがいたくて申し込んだ取材でした。

 

 

足なりの木型

二〜三の甲あたり、中心線より内側が肉付きがある

 

ユニオンインペリアルで採用されている木型はこちら。webサイトでも『足なりの木型』について明記されています。
簡単にご説明すると、木型の中心線より内側に肉付きを寄せることで、より足に近い形の靴になります。
それによって、甲とかかとで足をしっかりホールドするという考え方の木型です。
また、かかとの丸みは残して抜けにくくしています。

 

上の写真からもわかると思いますが、三の甲のあたりは中心線より内側(右側)にボリュームがあります。自分の足を見ても、確かに甲の少し内側に骨があるのがわかります。
また、日本人のかかとは海外の方と比べると小さいわけですが、だからといって靴のかかとを小さくしすぎると丸みがなくなって、引っかかりがなくなってしまいます。かかとにある程度丸みを持たせることで、甲とかかとでホールドする履き心地を実現されています。

 

 

また、甲が低いのもユニオンインペリアルの木型の特徴です。二の甲から三の甲は盛り上がっていますが、一の甲からつま先はだいぶ低い。メリハリがあっていいですね。
薄いのでつま先の丸みがあっても野暮ったくなくてかわいらしいシルエットです。かわいらしいという表現が相応しいかはわかりませんが、僕はとっても好き。

 

 

横から見ると一目瞭然。少しだけトゥスプリングがありながら、つま先に向けて甲が低くなっているのがわかります。

 

 

木型は大きく分けてこちらの3種類。つま先の形状や細かい仕様の違いがあるので、細かく分けると12種類になります。

  • ストレートの木型:標準からやや広めタイプ
  • 足なりの木型:標準からやや広めタイプ
  • 足なりの木型:やや細め

 

 

とにかくこの木型がとっても気になってたんです。
というのも、全体的にそこそこ足に合ってる靴でも、靴紐をしっかり締めると靴紐のあたりが圧迫されて甲が痛いっていう経験、ありませんか?靴によってはしっかり紐を締めないとかかとが抜けてしまうものもあったりします。なので僕はついつい靴紐をキツく締めてしまうのですが、この木型ならそうはならないんじゃないかと思っていたのです!

 

ということでサイズ5を試着させていただくと…

 

サイズ感

 

やだ気持ちいい!

 

というかまず形がかわいい。23cm相当ということですが、キツめが好きな僕からするとスーパージャストの履き心地です。ただ、キツめと呼ぶにはちょっと物足りなさはありました。ハンドソーンのモデルとグッドイヤーのモデルがありますから、それぞれ沈んだらどうなるか、そこが気になるところです。
とはいえ、僕は極度のキツめ好きという偏愛志向なので参考にしないでいただきたいのですが(笑)、キツめ志向の方はご試着の際はハーフサイズ小さいものも履いてみていただくことをおすすめします。
とにかく全体的にやさしく包みこまれる、気持ちの良いフィット感でございました。

 

サンプルはモンクだったので、残念ながら靴紐の検証はできませんでした。ただ、この木型で1足作っていただけることになりましたので、また完成したらそちらもご紹介させていただきます。どのデザインにしようかしら。

 

 

それともうひとつ、かかとの傾きも特徴的です。

 

後方屈曲木型

右足の骨、かかと側の図

 

これです。
足は骨格上、歩行時の足の動きを伴ってかかとの方向が傾いています。日本人はかかとはこの傾きが顕著だといわれているらしく、靴の履き心地に大きな影響があるとのことです。
『歩行時の』というのが重要で、静的には一直線のよう見えても、動的に足を捉えると後方が屈曲していることが足の構造的には合っているということ。

 

上の写真、右足のかかとが中心から外側にあるのがわかります。(写真はちょっと極端でしたが)かかとに角度を設けることで、前足部がまっすぐ前を向くので足が外に流れることがありません。
足の外側が当たって痛みを感じられるという方は、もしかしたらこの木型の靴を履いてみるとそのお悩みが解消するかもしれませんね。

 

 

実はさっきの木型の写真もかかとが外側に傾いてます。これは左足の木型なので、かかとが左側に振ってますよね。

 

 

 

木型の中心線が曖昧で、足の甲の内側が斜めに傾いていることがわかります。しかし、この木型は靴に仕立てるのが難しい。パターンも複雑になるし、釣り込みも大変だしと、靴を作るのが難しいのです。

 

工業製品の木型

 

日本でも軍靴を作っていた時代があるようですが、その頃は大量生産をしなければならなかったため、工業製品として効率よく靴を作らなければいけません。
その時代を経て、中心線のある木型が一般的になりました。

 

でもある時、長く履き古された靴を見て、足の甲の部分に斜めにクセがついていることに気付いた方がいて、それと昔の木型を見比べて「あれ?斜めの方がいいんじゃない?」という話になったみたいです。
ちなみにその靴はオールデンだったらしいです。

 

そしてこちらが100年前の木型。日本の木型とのことですが、同じように木型の中心より内側に肉付きがあるのがおわかりいただけると思います。

 

写真左:100年前の木型

 

 

ユニオン工場ツアー

 

工場にもお邪魔させていただきましたので、ちょっとだけご紹介させていただきます。

 

革の在庫とインペリアル担当小田さん

 

 

今はコロナの影響で工場は週2日稼働とのことですが、主に直営店モデルが製造されていました。
ストレートチップ。つま先が短いことによって、チゼルトゥの形状がとてもかわいらしい。

 

こちらはハンドソーンの図。ベトナムから上がってきたものです。

 

 

こちらの工場で吊り込みをされているモデルもあります。
吊り込み機を使うわけですが、機械が吊り込むのは甲とつま先だけ。かかとはこのように職人さんが手作業で吊り込まれています。

 

 

 

 

こちらも先ほどご覧いただいた直営店モデル。

 

あのね、アノネイの革だよ

 

 

 

カルマンソロジーのソール。この色を出すのに苦労されたそうです。

 

 

 

最後に

現在は新宿伊勢丹、銀座三越など全国の百貨店で見られるユニオンインペリアルですが、9月に日比谷に初の直営店ができるとのことです。そこでは先ほど写真でご紹介したハイエンドラインの靴のみが販売されるとのことですが、勝手に現行の3万円4万円台のモデルも販売されることになると思ってます。笑

 

最近はユニオンインペリアルのインスタもいろんな写真が上がっていますので、是非そちらもご覧いただくといいと思います。

@unionimperial_official

 

Union Imperial 公式サイト

 

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世界長ユニオンさんが展開するイウゲン [Iugen] というローファーしか作ってないとても興味深いブランドについてもいろいろとお話を伺ってきましたので、そちらも近々ご紹介させていただきます。ご期待ください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

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Comments コメント
  1. カモネギ より:

    いつも楽しく拝見しています。
    足首側が第三甲でつま先側が第一甲という表現になっているように見受けられますが、逆ではないでしょうか?
    私の誤認識でしたらご放念ください。

    >二の甲から三の甲は盛り上がっていますが、一の甲からつま先はだいぶ低い。

    • くすみ より:

      カモネギさま、コメントありがとうございます。
      僕は飯野高広さんの著書『紳士靴を嗜む』の22ページより、つまさきから足首にかけて1,2,3という順番であるという表記を参考にさせていただいておりまして、特に他の文献などは見ていないのですが、他にもあれば是非ご教示お願いいたします。

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くすみ
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1986.9.25 愛知県生まれ
『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行っています。
前職の経験からシューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども手がけています。
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