SEARCH

水分と油分が革の繊維に与える影響について

革に対して博識な方にお会いする機会があり、いろいろとお話を伺った。
僕の疑問は単純で、

  • 革を長持ちさせるための適切なお手入れとは
  • 水分が革に及ぼす影響
  • 油分が革に及ぼす影響

この3つ。

まだ全てが理解できたわけではないけれども、興味のある方はよければご覧いただきたい。



革の長期保存による物性の変化

皮は「鞣し」という工程を経て、皮のコラーゲンとクロムという金属元素が結合することで革となり、腐食しなくなるとう素材だ。
しかし、バッグでも財布でも靴でも、多くの革が屈曲するプロダクトに使用されるため、屈曲や伸びによる外的圧力がかかり、場合によってはそれが原因で劣化する。

なので、革はお手入れすることで長持ちしますよねというのはご存知の通りなのだけど、じゃあ何もアクションを加えずただただ放置した革はどうなるのか。これについては論文があって、数年間放置した革は、引張り、伸び、引裂き、耐屈曲性など機械的性質(物理的性質)は減少するという実験結果が出ている。
お話うかがった先生によると、これは時間の経過によって革に含まれる遊離脂肪が酸化することでカサつきが出たり、繊維どうしの滑りが悪くなったりして、柔軟性を欠くことが原因ということらしい。

逆に、革に含まれる水分は環境によって変化する。
革は湿度や水分を吸ったり放出したりするので、湿気が多いところで保存した革は水分を保つし、乾いた環境で保存した革は水分を逃して乾燥するでしょうということらしい。
ということを前提に、次は水分と油分が革にどう影響を及ぼすのかということについてご説明したい。

水分が革に及ぼす影響

革は湿潤させている方が柔らかくはなるけれども、革は水分を吸収したり放出する力があるので、それはつまり環境によって革の水分含有量が変わるということで、革の柔軟性を保つために水分を含める必要はないというのが先生のご意見だ。
「柔らかくするために水分を含める必要なない、あくまで油でしょ」とおっしゃっていた。

革は水分によって一時的に柔らかくなるけれども、結局水分は出ていってしまうから、水分だけで革を柔軟に保つことはできないということだと、僕は今のところ解釈している。
確かにオイル系のケア用品を塗ると柔らかくなるけど、デリケートクリームだけを塗った場合は2〜3日すると柔らかさが弱くなっているという感覚はあって、それは納得だなと思った。

じゃあなんでクリームには水分が含まれているのかという話になるわけだけど、レザークリエイターの知人と話をしていたのは、クリームに水分を含むことで浸透性を高めているのでは?とか、水分を含むことで油分過多にならないように薄め液として水分を使っているのでは?とか、逆に油分を繊維の奥まで浸透させすぎないためなのでは?とか、塗り伸ばしやすくするためなのでは?と予測合戦が繰り広げられたが、正解には辿り着いていない。
このあたりはクリームメーカーさんにお話を伺いたいところだ。

また、雨に濡れると遊離脂肪が流れ出てしまうから革の硬化に繋がったり、湿度が高すぎるとカビが生えてしまうこともあったりするわけで、それなりに通気性の良いところで保存することがよしとされている。
つまり、水浸しでもいけないし湿度が高すぎてもダメだよね、というのは今まで認識で間違いなさそうだ。

油分が革に及ぼす影響

オイル系のケア用品はものによって革に馴染むのに時間がかかると感じる場合がある。
あと、油を塗りすぎると表面のツヤは出なくなるし、ベタベタした感じも残るしで、それを防ぐためにクリームには水分が含まれているのではないかとも思う。
つまり革の繊維層に適量を均等に行き渡らせて、油分過多にならないための水分ということなのではないか。

ただ、先生によると油分過多によるデメリットはもうひとつあって、革の繊維が油分過多の状態で屈曲すると、繊維が壊れてしまうというものらしい。

左から、A潤滑剤なし、B部分的に潤滑、C全面的に潤滑、D過剰潤滑、にしたもので、●が潤滑剤のない状態、◯が潤滑剤が浸透した状態だ。この状態で革を引っ張ると、AとDは革の繊維の交絡が崩れてしまっている。
オイルには揮発するものとそうでないもの、また硬化する乾性油と硬化しない不乾性油があるので、この図からはどれを使ったかはわからないが、不乾性油であっても革に残りやすいものはDのような状態になってしまうのかもしれない。

Cの状態は繊維の交絡を崩さないまま伸びているので理想的と言えそうだ。とにかくオイルは入れすぎ注意ということだ。

総括として

ということらしいので、ワックスを過度に乗せたくない僕としては、今のところレーダオイルの薄塗りが一番簡単でしっくりくるお手入れ方法のような気がしている。しかし、乾燥しすぎた革や雨に濡れて乾いた革であれば(まぁあまりそういう靴はないけど)、デリクリをさらっと塗ってからある程度革の浸透性を抑えるというのはありかもしれない。

レーダーオイルは浸透性も高いので上の写真のCのような状態にもっていきやすい感覚があるし、1回2回ならそんなにオイル過多になることはないからだ。

あともうひとつ、繊維の中に溶剤によって溶けたロウ分が浸透しすぎるとどうなるのかも気になっている。なんとなく溶剤が抜けるとロウ分が硬化して繊維層にダメージを与えそうだなぁという感覚はあるけど、こういうのを解き明かしていくのがおもしろい。

こちらの、タピールのレーダーオイル!【TAPIR - LEDER ÖL (Leather Oil) 】 これひとつあったら...

Share on SNS

SNSでシェアする

RELATED ENTRIES

関連記事

コメント

  1. ちりやま より:

    なかなか興味深い題材です
    ロウを浸透させ過ぎというとブルームが出るくらい浸透させているブライドルレザーがあるわけですが
    タンナーが敢えてやるくらいだから革に悪くはないんじゃないんですかね
    溶剤で浸透させるのと熱で浸透させるのだと違ったりするのかな?

    • くすみ より:

      ブライドルレザーの話はおっしゃるとおりですね。
      クレムっていいクリームだと思いますけど、ちゃんと落とせてないと表面ゴワゴワになりませんか?
      そう思うとツヤを出すのはいいですが、積極的に浸透させたくないなぁと思います。
      ミツロウとかカルナバとか種類も関係あるかもですね。

  2. グランド より:

    水分が及ぼす影響のところですが、以前くすみさんのYou Tubeチャンネルでアップしていたシューケア3社対談の動画の中で、水分で毛穴を開いて油分が浸透しやすい状態にするといった趣旨の説明がされていた記憶があります。(確かコロンブスの方でしたかね)
    自分はその説明で納得したクチですが、くすみさん的には他にも理由があると感じられてるのでしょうか?

    • くすみ より:

      コメントありがとうございます。
      そんなことありましたね!ということはやはり浸透性を高めるためというのが有力ですね。TWTG石見さんのクリームも浸透性を高めるためにかなり水分入れていると伺ったことを思い出しました。
      それ以外にも、オイルを直接というのはいろいろとリスクがありますから、それを緩和するためにも水分を使っているというのは、あながち間違ってないのではないかと思っています。あと、革を柔軟に保つための要因として直接的に水が作用しないみたいな書き方をしましたが、乳化しているクリームの場合は油と結合しているので単純な水と捉えるべきではないと思いますので、そんな単純な話でもなさそうだなぁと思います。
      全部「思います」なので全部推測なのですが、このあたりを解き明かしていきたいと思っております!

Profile

プロフィール

革靴ジャーナリスト/ブロガー

Kohei Kusumi

『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行っています。
シューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども手がけています。

月間最高ページビュー数:41万回
・webサイト設計、制作
詳しいプロフィールはこちら

Instagram

インスタグラム

YouTube

YouTube最新動画