まとめ

世界のタンナーと革靴に使われる革の種類をまとめてみました

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革を鞣す(なめす)工場をタンナーと言います。タンナリーと呼んだりもします。革を鞣す工程にはたくさんの水を必要とするため、河川に沿ってタンナーが存在する場合が多いですが、鞣すために使用する薬品が環境に影響を与えることもあるため、国によっては存続が難しい産業でもあります。

 

世界のタンナーは数多く存在していますが、革靴に使われる革はある程度限られていますし種類が多すぎるわけではないので聞き慣れてしまえば馴染みのある名前になると思います。
ご覧になってみてください。

 

 

アノネイ [Tannerie D’Annonay]

http://www.tannerie-annonay.fr/

 

アノネイは世界中のあらゆるブランドに革を提供しているフランスのタンナーです。
1838年に創業し、現在はプレミアムレザーのサプライヤーでありエキゾチックレザーの鞣しと販売をしているエルメス [HERMES] 傘下のエルメスキュイールプレシュー [H.c.p.]の子会社にあたります。
「アッパーにはアノネイのフレンチカーフを使用し…」というフレーズは、素材の品質の高さを示す常套句になるほど、アノネイという名前を見聞きする機会が多いですので、この機会に覚えておいていただきたいタンナーです。
ちなみに D’Annonay はダノネイと読みますが、Dは英語で言う The みたいな冠詞的なやつです。

 

ベガノ [Vegano]

 

透明感のあるアニリン仕上げの革です。革自体にはそれほどツヤを出す加工はされていないようですが、肌目は非常に綺麗なのが特徴です。
染色はされていても顔料などで仕上げられていない状態で出荷されるため、革の銀面の質感が活かされる仕上げの革です。逆に言うとシワやキズ、血筋などが少ない質の高い革でないとできない仕上げです。

 

顔料を使わず染料やタンパク質(カゼイン・アルブミンなど)だけで仕上げた革はアニリン革やアニリン仕上げと呼ばれ、透明感が出ます。革がもつ表情や特徴がそのまま活かされるだけでなく、経年変化を味わえる高品質な革とされています。また傷やシミもできやすいのも染料だけで仕上げた革の特徴です。

 

ボカルー [Vocalou]

 

光沢のあるセミアニリン仕上げのフルグレインカーフ(銀面のある革)です。
セミアニリン仕上げは、染料だけでなく薄く顔料を使って仕上げるため、傷やシミへの耐性も多少ですが高くなります。
顔料の色味にもよりますが、発色が良い仕上げや彩度の高い色味を実現できます。

 

ちなみに、海外のメゾン系のバッグや革小物などで、顔料多い革がよくみられます。

 

ラスティカーフ

セミアニリン仕上げのシボ革です。鞣す工程で自然なできるシボもあれば型押しで施すシボもあります。

 

カラグレイン

型押しによって凹凸のあるシボ革です。型押しの種類も豊富のようです。

 

 

デュプイ  [Tanneries Du Puy]

https://www.tanneriesdupuy.com/

 

デュプイは1946年に設立されたフランスのタンナーです。
こちらもハイブランドに革を提供しており、カーフスキンの伝統的なノウハウと『ボックス』という革でも有名です。アノネイと同じく H.c.p. に買収されています。同グループ、同国タンナーとして、アノネイとも技術共有なども含め共同作業をしているようです。
ちなみに、Du は 英語で言う of みたいな前置詞的なやつです。

 

ニュービンテージ [New Vintage]

ニューヴィンテージはカーフスキンで作られた手触りの良い天然革です。

 

シカーフ [SICALF]

カーフスキンで作られたクロム鞣し・セミアニリン仕上げの光沢のある革です。

 

 

イルチア [ILCEA]

https://www.english.ilceaconceria.it/

 

イルチア [ILCEA] は1930年代に設立された、イタリアのタンナーです。
ヴェッキアトスカーナ [Vecchia Toscana S.p.A.] というイタリアのタンナーと合併し、グループを通して靴だけでなくファッション業界にも革を提供しています。
カーフの加工以外にもスエードや型押し、エナメル、あとカンガルーの革などもあります。

 

ホースラディカ

 

シェルコードバンのような仕上げのクロム鞣しのカーフスキンです。表面がバフィングされ滑らかに仕上げられていて、ムラのある染めが施されています。仕上げは手作業で行われます。
ちなみにラディカやホースという商品もあります。

 

 

ゾンタ[Conceria Zonta S.p.a.]

http://www.conceriazonta.com/

 

ゾンタ [Conceria Zonta S.p.A.] は、1954年に設立されたイタリアのタンナーです。
ミュージアムカーフやネバダカーフなど、特徴的な仕上げの革で有名です。ちなみにS.p.A.というのはイタリア語で株式会社という意味だそうです。

 

ミュージアムカーフ [Museum Calf]

 

クロム鞣し・アニリン仕上げのミュージアムカーフです。大理石のようなムラのある仕上げが特徴で、独特の雰囲気を放ちます。

 

ネバダカーフ [Nevada Calf]

 

同じくクロム鞣し・アニリン仕上げのネバダカーフです。鮮やかで色数も多い、艶のある革です。

 

 

ワインハイマー [Weinheimer Leder]

https://weinheimer-leder.com/en/

 

ワインハイマー [Weinheimer Leder] は2003年に設立されたドイツのタンナーです。
もともとはカールフロイデンベルグ [Carl Freudenberg] グループから派生したタンナー事業の会社で、今でも150年前の方法と技術を受け継いでボックスカーフを製造しています。
しかしドイツでは環境保護のためタンナーが存続できなくなり、現在は隣国のポーランドで鞣しをしています。

 

ワインハイマーの黒のボックスカーフといえば非常に有名ですが、その他にもシボや型押し革なども生産されています。

 

ボックスカーフ

 

ボックスカーフというのはワインハイマーのものだけではありませんが、ワインハイマーのボックスカーフはクロム鞣し・アニリン仕上げの革です。

 

 

チャールズ F. ステッド [Charles. F. Stead]

http://www.cfstead.com/

 

チャールズ F. ステッドは主にスエードのような起毛革を製造しているイギリスのタンナーです。スエード、バック以外にも独特な質感と色味の革を数多く生産されている印象です。

 

スーパーバック [SUPER BUCK]

 

収縮加工によって毛足の短く整った美しいバックスキンです。まろやかという表現がふさわしく、鮮やかな染色も魅力的です。

 

ヤヌスカーフ [JANUS CALF]

 

アニリン仕上げのフルグレイン(銀付き)レザーです。銀面があるスエードですが、贅沢でシルキーなスエード面が特徴で、しっかりとした手触りが特徴です。

 

『ヌバック』は表側をやすりで擦って、革の繊維を表面化したもの。逆に『スエード』は、ヒツジやヤギなどの革の裏側の繊維を使っているものです。
『ベロア』は成牛の裏側、『バックスキン』はオスのシカの革をやすったものになります。

 

 

ホーウィン [Horween]

https://www.horween.com/

 

ホーウィン [Horween] は1905年に設立された、アメリカのタンナーです。
シェルコードバンやクロムエクセルなどホーウィン社特有の革で有名ですが、中でもコードバンを提供するタンナーとして名を馳せています。

 

シェルコードバン [Shell Cordovan]

 

馬のお尻を使ってできる革がコードバンです。
馬の臀部でのみ見られる密な繊維構造(シェル)を生かし、『革の宝石』とも呼ばれるほどの独特のツヤ感が魅力な革です。タンニンなめしとアニリン仕上げで完成までに半年をかけて出来上がる希少性の高い革です。

 

クロムエクセル [Chromexcel]

 

クロムエクセルは馬の皮を使った、プルアップレザー [pull-up] と呼ばれるオイルやワックスを多く含んだ仕上げの革です。 このレザーは、クロムとタンニンの混合なめしで、天然オイルと特製のグリースで仕上げが施されています。
こちらもアニリン仕上げでで独特な表情が特徴の革です。

 

ハッチグレイン [Hatchgrain]

 

ロシアンカーフと言われる現在は生産されていない革を模して作られたのがハッチグレインです。
しなやかな鞣し、型押しによるコシ、とアニリン仕上げによって生まれる独特な表情が特徴です。

 

 

山陽

http://sanyotan.co.jp/

 

山陽は、1911年に創業した、兵庫県姫路市にあるタンナーです。
ピット鞣しとドラム鞣しの両施設を保有しており、植物タンニン鞣しとクロム鞣しの革を生産されています。

 

 

国内の革靴メーカーだけでなく、数多く皮革産業メーカーに革を納めているタンナーとして知られています。
山陽さんの工場見学の記事はこちら

 

ベンゲル

国産メーカーの靴にも使われている革です。
鞣し、染色を行なった後、120℃のアイロンで手作業で仕上げて革のツヤを出しています。

 

 

栃木レザー

http://www.tochigi-leather.co.jp/

 

栃木レザーは、1937年に創業した栃木県のタンナーです。
栃木レザーを使ったバッグや財布、革小物も多く、ピットによるベジタブルタンニン鞣しで生産されたヌメ革はエイジングを楽しめます。

 

 

新喜皮革

https://shinki-hikaku.jp/

 

新喜皮革は、1951年に創業した兵庫県姫路市のタンナーです。
馬革専門のタンナーで、コードバンやホースハイドの鞣しと仕上げをしている数少ないタンナーのひとつです。
顔料で仕上げるオリジナルコードバンと、染料で染めた後グレージングを施して仕上げるオイルコードバンがあります。

 

 

日本と欧州の原皮の違い

 

一般的に成牛より子牛の方が上質な革になります。若い牛の方が、肌目が細かく傷やシワなどが少ないので、鞣した後にキメの細かい革になるからです。
日本のブランド牛は脂身を多くするため太らせて大きく育てるので、若い状態で屠殺されることは多くありません。また、太らせるということは皮膚病などのリスクがあるので、原皮にも良くありません。
一方欧州では、赤身のお肉を食べる場合が多いので、若い状態で牛を屠殺されることが多いです。決して日本の牛の原皮の全てが質が低いかというとそうではないのですが、ヨーロッパで取れる牛の原皮は革の生産に向いているということになります。

 

しかし、あくまで原皮は牛を食すときにできる副産物です。革を取るために牛を育てるということはありませんので、食文化の違いによって取れる原皮の質が違い、革の生産に向いている国があるということです。
また、日本のタンナーさんもヨーロッパから原皮を仕入れているところがあるので、日本で鞣された革の質は低いということではありません。

 

 

上がアノネイの革、下が国産の革。大きさが全然違うのがお分かりいただけると思います。
アノネイは一頭まるごとの革ですが、国産の革は半裁と言って革を半分に切ったものなので、本来の革はこの倍のサイズということになります。

 

世界長ユニオンさんにて

 

日本のブランド牛は一頭何百万円もするわけですが、原皮は数万円です。農家の方はブランド牛を育てた方が儲かりますもんね、という話。

 

ちなみに、クロコダイルやリザードのようなエキゾチックレザーを取り扱っているタンナーも世の中にはたくさんありますが、それほど大きなタンナーではないようなので、今回は割愛しています。

 

 

 

 

最後に

革靴を選ぶ時にタンナーと革の種類までを認識できるケースはあまり多くありませんが、革から選ぶ靴があってもいいと思ったのでした。やっぱり牛革の靴が多いですが、もっといろんな革を使ってもおもしろいですよね。
靴だけでなくバッグとか革小物を見ていてもいろんな色のいろんな革があって、革のことを知れば知るほどもっと欲しくなる病気を患ってしまうので、このくらいにしておきます。

 

革の種類は下のリンクでもご紹介してますので、よろしければ参考にしてみてください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

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