西洋靴150年展、日本の革靴の変遷〜現代の革靴クリエイター(松永はきもの資料館)
松永はきもの資料館
1870年(明治3年)の3月15日は西村勝三翁が築地・入船町に日本で初めてヨーロッパ式の革靴工場を開設した日です。なので3月15日は『靴の記念日』となっていて、さらに今年は革靴産業150周年記念の年であります。
そんな中、広島県福山市の『松永はきもの資料館』にて、西洋靴150年展が開催されており、先日お邪魔してまいりました。
もともと福山市の松永では下駄製造が盛んで、その工場の跡地に作られた資料館でもあり、日本の伝統的な履物、草履、わらじ、下駄も展示されています。それだけでなく、この資料館の創設者の方の世界の履き物コレクションも展示されていて、非常に興味深い施設です。しかし展示されいているのは、13,000点以上靴が貯蔵されているうちの約1,000点程度なので、今後の展示会やイベントにも興味が高まります。
今回の西洋靴150年展は明治時代の古い靴から、現代のクリエイターの靴まで、様々な靴が展示されていました。
目次
はきもの資料館所蔵物
はきもの資料館に所蔵されている靴には、国指定重要有形民俗文化財として登録されているものがいくつもあります。全国各地から収集した靴のうち、2,266点が一括で第164号として登録されてました。
日本人の生活や文化・歴史を物語る歴史的変遷や地域的特色・職能を示す貴重な文化財として、昭和60年4月19日に文部大臣から指定されたものなどがあります。
その中からいくつかご紹介してまいります。
編上げ紐の革靴。昭和2〜3年頃、兵庫県印南市製造。
深ゴム靴。
海軍の少尉以上の人が礼装・正装時に履いたもの。昭和14年頃、広島県呉市谷口源氏製作。
紳士靴メーカーの靴
ブランドやメーカーのわからない靴もありますが、まずは紳士靴のご紹介です。日本の革靴の歴史を感じる、今では珍しいデザインのものもございます。
※リーガルコーポレーションのリーガルアーカイブスから出展されているものもあります。
Chiyoda
オーツカ
チヨダシューズ / 千代田機械製靴
リーガルコーポレーション / 日本製靴
世界長ユニオン / ユニオン製靴
スタンダード靴 / 野村製靴
マドラス / アジア製靴
婦人靴メーカーの靴
1920年台に流行したアンクルストラップのパンプス。
1950年台、銀座ヨシノヤ製。
革の統制がなくなり、赤いハイヒールやサブリナシューズなど、多くのヒット商品が生まれた時代です。
こちらの靴のひだ飾りは薄く漉いた革を重ねて手で縫い合わせたものです。
1959年頃、甘利製靴製。
東京都浅草の職人さんの技術が詰め込まれた1足です。製造機械を導入した時期でもあります。
1960年代、マルコー製靴製。
ミニスカートが流行した時代でもあり、それに合わせたロングブーツが大ヒットした時代でもあります。
1975年頃、JAL 日本航空フライトアテンダントの制靴。
1980年、銀座ヨシノヤ製。
東京コレクションやパリコレが注目され、デザイナー&キャラクターブランドがブームになった時代。
1989年、銀座ヨシノヤ製。
1996年、銀座ヨシノヤ製。
ギャルやガングロといったファションが流行った時代で、厚底ブーツがヒットした時代でもあります。
一般社団法人東靴協会
1953年(昭和28年)、第4回製靴技術競技会で通産大臣賞を受賞した小笠原製靴の手縫い紳士靴です。
木型、型紙、製甲、底付け、仕上げ、すべてに日本の靴職人の技術を詰め込んだ最高水準の手縫い靴です。
皮革産業資料館
東京浅草の皮革産業資料館から歴史的な革靴や、皮革産業資料館・副館長の稲川實さんのご自身のコレクションも展示されています。
靴にまつわる歴史や研究をされており、書籍も出版されています。(新幹線で読もうと思って注文したけど、間に合わずでした)
明治時代の皇室や上流社会から広まった編上げ深靴(ブーツ)です。
明治の貴婦人たちには19世紀ヨーロッパ風のドレスと深靴を合わせた装いが人気でしたが、明治20年頃からは靴紐や留め具のついた短靴が広まりました。
文明開化で皇室や議会での正装は洋服となりました。礼服用の靴としてサイドゴアの深靴が作られました。
アッパーは7つのパーツが縫い合わせて作られているため『七つハギ』と呼ばれたそうです。
こちらは旧陸軍の軍靴。
国産古靴収集家
国産古靴収集家の井上 諒さんからも時代を感じるおもしろい靴が出展されています。新宿伊勢丹で行われた靴博2019でも出展をされた方です。
阪急梅田地下街 マルシン靴店
北海道旭川 オリンピア製靴 亀の革
大阪福島区 メリケン屋
神戸 新開地 トラヤ本店
大丸オリジナルブランド
スピングルムーヴ
2002年に誕生したレザースニーカーブランドです。
伝統と革新を備後(広島県東部)から世界へ発信するメーカーとして、パリ・ミラノコレクションでも取り上げられ、MADE IN JAPAN を掲げて世界を駆け巡るブランドです。
日本人の足の特徴を研究・設計し、職人の手作業で仕上げることで抜群のフィット感と履き心地を実現しています。日本では3メーカーしか実現できないバルカナイズ製法をベースに、革靴とは違うゴム履物を展開するメーカーです。
うなぎレザー / コードバン
パイソンレザー / オーストリッチ
カンガルーレザーのスニーカー
地元広島カープとのコラボスニーカー
広島県ゆかりの靴職人10人
広島県にゆかりのある靴職人の方々の作品も展示されていました。
広島で活動されている方、広島ご出身の方、広島に親戚がいる方など(笑)、広島県と何かしらゆかりのある方々です。
西野裕二
靴修理屋を営む西野裕二さん。
靴以外にもカバンや革物の修理は全般可能です。こちらは旅人の友人をイメージして作ったという「旅しながら育てる靴」。
角田健太郎
角田健太郎さん。
東京都浅草でご自身のビスポークシューズブランド「Shoemaker cado.」の靴職人をされながら、靴学校の講師もされています。
人形も同じボタンブーツ履いてる!
森川久美
森川久美さん。
広島市八丁堀のお店「靴屋 モリノ」で、オーダーメイドの女性の靴を作られています。靴を作る中でご自身が使いたいと思った革のアクセサリーやカバンなども作られています。
冨山健儀
冨山健儀さん。
前職はジュエリー会社で11年勤務され、趣味であったレザークラフトは独学で身につけ、神戸のシューズメイキングスクールで靴作りを学ばれました。
2017年呉市で Kengl Bespoke Studio を設立。
藤山なおみ
藤山なおみさん。
フランスの泥棒市で出会った子ども靴をきっかけに靴を作ろうと決意。京阪神のワークショップを渡り歩き靴作りを学ばれます。
2014年にイチリヅカシューズをスタート。
倉田哲也 / 倉田千亜希
倉田哲也さん、倉田千亜希さんご夫婦です。
現在は東京浅草の「ものづくり工房」に入居し、靴、カバン、財布、ベルトなどの革小物のOEM・プロデュースをされています。
夫婦2人で「倉shoes クラッシュ」運営されています。
井上篤
井上篤さん。
イギリスでファッションや靴の製作を学び、革と異素材との組み合わせで、独特なデザインを合わせ持つ、唯一無二の靴づくりを追求されています。
安仁屋隆宏 / 宮田哲史
安仁屋隆宏さん。
東京のアパレルメーカーに修飾語、手仕事としての靴作りに興味を持ち、モゲワークショップにて勝見茂氏に師事。2003年、広島並木通りに VIOLET(オーダーシューズ)をオープン。
個展を開催しながら、県内外のセレクトショップオリジナルシューズを手がけられています。また、VIOLET では靴制作教室を開催し靴職人の育成も務めている方です。
宮田哲史さん。
2007年、VIOLET のワークショップで靴作りを学んだあと、2012年に靴制作技術を習得し独立。
同年、広島市内にて初となる個展を開催。2013年、AREA81 handmade shoes の立ち上げから参加されています。
靴師、絵師、凧師
靴師、絵師、凧師・寺田敏明さんは、長年メーカーで靴の企画デザイン設計業務に携わってこられた方です。
現在はフリーで靴の仕事をしながら、趣味の凧製作を作られています。
日本で初めて靴の工場を創業した西村勝三氏の凧です。
空駆ける靴
この凧、ほんとに飛びます
展示協力
- 皮革産業資料館 / 稲川 實
- リーガルアーカイブス
- 有限会社シューフィル
- 一般社団法人東靴協会
- 株式会社ニチマン
- 国産古靴収集家 / 井上 諒
- 株式会社センスィミリア
- 寺田敏明
- 安仁屋隆宏
- 宮田哲史
- 森川久美
- 冨山健儀
- 西野裕二
- 藤山なおみ
- 角田健太郎
- 井上篤
- 倉田哲也
- 倉田千亜希
- 山口廣子
※敬称略、順不同
最後に
松永はきもの資料館では今回の西洋靴150年展の展示物以外にも常設展もありますので、そちらもまた後日ご紹介させていただきます。
よければご覧になってみてください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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