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エイジングの方向性はどんな靴かによるし、正解はないし、好みと主観で決めればいい [CARMINA]

しばらく前のこと。街を漂ういい香りにつられてふらっとコーヒー豆屋さんに入った。
紙フィルター不要のステンレスと陶器のフィルターを購入したので、コーヒー豆を仕入れたいと思ったのがきっかけだった。
ただ、グアテマラとかコロンビアとか言われてもよくわからないし、なんちゃらブレンドとかなんちゃらローストと言われてもよくわからない。
いや、多少わかるけど味の違いがわからないというのが正解だ。

ステンレスのフィルターは紙と違って豆の油が残るからなんちゃらと聞いたことがあるので、きっと豆の産地や焙煎の度合いによって使い分けるのがよいのではないかと想像するが、それって靴のお手入れととても似ている。
要するにわかんないものはわかんないし、知ってたら自分の好みに合わせて好きに選べばいい、ということだ。恐らく「この場合はこう」というある程度の多数派の意見はあれど、必ず正解がある世界ではなく好きに楽しめばいい、という世界なのではないかと。
コーヒーも靴も、それ以外の多くのことも同じなんじゃないかと最近思う。

今回の革靴

Brand : CARMINA
Design : Full Saddle Loafers “80372”
Last : Uetam
Size : 5
Leather : Vegano, Annonay
Sole : Leather Sole



ナチュラル派

どの革にどのクリームを使うのがいいかというのは、その革をどう育てたいか、その靴とどう付き合いたいかによる。
昔はつやっつやのギラッギラが好きだったけど、ワックスを乗せすぎると落とすのが大変だと気付き、最近はかなりナチュラルシャインになった。ツヤより作業効率重視の後ろ向きな選択ではあるが、クリーナーをゴリゴリ使うのを避けたいというのも理由だ。

その革をどう育てたいかという話について、僕には強い好みがある。
いろいろ細かく書きたい気持ちを抑えて簡潔にお伝えすると、革の「もっちり感」と「透明感」を保ちたいということに尽きる。その方が、革らしさを味わえると思うからだ。
なので、どんな革なのかを見極めつつ、その「もっちり感」と「透明感」を保てるシューケアグッズを革によって都度選ぶ。

フルーティーな酸味を味わいたいから浅煎りの豆が好き、みたいな。
白米は少し硬めが好きだから水は少なめで炊く、みたいな。
そういうことだと思っている。

アニリンなら透明感、みたいな

そういうことだと思っている。

この靴は、仏アノネイ社 [Annonay] の有名なアニリンカーフ、ベガノ [Vegano] を使っている。カルミーナの Belt Matching という靴と同じ革のベルトもついてくるキャンペーンでオーダーしたので、革も自分で選んだものだ。
ベガノはアニリンカーフ。アニリン仕上げの革というもので、顔料を使わず染料のみで仕上げられているので、程よいツヤと透明感が特徴だ。ちなみにセミアニリン仕上げの革は染料と顔料の両方を使って仕上げた革なのでツヤも強く発色が良いのが特徴だ。
染料は粒子が細かいので銀面に浸透するかたちで染色されるが、顔料は粒子が大きいので革表面に乗ることで革の色を作る、みたいなイメージ。世の中の多くの革が顔料でベタッと仕上げられているのはプロダクトの均一性を保つためで、逆に顔料を使わないとムラが目立ったり革本来の模様(血筋、シワ、キズなど)が目立ってしまうからだ。
すなわち、染料だけで仕上げられている革はその模様がもともと少ない、比較的上質な革であるとも言える。

アニリンの革は顔料を乗せていないせいで、雨に弱くシミもできやすいというデメリットもある。水や油の浸透性はトップコートなど他の要因も関係して複雑なので詳しくはわからないが、僕の知っているアニリンカーフは比較的浸透性は良いと感じている。(同じアニリンの革でもロットによって質感が結構違うこともあるのでこのあたりは難しい…)
なのでシューケアグッズの選定には注意が必要だ。
オイルをがっつり入れるとオイル過多になる可能性が高く、特にミンクオイルのような動物性油脂の場合は吸い込んでシミになりやすい。例えば黒の靴でシミとかそういうのは気にしないというのであればがっつり入れてもいいけど、オイルのおかげでツヤは出なくなるのでドレスシューズの場合は美観を損なうことになる。

また、色付きのクリームは顔料のものが多いので、透明感というか「アニリンの革感」みたいなものを損なう可能性もある。全く悪いことではないが、せっかく顔料を使ってない革なのであれば、可能な限りナチュラルな質感を保ちたいと僕は考える。
これも正解とか不正解ではなく、僕の好みの話だ。

アニリンの場合はもっちり感と透明感重視なので、僕はロウ分も多くは乗せたくない。ロウ分が多く乗った状態で時間が経つと、革表面がゴワゴワしてくるからだ。なので結局いつもと同じレーダーオイルや少しロウが入ったデリケートクリームなんかを使う。
この靴は最初にレーダーオイルを結構しっかり入れたので、まだ革の中にオイルが残っているような質感になっている。タラゴ のプレミアムデリケートクリームはカルナバワックスを含むので程よいツヤが出る。デリクリという名前が付いているが、デリクリと乳化性クリームとの間のようなクリームだと感じている。
あと、香りがいいのも気に入っているポイントだ。僕の中では結構重要だ。

この靴の1分お手入れ動画

どういう靴かにもよる

今回の靴はドレス感強めのキレイめローファーなのでそんなエイジングがいいと思っているけど、どうエイジングするのがいいかという話はどういう靴かにもよる。
ナチュラルカラーの靴なら当然シミは避けたいし、ラギッド系のブーツなら傷やシミがかっこいいかもしれない。ドレスなら多少鏡面はしたいし、ツヤを出さない方がかっこいい靴だってある。革を柔らかくしたいか硬いままを保ちたいかも好みだ。

このクリームがいい!みたいな話は主観で語られることが多いけど、それは主観でしかなくて当然だ。でも靴のエイジングはもっと多様でいいはずだし、だからこそおもしろい。
もっといろんな革、いろんな靴に出会ってその引き出しを増やしたいというのが、目下僕のお手入れとエイジングにおける楽しみ方になりそうだ。

履きジワのケアと保革におすすめしたい、オイル系シューケアグッズの使い方!

使用シューケアグッズ

  1. コロンブス – 馬毛ブラシ
  2. モウブレイ – ワックスクリーナー
  3. タラゴ – プレミアムデリケートクリーム
  4. サフィールノワール – ビーズワックスポリッシュ
  5. サフィールノワール – アプライブラシ
  6. コロンブス – フィニッシングブラシ

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Kohei Kusumi

『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行っています。
シューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども手がけています。

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