メンテナンス、ローテーション、リペア。この3つは、革靴を長持ちさせるために知っておきたいこと。
メンテとローテについて考える機会はそれなりに多いのですが、靴を長持ちさせる履き方・付き合い方を覚えるとリペアには疎くなりがちです。
ヒール交換かつま先補修は一般的ですが、それ以外のリペアにもいろんなものがあり、磨耗したパーツを剥がして新しいものを付け替えるだけではない、非常に奥の深い世界だったことがわかります。
素人目線から無礼を承知で言わせていただくと、ユニオンワークスの修理代は相場よりも高価であるという印象。それは何故なのか?
修理の仕上がりにコミットし続ける、ユニオンワークス銀座店で修理のお話を伺ってまいりました。
おもしろいです。是非ご覧ください。
ユニオンワークスについて
UNION WORKS 銀座店
1994年に創業したユニオンワークスは、東京や神奈川に店舗を構える革靴やバッグなど革製品の修理専門店です。webサイトを拝見すると驚くのは修理に使用する部材の多さで、ダイナイト、ビブラムなど他にも様々な素材が揃っています。
また、創業者である中川氏の嗜好もあり、文化的に普遍性のある英国に関連する靴をメインに雑貨なども販売されています。
英国ブランドのアンソニー・クレバリー [Anthony Cleverley] に Nakagawa というモデルがあることをご存知の方もいらっしゃると思いますが、そのご本人です。
修理という選択
靴によっては製法や構造的にオールソールのような修理に耐えられないものもあります。逆に、オールソールのような修理に耐えうる構造・耐えうる素材が使われている靴は、修理して大切に扱うことで10年20年と履き続けられると言われます。
ただ、大事なのは靴の値段ではなく持ち主の靴に対する『思い入れ』で、そこを十分ヒアリングしながら修理の方向性を決めていくのがユニオンワークス流。
例えばトップリフト(かかと)の交換費用もいろいろで、高いものもあれば安いものもある。こだわった修理を希望したい人もいれば、安く済ませたい人もいるわけです。
場合によっては、この靴は十分履いたからオールソールをしないという選択があってもいいし、この靴は二軍だからそこそこの修理ができればいいという選択があってもいいし、逆にこの靴はかなりボロボロだけど思い入れのある靴だからどうにか修理して履きたいという選択があってもいいわけです。
店頭でも郵送でもそこをしっかりと受け止めて、修理する・しないの選択を委ねてくれるお店です。
修理すべきタイミング
また、修理すべきタイミングというのは我々にはなかなか難しい問題ですが、適切なタイミングで修理をする必要性とメリットをお客さんに伝えることを大切にされています。
お客さんとのコミュニケーションを大切にしつつ、可能な選択肢は全て提示して、その上でお客さんに選択を委ねるといった感じ。
靴を大切にされている方はこだわりや思い入れが強い方が多いと思われますが、そこに寄り添っていただける、そんな修理屋さんです。
価格と想いのジレンマ
Tod’s ドライビングシューズ
ユニオンワークスに依頼される修理はヒール交換とつま先補修が多くの割合を締め、次にオールソールがあったり、雨ジミやキズの補修なども季節によって増えると伺っています。
しかし、イレギュラーなスニーカーやよほど特殊な構造の靴でなければ、だいたい直せちゃうんですよ、とユニオンワークス銀座店・店長の鳥海さんはおっしゃいます。
メニューには載せてない修理でもだいたいどうにかなります、とのこと。
ただ、結構履き込んである靴だと、リウェルトとオールソールをして、シミ抜きもして、さらにライニングの補修もするとなると、合計で費用が45,000円くらいになることも。
それを聞いたお客さんも当然躊躇する。
「このクロケット、10年前に買った時は6万だったんだよなぁ」
…と悩む。
そこが「修理するいないの線引き」の難しさだとおっしゃいます。
銀座店店長・鳥海さん
ちなみに、ヒール交換やオールソールはこう言った価格帯です。
オールソール | ・18,700円 ・24,200円(伏せ縫い) |
ヒール (かかと交換) |
・3,850円 ・4,950円 ・5,500円 …など |
4万は高いから2万でオールソールだけしてもらうとしても「オールソールするなら少なくとも3年は履くでしょうから、ここも一緒に直した方がよさそうですね」という提案をしてくださいますが、あとはもう靴に対するお客さんの思い入れ次第。
新品に戻るわけではないけどまだ履きたいからと修理をされる方もいれば、この靴は十分履いたからもういいかな…という方もいる。
どちらの選択であっても尊重してくださり、たとえその時修理しなくても直したいと思ったらいつでも持ってきてくださいねと伝えて、お客さんをお送りする。そんなお店です。
なんか、ハートウォーミングだ…。
ただ、他のお店で修理を断られてしまった場合、できないものだと思い込み修理を諦めてしまうお客さんもいるようです。それはもったいない。
特殊なケースであっても、解決する方法があるかもしれないのでご相談くださいとのことです。
例えば飼い犬にタンを噛みちぎられてしまったブーツとか。笑
飼い犬にタンを噛みちぎられたブーツ
修理後(右足)
それ以外にもサイズ調整のお悩みや、雨ジミ除去やキズ補修のようなご依頼も多いようです。
キツい靴に2回以上のストレッチを施すことに今までは消極的だったとのことですが、鳥海さんはご自身のウエストンの180とジョンロブのロペスを4回ストレッチにかけ、履けるようになったそうです。
ストレッチ4回はさすがに耐えれない靴もあると思いますが、結構いけるんですね。
違和感を残さない仕上げ
やはりお客さんに一番喜ばれる修理は見栄えのするオールソールですが、修理業界に従事していない我々素人にはその技術力というものはなかなか目で見てわかるものではありません。
修理して履き続けるためだけなら必ずしもそこまで高い技術である必要はないかもしれないけど、ユニオンワークスはそれでも仕上がりにこだわりを持ち続け、ブランド本来の仕様を復元されるほど。
コバの仕様やヤスリの番手もブランド本来の仕様に近づけて、その靴がもともと持っていた雰囲気を崩さないことを意識されています。
例えば日本の靴なら細かい番手のヤスリでツヤっと仕上げるけれども、欧米の靴は必ずしもそこまでツヤは出ていないものもあります。
つまり、修理した箇所でも一体感があり、『直したて感』みたいな違和感を感じさせない修理をされているということ。無礼を承知でユニオンワークスは値段が高いなどと申しましたが、仕上げへのこだわりを貫き続け、靴と向き合って修理をしてくださるその付加価値を理解されているお客さんにとっては、その修理費用は決して高いものではないはずです。
逆に言うと、そういう違和感を気にされていない方は修理代が高いユニオンワークスで修理をお願いしていない、ということかもしれません。
ブランドによってコバの削り方も伏せ縫いの仕上げも違いますし、どことは言いませんが雑なつくりをあえて模倣する仕上げにしたり、そのブランドっぽい雰囲気を大切にされています。
『へたうま』という言葉がありますが、うまくないとなせないワザです。
ブランドの仕上げを再現
オールデンのオールソールはブランドの刻印がないだけのような仕上がり。
もはやウエストンのオールソールは近いフォントのサイズ刻印を入れて、オリジナルに近い状態を再現しているとおっしゃいます。
J.M.WESTON オールソール
Crockett&Jones オールソール
上の写真、クロケット&ジョーンズ ハンドグレードの靴です。左に写っているのが刻印があるので新品のもの。右がオールソールをしたものです。写真ではわかりませんが、コバのツメもしっかり再現されていました。
ジョンロブ、エドワードグリーン、トリッカーズ、オールデンの修理でも、かなり自信を持ってお届けできるとのことです。
リウェルトは手縫い
オールソールはアウトソール(本底)を交換するだけなので、ウェルトごと交換する必要はありません。しかし、そのタイミングを逃しウェルトまで磨耗が至ってしまった場合、リウェルトという修理をお願いすることもできます。ウェルトとはアッパーと本底を縫い合わせる細革のこと。
リウェルト修理では交換しない中底に接着されたリブテープには、すでに製造工程で縫った穴が空いている状態なので、ユニオンワークスのリウェルト修理は手で縫い付けられます。
しかしメーカーでは基本的にリウェルトは機械で縫い付けるので、リブテープの耐久性も落ち、切れてしまうこともあるとのことです。
ウェルテッドシューズの構造をご存知の方なら納得いただけると思いますが、非常に手間がかかる修理です。
店舗も郵送も
ユニオンワークスの店舗はこちらの5店舗になりますが、郵送でも修理を受け付けされています。
- 青山
- 銀座
- 新宿
- 横浜
- 川崎市高津
ご依頼やご質問、その他詳細は最近リニューアルされた UNION WORKS の webサイト をご覧ください。
ちなみにですが、ユーザー登録をするとすぐに使える10%OFFのチケットがもらえて、夏と冬にも割引のチケットが届くとのことです。
webサイトの『カスタマー登録』から登録すると、次のようなメールが届きます。(カスタマー登録ページはこちらです。)
登録から1ヶ月間、1回のみ有効とのことですので、依頼される直前に登録されることをおすすめします。
最後に
修理は工場と店舗でそれぞれ検品を通る仕組みになっているようですが、ご自身の担当された修理の仕上がりを「この仕上がりすごくないすか!?」と聞いてまわっちゃう、そんな雰囲気のある修理屋さんでした。
お値段が少し高めであることは前から存じてまして、そこに敷居の高さを感じていましたが、銀座店の皆様にはすごく親切にしていただき、つい長居してしまった。
とても勉強になりました。ありがとうございました。
僕もウエストン180のストレッチ、4回ほどお願いしたいです!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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ユニオンワークスのどなたに話を聞いたのですか?
肝心なところが抜けてます。
写真の方、店長の鳥海さんです。