以前開催した銀座三越の革靴の試着会、11/8、12/6にも開催させていただきました。
11月は以前と同じ内容だったのですが、12月の会は各ブランドのストレートチップを並べて、三越で販売を担当されている田中さんからいろいろとお話を聞かせていただくというちょっと特殊な会でした。
その時の様子を簡単にご紹介して、銀座三越にはこんな販売員さんがいるんだ!ということを知っていただけたら、個人的には嬉しく思っています。
前置き長くなりましたが、靴選びにお悩みの方、これからどんな靴を買ったらいいかわからない…という方は是非参考にしてみてください…というより田中さんに会いに行ってください!
長いのでお時間のあるときに!
ストレートチップ9ブランド
とりあえずこういうことをして遊んでました。
シューサークルにしたらいいのでは?と助言いただいた方、すばらしいご提案でございます!
どれも定番ですが。
左から…
- J.M.ウエストン
- カルミーナ
- エドワードグリーン
- チャーチ
- クロケット&ジョーンズ(2足)
定番のイギリス靴を軸にブランドや木型の説明と、それに対してウエストンやカルミーナの木型の比較をしていただくというおもしろい展開。
イギリス靴の木型
チャーチの木型
まずはチャーチの木型。
チャーチのコンサル(173ラスト)はプラダに買収された後にできたもの。
そして、73ラストがオールドチャーチと言われているもの、ということになります。
プラダに買収された後には、ぽてっとしてノーズの長い100というラストもありましたが、それは日本人の足には合いにくく、あまり売れなかったということで73の復刻版が作られました。こちらは市場では好評だったようですが、プラダのプライドもあったため、二つを掛け合わせたラストが作られた、という歴史があるようです。
他にも84というラストを184に変えたりという掛け合わせもあったり、いろいろあるみたいです。
エドワード・グリーンの木型
エドワードグリーンの木型には202、606、888、82といろいろありますが、もともとは202から始まっています。
888は少しスクエアのロングノーズにしたもの。そして82はラウンドにしたもの。
しかし履き心地が結構違う理由は、木型を木製から樹脂に変更した時に、木型の複製にズレが生じたため、若干木型の形状が変わり履き心地が変わってしまったようです。
エドワードグリーンにはCウィズからあるけど、日本にはDからしか入ってきません。
ちなみに、チャーチはFウィズが標準。さらにウエストンに関してはDが標準。
ブランドによってウィズの考え方が違うので、Eウィズが標準ではないということを知っておくといいですね。
クロケット&ジョーンズの木型
さらに、クロケット&ジョーンズはちょっと特殊で、同じ木型で別の靴を作っていません。(337というシリーズだけはあるみたいですが)
コノートの場合は236という木型、パンチキャップになると341といろんな木型に変えてしまっているようです。
なのでクロケットの履き心地が気に入って買いにきても違うデザインの靴は履き心地が違う場合が多い、というのもおもしろいところです。
逆に同じ木型でいろんなモデルを作っているメーカーはたくさんありますが、それはつまりその木型が合わないとなるとその木型のものは同じように合わないということになります。
イギリス靴の特徴
グリーンとクロケ2足
イギリス靴は比較的かかとが大きめ。
ただ、履きやすいと思われている理由のひとつとしては、日本の靴自体もかかとをしっかり絞り込んで作られている靴が多くないからです。
日本人もかかとを掴まれることにあまり慣れていないので、ちょっとルーズな方が履きやすいと思われている方が多いそうです。
クロケットが履きやすいと言われている理由としては、革質のやわらかさや若干のルーズさ故。
なので、本当の意味で足に合っているかといえば、日本では合っていない方が多い。もちろん合っている方もいるし、それが悪いということではありません。
このブランドが履きたいと言って買いにこられる方もいらっしゃるようですが、足に合わないと靴のポテンシャルも十分に発揮できません。
ポテンシャルというのは、甲、ボールガース、土踏まずの絞り、かかとなどいろんな要素がありますが、本来の履き心地、歩きやすさ、疲れにくさなどを発揮できないという感じでしょうか。
次は、イギリス靴の甲の高さについて。
クロケット&ジョーンズの靴は、二の甲が高い(厚い)靴が多いです。
一方で日本人は二の甲、三の甲が低い人が多い。(指先から足首の方に向けて、一の甲、二の甲、三の甲)
なので、足のアーチがしっかりある方はいいのですが、アーチがない方は合いにくい靴でもあります。
甲の高さが合わないせいでサイズを下げてしまう方もいらっしゃるようですが、必ずしもそれが正解ではなく基本的には足の実測値からサイズを下げれる限界というのもあるようです。
グリーンもどちらかというと甲が高め。実際の足のサイズよりも下げたサイズを選ばれる方が多いようです。
チャーチは全体的に甲が低め。なので、足のアーチがあって甲が高めの方にはあまり向かない靴のようです。
チャーチ、ウエストン、カルミーナ
イギリス靴と比較して、逆にカルミーナやウエストンは甲が低めに設計されているため、足が細くて甲の薄い方はこの2つのブランドが合う方が多いようです。
続いて、中物(コルク)の話。
また海外ブランドの靴はソールの中物にコルクを使用しているメーカーが多いですが、コルクの純度によって沈み込みの感覚に多少差が生じる場合があるようです。
コルクの純度が高い方がしっかりとした沈み込みが味わえますが、練り物(接着剤)が多いほど材料費を抑えたり、ソフトクリームのように練りコルクを絞り出せる機械などを使って作業的なコストを抑えられるというわけです。
なので、田中さんがオススメされる靴は沈み込みの具合も計算した上で(沈み込む場合は少しキツめのサイズで)お客さんに靴を勧められています。
木型以外の知識だけではなく、革靴の中物まで理解されています。かなりレベルの高い話をされているわけですね。
日本ブランドの特徴
リーガル、スコッチグレイン、サントーニ、マグナーニ
日本ブランドを代表するリーガルとスコッチグレインは、甲の部分が高く設計されています。
理由としては甲の部分で足をしっかり抑えるという設計になっているからです。
さらにスコッチグレインは羽根の部分が短くなっていて、羽根の下の部分で足を抑えやすくなっていますが、そうすることによって足が前方に滑らないというメリットはあります。
日本の量産されている革靴はアッパーを木型に釣り込んだ状態で寝かせる期間が圧倒的に短いという製造上の理由で、甲が高くなっているようです。
寝かせる時間が長い方が多少シェイプされた木型でも、木型にアッパーを添わせることができますね。また、国産靴は海外ブランドと比較すると機械で製造される工程が多いようです。それによってあのリーズナブルな価格を実現しているというメリットもあります。
イタリア靴・スペイン靴の特徴
イタリアのサントーニとスペインのマグナーニ。
こう言った靴はマッケイ製法の靴が多く、中物(コルク)が一切入っていません。なので、グッドイヤー特有のリブテープも無く、ソールの返りが良いのが特徴です。
それに伴ってアッパーの革も柔らかくなっているものが多いのはマッケイの靴がグッドイヤーと比べると馴染みやすいという意味で履きやすいと思われている理由のひとつです。
マグナーニはボロネーゼ製法が特徴で足馴染みが早いのが特徴です。
しかし、やはりこう言った製法の靴は修理(特にオールソール)が難しいという特徴がありますね。できないことはないそうです。
マッケイはアッパーとソールを直接縫い合わせている製法なので、ソールを外した段階でもともとその靴が持っている木型の形を再現することが難しくなります。
また、アッパー側の革も同じところは何度も縫えないので、だんだん革が切れやすくなってくるというデメリットがありますね。
オールソールは1回、多くて2回までにするのが良さそうです。
なのでトゥスチールやハーフラバーなどを貼って長持ちさせるのが良さそうですね。
マッケイ製法の靴は立体的なつくりが実現するのが難しい製法なので、割とゆったりめで履くことをおすすめされている靴でもあるようです。
しかしサントーニは、マッケイ製法でありながらウエストの絞りがしっかりあるのも特徴です。
という感じで、計9ブランド10足が並びました。
これだけ並ぶと細かい違いがよくわかっておもしろいんですよね。
計測と試着
田中さん
という流れから、お話をしてくださった田中さんに計測をしてもらい、その足にあったストチを選んでいただきます。
中には10万20万を超える靴もありましたが、はじめてのフィット感に感動されている方も。
ちょっといくつか写真を載せておきます。
11月の写真もあるので、どれがどのブランドかは覚えてません!すみません!
奥野さんも来てくださいました!ありがとうございます!
最後に
今回で一旦一区切りとなり次回の開催は考えていませんが、僕は田中さんという方を知っていただけたら、このイベントを開催した意味があったと思っています。
参加されてお話された方はよくわかると思いますが、すごく靴のことにも詳しいし、足に合う靴を的確に選んでくださいます。
もちろん銀座三越にはシューフィッターの資格をお持ちの方や素晴らしい販売員さんがいらっしゃるのですが、たまたまいろいろとお話をさせていただく機会が多かった田中さんをご紹介させていただきました。
一応お伝えしておくと、靴好きの方、靴に詳しい方、田中さんに対して知識でマウント取りに行っても無駄ですよ。靴のクリームやワックスについてもかなり研究されているようです。
圧倒的に詳しいし、そういうお客さんが言い負かされて(悪い言い方ですが笑)田中さんの信者になったという方がたくさんいらっしゃるようですから。
話がそれましたが、百貨店に置いてある紳士靴のブランドってものすごく多いです。だからブランドを求めて買いにくる人がいるのも確かです。
でもそれだけなら直営店で買っても同じじゃありません?ていうか、このブランドがほしい!って思ってる人は直営店行きません?
だから百貨店には、いろんなブランドを取り扱ってるだけじゃなく、さらにその中から最適なものを提案してくれるっていう場所であってほしいという僕の勝手な想いも込めて、この記事を書かせていただきました。
そういう価値を提供してくれる方がいらっしゃるということを知っていただけたら、僕はそれで満足です。
靴をお探しの方、靴についてお悩みの方は是非銀座三越に足を運んでみてください。
先日閉店時間を過ぎても店内にいる方をお見かけしましたが、閉店時間は午後8時です!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
三越さん、田中さん、関係者の皆さま、ご参加いただいた皆さまもありがとうございました。
▼はじめての試着会の様子
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