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世界でもユニークなタナリーを持つエコー [ECCO] のイノベーティブでサステナブルな靴作り

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デンマークのコンフォートシューズブランド、エコー [ECCO] でお話を伺う機会がありました。
2019年の靴博にも出展されていたブランドですが、自社タナリーを持つメーカーでもありアップル社にも革を提供されています。
また、非常にイノベーティブでオープンな靴づくりをされていて、コンフォートシューズには明るくなかった僕でさえも聞き入ってしまうほど、非常に興味深いお話がたくさんありました。

 

 

一部靴のご紹介もいたしますが、それよりは靴づくりの在り方や、環境問題に対する取り組みがメインになりますので、商品が見たい方は公式サイトをご覧ください。
珍しく社会派な記事!

 

 

“COW TO SHOE” 一貫した靴づくり

 

エコー [ECCO] は1963年にデンマークで創業した王室御用達のコンフォートシューズ&レザー グッズブランドです。スニーカー、ブーツ、サン ダル、ビジネスシューズ、ゴルフシューズなど を、メンズ・レディース・キッズと幅広く製造販 売しています。また、靴以外の革小物も展開され ています。

 

 

 

 

もともとは女性が働くためのパンプスを作りはじめたブランドですが、コンフォートシューズをつくり、タナリーもつくり…というように徐々に範囲を広げ、今では牛(食肉用及び乳製品用)の中から特に品質の高いものを選定し、自社で鞣し、靴の製造から小売・配送まで、”COW TO SHOE” つまり、すべてを一貫して自社で管理をしているメーカーでもあります。
食用の牛は太らせたり体を大きくさせるための餌を与えますが、そういった牛は体に負担をかけるため皮にも無理が生じます。しかし、エコーが選別するのは放牧で飼育されたストレスの無い牛で、毛並み・肉質・皮も良く育つ牛。
エコーは 酪農家と、そのような高品質な牛の皮を購入する契約をおこない、品質管理を徹底しています。

 

 

 

何と言ってもエコーは 自社タナリーで革から生産することができる世 界でもユニークなシューズメーカー。
“COW TO SHOE” でサプライチェーン全体をコントロールし、終始トレーサビリティの管理をしています。実際エコーで作ってない素材は、ステッチの糸とカシメの金具くらい、とのこと。(ちなみに木型はドイツのファガス [Fagus]という会社 との合弁会社にて製造)
申し上げた通り、自社でタナリーを4工場所有しており、アップル社以外にも世界中のラグジュリーブランドやフットウェアブランドへも革を卸しています。

 

数字で見るエコー

 

  • 設立:1963年
  • マーケット:世界89ヵ国
  • 世界の店舗数:2,180店舗
  • 自社運営の靴工場:6社
  • 自社タナリー:4社
  • 世界の従業員:21,400人以上
  • 従業員の国籍:60国籍

 

マーケットトップ10

  1. 中国
  2. アメリカ
  3. ロシア
  4. ドイツ
  5. 日本
  6. オランダ
  7. カナダ
  8. 韓国
  9. スェーデン
  10. オーストラリア

※2021年6月時点

 

環境への配慮

世界の靴産業は年間200〜250億足の靴を生産しており(*1)、約7億トンの温室効果ガスを排出しています。
これは世界の総炭素排出量の約1〜3%に相当し、さらには920億メートルトンの廃棄物が発生しています。(*2)

*1:https://www.statista.com/
*2:https://quantis-intl.com/

 

 

 

もともとエコーは消費者に対して高品質で快適な長く使える製品を提供することを目的としたサプライチェーン管理でしたが、それが結果的に環境への影響を最小限に抑えることへも繋がっています。
創業初期の頃から廃物を減らし、可能な限りリサイクルをし、エネルギー消費を削減する機械への投資なども続けてきています。クリーンエネルギーを大量に生産するために多くの工場に太陽光発電パネルを設置したり、後ほどご紹介する水の消費量を削減する方法の開発にも注力しています。

 

数字で見るエコーのリサイクル

  • 靴工場のリサイクル・回収廃棄物:70.9%
  • 鞣し工場のリサイクル・回収廃棄物:64.5%
  • 革から取り除かれた肉片のタンパク質へのアップサイクル:1,300トン(インドネシア鞣し工場)
  • 鞣し工場でのクロムフリー汚泥のレンガへの変換率:65%(中国鞣し工場)
  • 産業廃棄物の埋め立て:ゼロ(タイ鞣し工場)

他には毛のアップサイクルによってインソールなどに使用する新素材を開発した り、他社との共同開発でレザーをベースにしたテキスタイル(繊維)を開発したり という取り組みもされ、産業廃棄物の削減・皮革破棄物のリサイクルにも注力して います。

 

数字で見るエコーのエネルギー

  • 太陽光発電パネル設置年度:2013年
  • 中国工場太陽光エネルギー初年度生産量:2.8GWh
  • ベトナム工場太陽光エネルギー年間出力量:1GWh

 

水を年間約2,500万リットル削減・DriTan™️ 1.0

 

エコーが3年前(2018年)に開発した DriTan™️ 1.0 では革を1枚鞣すのに水を20リットル節約し、年間約2,500万リットルに相当する水を削減しています。更に進化した DriTan™️2.0 は化学物質の使用を削減し、より少ないエネルギーを使用しながら、より大規模な固形廃棄物の削減を実現しました。
DriTan™️2.0 は、インドネシアのレザー工場ですでに完全実装されており、 現在、ECCOのすべての皮なめし工場でこの技術の実装を進めています。

 

他社との協力のもと、2030年には廃水施設の改善と「給水・排水」のループを遮断するクローズドループ型の水システムを開発し、水の排出実質ゼロという目標も掲げています。

 

環境目標

  • 2024年:デンマーク本社をエネルギーニュートラルに
  • 2026年:廃棄物再利用を目指し、廃棄物90%を回収
  • 2028年:化石燃料エネルギーへの依存度を下げ、エネルギーニュートラルに
  • 2030年:クローズドループの水システムを構築し、水の排出量実質ゼロに
    化学物質の使用量を減らし、バイオベース、リサイクル、または再生可能な化学物質のみ使用

 

 

ダイレクトインジェクション製法:「フルイドフォルムテクノロジー」

 

エコーの靴は、構造的にも製法的にも非常に合理的な製法で作られています。
一般的に「ダイレクトインジェクション製法」や「一体成型製法」と呼ばれる、液状のポリウレタンを化学反応によって発泡させながら金型に流し込む製法で、自社商標の「FLUIDFORM™️」(フルイドフォルム)という製法です。

 

 

足の裏の曲線に沿った木型を使用した成型ができるため、足裏に沿った形状を実現できることと、接着剤を使用しないため剥がれや重くなるといったデメリットを回避できること。あと何より既存の製法の中ではもっとも強固な靴の製法とも言われている製法です。
また、ポリウレタンも足の動きを妨げない履き心地とクッション性、摩耗しにくい素材であることでも有名です。

 

ただし湿気による加水分解は避けられず、一体成型のため修理ができないこともデメリットとしてあげられますが、昨今のポリウレタンは配合率や温度管理で8〜9年経たないと劣化しないものが主流で、2〜3年で劣化した従来のポリウレタンとは違ってきているようです。

 

 

このような金型にアッパーを被せたラストを設置し、隙間からポリウレタンを流し込むことで成型が可能です。この金型も自社で製造するチームがあるので、金型費も抑えられ、デザインの種類も展開しやすいというのも特徴。

 

 

 

 

こういった複雑でデザイン性に富んだソールもダイレクトインジェクション製法だからこそ実現できるものです。

 

ドレスシューズもダイレクトインジェクション

 

ドレスシューズもダイレクトインジェクション製法です。
足裏の曲線に沿って形状を成型できることで、本格紳士靴と呼ばれる靴のように馴染むまでの時間と製造の手間を必要としないという大きなメリットがあります。もちろん革靴のような見た目で、クッション性の高いスニーカーのような履き心地であるということは言うまでもありません。

 

 

“Design follows function.” という言葉がありますが、デザインにおける美しさは機能に従属するものだという考え方で、あくまで機能(履き心地や製造上の合理性)を追求した結果生まれた靴でなければならないという考えを大切にされています。

 

 

ECCO 取扱店

 

エコーの靴は公式オンラインショップ、amazon、LOCONDO などでも販売されていますが、直営店や百貨店でも販売されています。

 

 

最後に

ECCO leather を使用した UNION IMPERIAL

 

今後、さらに規制が厳しくなり、より多くの産業がサステナブルを謳うようになったとき、製革業はどう変わっていくのでしょうか。
何年も前からこういった取り組みをされ、実際に水の使用を最小化した鞣し技術を開発され、その革が世界のラグジュリーブランドに供給されている。そんな製革業・靴産業が今後のスタンダードになっていくのではないかと思われます。

 

 

世界のタンナーと革靴に使われる革の種類をまとめてみました
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