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高い革靴と安い革靴の違いって何だろう?

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高い革靴、安い革靴の違いってなんだろう?っていう話。
革が違うのか、それとも製法なのか、ブランドの価値なのか…なんなのか。そのあたりを掘り下げて考えてまいりたいと思います。

 

それぞれのメリットやデメリットがあるでしょうが、それも踏まえて革靴への理解を深めていただいたり、選ぶときの参考にしていただければと思います。
よければお付き合いください。

 

 

革質

 

まず、メーカーがどれくらいの価格で革を仕入れているかなんてわかりませんし、もし知っていたとしてもなんか夢がないので書きません。笑
とにかく靴の素材となる革。つまり材料の原価って靴の値段にすごく影響してくるんだっけ?って話です。

 

アノネイ、デュプイ、イルチア、ゾンタ、のような名のあるタンナーの革って案外安価な革靴ブランドにも使われてます。なので、ブランド革だからと言ってそのタンナーの革が全て高いかといえばそうではないと考えます。
当然希少価値の高い革、コードバンやワニとかトカゲ系の革の原価は高いですが、ここで考えていきたいのはあくまで一般的なスムースレザーの話。

 

ただ、革には等級があるので、原皮の質によって、もしくは鞣しの仕上がりによって革の価格が違ってくるという可能性はあると思います。3〜1等級、さらにその上のエキストラスペシャルという等級があると言われていますが、1やエキストラスペシャルの等級の革は現代においてはかなり希少なので、優先的に資本力のあるハイブランドに渡ってしまいます。なので、革質がどの程度靴の値段に影響しているかはなかなか判断が難しいところでもあると考えます。

 

もうひとつ気になるのはハイブランドはどこも、どのタンナーの革を使っているなどの情報をwebサイトに明記してない場合が多いです。
あと、海外のサイトを見てみると、我々が普段耳にするタンナー以外にもタンナーがあることがわかります。(紳士靴用の革を提供してないところも含め)あと、タンナー以外にも革の商社のような企業も出てきます。

 

まだまだ知らないことの多い、奥の深い世界のような気がしています。
しかし、原価を知ってしまうと…なんというか、よくない気がします。言いたいことわかりますよね?世の中には知らなくてもいいこともある。
ここはあえて夢を夢としてとどめて、深く詮索することはしないでおきましょう。

 

 

製法

 

作業工程が多い製法ほど、そして人の作業が多い製法であればあるほど、材料費や人件費がかかるのは想像に難くありません。

 

材料費も作業工程も少ないという意味ではマッケイ製法の方が価格的メリットがありますし、グッドイヤーウェルテッド製法よりもハンドソーンウェルテッド製法の方が手間がかかるというのは、一般的に認識されていることだと思います。

 

しかし、マッケイでも20万円を超える革靴もあれば3万円の革靴もある。また、9分仕立てのハンドソーンでも、20万円する革靴もあれば5万円しない革靴もある。
ということは製法だけで革靴の価格にすごく大きな差が出る、という話ではないようです。
しかし、これはあくまで製法の名前だけにフォーカスしたときの話。話はもう少し複雑かもしれません。

 

例えばハンドソーンであれば、『誰が作業するのか』という付加価値は大いに商品の価格に上乗せされると考えます。
何十年にも渡ってすくい縫いをされてきて、締めるところ・締めないところを使い分けることのできる職人さんが縫うハンドソーンと、人件費を抑えるためにアジア圏で縫われているすくい縫いとでは仕上がりや履き心地に差が出るということも十分考えられます。(あくまで予想の話)
所謂、職人技と呼ばれるやつですね。

 

 

生産足数・生産期間

 

また、一定期間あたりの生産足数によって靴の価格が変わってくることも想像できます。

 

まず『月に何足生産されるか』という話です。
グリーンの工場を見学させていただいたとき、逆に驚いたのは作業工程や設備に関して日本メーカーの工場とそれほど大きな違いはなかったということでした。
グッドイヤーウェルテッド製法で使われるラスティング(吊り込み)の機械は古いとか新しいという違いはあれど、仕組みとしては同じ機械でした。(ちなみにヒロカワ製靴さんの吊り込み機の方がパッと見新しい機械でした。)
しかし、エドワードグリーンとスコッチグレインでは価格に大きな違いがある。ヒロカワさんは1日300足生産されているところ、グリーンは月に300足。商品の価格設定が違って当然です。

 

このあたりはどちらが良い悪いではなく、単純にブランドの考え方によるものです。

 

 

次は『一足につきどれくらいの時間をかけて生産されるか』という話。
底付け後、木型が靴の中に入っている時間が長いほど、アッパーの革がその形を記憶します。うねりを伴う立体感のある木型でも、時間をかけることで木型を抜いてもその形の靴が仕上がります。
また、釣り込むことでアッパーは伸びるので3回釣り込み直してようやく靴に仕上げるメーカーもあります。そうなれば当然1足にかかる手間も増えるので、高くなって当然です。

 

よくよく考えてみると、あの平面の革を切ったり縫ったりしてあれだけ立体感のあるものに仕上げるということが驚くべきことですよね。
先人たちの知恵、そしてロマンが革靴にはある。

 

 

ステッチ

 

ステッチ。革靴の縫い目の話です。

 

ステッチの目、つまり縫い目が細かい方が靴の見た目が繊細になりやすいですが、逆にミシンが革を送る速度が遅くなるので作業に時間がかかります。1足なら大したことないように感じますが、それを何足も何足もつくるとなるとチリツモです。

 

一方で、縫い目の幅が広いと作業スピードとしては早くなりますが、長く履いていると革が伸びてステッチの糸が切れてしまうこともあるようです。メーカーもそれをわかっているので、アッパーの内側に補強材をつけたりすることがあるようです。

 

というわけで、どちらがとうというのはわかりませんが、そういったところも靴を選ぶ上では楽しみのひとつかなと思っています。

 

 

ブローグ

ええ革や

 

ブローグと呼ばれる穴飾りです。
ブローグが入っていようがいまいが、一般的には同じメーカーであれば価格が変わらないことが多いです。

 

しかし、当然ながらブローグを打ち込む作業がある方が手間がかかります。商品にその分の人件費が上乗せされても当然です。これはあくまで予想ですが、ブローグの靴ばかり高くなってしまうと、売れなくなってしまうので全ての商品価格が均等になるように調整されているのではないかと考えます。

 

またブローグはミシンのような機械でガチャンガチャンと開けていく場合もあれば、穴あけポンチのようなものを使って手作業で開けられている場合もあります。
後者の方がブローグの穴の間隔を微調整しながら緻密な作業ができますが、時間も手間もかかります。これも職人技ですね。

 

 

先ほどの製法やステッチなども同様ですし、他にも革の裁断や漉き加工もですが、こういった所謂『職人技』が必要な工程には、職人の教育や育成のコストも必要です。
なので、「神は細部に宿る」なんて言いますが、手作業でバランスを見ながら細かい作り込みをされている美しい革靴は当然その作業コストだけではない、教育コストが上乗せされて当然です。
実際はどうかしりませんけどね。

 

 

この動画、わかりやすいですね。
気付いたら最後まで見ちゃうやつです。

 

 

 

ちょっと話はズレますが、工場の立地によって土地代も変わってくるでしょうし、工場の管理費など企業を運営する上での諸々のコスト、あと広告費も商品の価格に上乗せされますね。
ただ、広告もブランドによって使い方がうまいところとそうでないところがあります。ここからはブランディングの話。

 

 

ブランド

 

ブランドによって革靴の価格には大きな差があります。
ではなぜハイブランドはあんなにも高い価格で革靴を販売しているのでしょうか?

 

 

例えば、ジョンロブ。歴史が長く受賞歴などもあることで、ブランドとして価値が世の中に認知されているのは納得です。
また、ロブは革の一番いいところを使って靴を作ってる、なんて話を聞いたことがありますが、それによって歩留まり率は下がるし、生産数も増やせないでしょうから製品自体の希少性も高まります。それをペイするためには1足が高価になるのは当然というところでしょうか。

 

ちなみにwebサイトはこんな感じです。

 

https://www.johnlobb.com

 

商品ページは靴の写真が多いですが、トップページはこのようにファッションとかスタイル寄りのイメージでブランディングをしています。
なるほどね。

 

 

ベルルッティも見てみましょう。

 

https://www.berluti.com

 

もうめちゃめちゃ雰囲気ありますね。背景のソファーすら「最高級の革使ってますけど?」感が滲み出ています。こういうところですね、LVMH傘下のメゾンという感じがするのは。
ルイヴィトンのモノグラムのようなバッグなんかも作ってるんですね。

 

 

https://www.berluti.com

 

写真を贅沢に大きく使ってるので、PCの画面で見るとめちゃくちゃおもしろいサイトになっています。ところどころ洋服との組み合わせの写真も掲載されてます。てゆうか足長すぎ

 

ベルルッティはロブとは違って、前衛的な靴のデザインも展開しています。そういった独自性もブランディングのひとつと言えるでしょう。
びっくりするものもありますので、是非ご覧になってみてください。ちなみにこちらはエヴァンゲリオンをイメージしたモデルだと言われています。

 

https://www.berluti.com

 

嘘ですっていうボケだったのに、調べてみたらほんとにエヴァンゲリオンのソールオレンジなんですけど!笑
パープルのパティーヌだったら完璧だったね!

 

 

 

あと、ウエストンのサイトには、アーティスティック・イメージ&カルチャー・ディレクターの紹介動画があります。商品単体ではなく、靴をどう見せるか、ブランドをどう表現するか、みたいなところにコストをかけている印象です。

 

クレバリーのwebサイトではクライアントリストが載っていて、ウィンストンチャーチルに作ったとか、ラルフローレンに作ったとか、ジェイソンステイサムに作ったとか、ベッカムとかスタローンに作った…なんて書かれています。
これもまたひとつの広告という名のブランディングかなと思います。

 

 

それくらいしか見てないですが、総じてファッションとかスタイルという側面で革靴を捉え『そのブランドを持つことの価値』を発信しているように思いました。この靴履くとこんなカッコよくなれるよとか、有名人も持ってるよとか。あと、スペックなどをたくさん並べているブランドは少ない印象です。どのタンナーの革を使っているっていうのもほぼ書いてないですね。

 

靴を作る上でのコストや人件費も上乗せされているはずですが、ブランドの優位性を高めるためには価格を高く保つことも必要なのかもしれません。それによって『高品質、高価なブランド品を持ってる私』という価値を提供しているというか。生産数もそんなに多くないんじゃないでしょうか。ばんばん作ると中古品も出回るし、何より希少性が薄れてしまいます。
つまり、高い品質を維持し、ブランドイメージを高めていくことで、価格をコントロールしているものと思われます。

 

 

そんなブランディングにまんまとハマっている我々。笑
これからもお世話になります。

 

 

最後に

安いとか高いと、いろいろ例を挙げて書かせていただきましたが、靴の価値はどちらが正解ということではないと思うんです。好きなものを買ったらいい。
安価な靴だからと言って質が低いかと言えば必ずしもそんなことはないはずです。昔ながらの製法や工程で作ったらとんでもなく高価になるものを、工夫をこらして安価に提供してくださってるとも言えるわけですから。

 

でも高い靴には、言葉では言い表し難い独特の雰囲気や美しさがあります。確実にある。
靴好きの方々も同じように感じていらっしゃると思います。これは恐らくスーツや時計でも一緒。何か好きなものを追い求めるって、人生を豊かにしてくれる気がします。ロマン。
そんな靴に対する審美眼を磨きつつ、これからも革靴の魅力を発信していきたいと思います。

 

 

ただ個人的には足に合うかどうかということについても、革靴を選ぶ基準として優先していただきたいと思います。
我々消費者は靴の合う合わないを見定める目を養う必要があるし、そのためにメーカーもそれを発信・啓蒙する必要があると思っています。僕も微力ながらそれを地道に発信していきたいと思っております。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

 

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