僕は革靴の軽さについて意識したことはありませんでした。どちらかというとサイズとか硬さとか痛さみたいなところばかりを気にしていたので。
でも、確かに硬い靴は硬い。僕は硬くて痛いくらいの靴を馴染ませていくのが好きなので、嗜好がちょっと偏っているのですが、そうでない大多数の方々からすると、靴は疲れにくくて機能的で、さらに欲を言えばカッコいい、というのが理想なのではないでしょうか?
その歩きやすさと機能を追求するメーカー・マドラスさんにお邪魔してお話をうかがってきました。
よければご覧になってみてください。
マドラスとは?
マドラス株式会社は来年100周年を迎える大正時代に設立されたメーカーさんで、マドラス [madras] は1946年にイタリアで誕生し1965年に日本に上陸したブランドです。
“Contemporary Classic” をコンセプトにイタリアらしいシルエットの革靴を展開し、他にも自社ブランドのモデロ [MODELLO] やカラーオーダーのスニーカーモコス [MOCOS] 、さらにレディースシューズなど幅広くブランドを展開されているメーカーです。
生産量の割合はこんな感じ。
- セメント製法:3割
- マッケイ製法:6割
- グッドイヤーウェルテッド製法:1割
というように、セメント製法とマッケイ製法の靴が多いのも特徴です。(製法についてはこちらの記事でご紹介しています)既成のビジネスシューズ・ドレスシューズは2〜3万円台で販売されています。
また、モス [MOSS] というオーダーシューズも展開されていて、そちらは60,000円から。足の計測、デザインと仕様の選定、フィッティングと微調整を経て納品という流れで、パティーヌ仕上げと呼ばれるアンティーク調の染色を施した仕上げなどもオーダーできます。
他にもゴアテックス ファブリクスを採用した靴や、スポーツメーカーMIZUNOと共同開発された madrasu Walk x Mizuno Select なども展開され、機能面も重視されている印象です。(madras Walk x Mizuno Select の取材記事はこちら)
今回お邪魔したのは愛知県の工場です。
愛知県に本社があり、もともとは愛知県の各所に工場が分散していましが、2000年に愛知県の大口町というところに工場を移転されました。現在、製造は外注で生産をまかなう工程もありますが、1日に180足生産されている工場です。
そちらのご紹介も後ほど。
歩きやすさと軽さ
いろいろお話をうかがった中で感じたのは、革靴の歩きやすさと軽さに対して強いこだわりをお持ちのメーカーさんということでした。
グッドイヤーウェルテッド製法だと靴底の厚みが出るため靴底の屈曲がしづらいという特徴があります。一方でマッケイ製法はグッドイヤーに比べると、底が薄くなるため屈曲がしやすい。つまり歩行に適しているというのがマドラス流の考え方です。
軽さについても同様で、重いより軽い方が歩きやすい。美錠や金具などをつけていくうちにいろんな素材の重量が積み重なって靴が重くなります。会議中に計りを出して、重さを測ることもあるようです。
ただ、軽さを重視するあまり、履いてしばらくしたらダメになってしまう靴では意味がありませんので、その軽さと耐久性とのトレードオフのギリギリを攻めて靴づくりをされています。
そのために試作品の試し履きを何度もしながら、歩きやすさと軽さを一番表現できるのがマッケイ製法であるという考え方です。
また、スーツケースと同じような素材を中底に使うことで、中底が屈曲した後の戻りを良くし、歩行を補助するという設計も盛り込まれています。
そういった素材を探しながら、どう靴に組み込むかというところを研究されているようです。
靴内にゴアテックス素材
もちろん機能性についてもかなり追求していて、ゴアテックス(独)やイーベント(米)という防水&透湿素材を利用して、雨の日用の靴も多く販売されています。こちらは今期、コロナ禍という状況下でオンラインショップでもかなり好評だった模様。
また、昨今の事情を鑑みて今まで展開されていた抗菌・消臭効果のある靴だけでなく、抗ウイルスの靴という靴の開発も社内でホットな話題になっているようです。
工場ツアー
工場ではオーダーシューズの製造と既成靴の製造の一部を拝見させていただくことができました。
オーダーシューズの場合は、お客さんの要望によって木型もウィズもデザインも変わるので、このように紙のパターンを一足一足用意されています。
マドラスのオーダーは染める靴も多く、こういったヌメ革も用意されています。
アッパー用のヌメ革
次に、こちらの機械で革の裁断をするわけですが、もう今の時代は自動。革のパーツをどこから取るかというのをこのように調整し、それを切り出すという感じです。
メダリオンの穴も開けられるので、こんなパーツが仕上がるというわけです。
メダリオンはちょっと時間かかるみたい
革の在庫。
オスバ、インカスといったタンナーの革もあったり、山陽やニッピの革など日本の革も使われています。
また、モコス [MOCOS] というオーダースニーカー用の革の在庫もあるので、かなり色数も豊富です。
一部布生地も含まれます
ちなみに、モコスはこんな感じです。メンズは26,000円、レディースは25,000円からオーダーできます。
そして木型。お客さんの要望や足型によっては、このように革を乗せて微調整をしてもらえます。
お次は既成靴の製造です。
靴によっては木型に吊り込まれた状態で工場に入ってくるものあれば、アッパーの縫製が仕上がった状態で工場に入ってきて吊り込むものもあります。
それを底付けしていくという感じです。
こうなります。
マッケイやセメントを多く作られているメーカーさんを見学させていただいたのは初めてだったので、それ専用の設備が備わっている印象でした。
言われてみれば当然かもしれませんが、グッドイヤーとマッケイだと中底の加工も吊り込む機械も違うんですね。
仕上げ職人の石本さん。
数々のアワードで大賞を獲得された方で、今でもマドラスの染色と仕上げを担っている方です。
かなり赤みの強い革を染色によってこのブラウンの色合いに仕上げます。
かなりの早業でした!
最後に
そもそも雨も湿気も多い日本では革靴という履物が相応しくないことなんか誰もが知りながらそれを履いているわけですが、その中でも機能性だけでなく歩きやすさや軽さを重視された製品開発をされているのは非常に合理的です。
先ほどもお伝えしましたがオンラインショップでも雨の日用の靴が好評だったように、やはり普段から使う物に利便性や快適性を求めるのも納得です。
是非マドラスのオンラインショップをご覧になってみてください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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