以前からインスタでお写真を拝見させていただいていた、ビスポークシューズブランド・When の小林 晃太さんに、ご自身の靴づくりについてお伺いしました。
この感じ、この空気、是非ご覧ください。
心が動いたFORMEの靴
ボーリングシューズに着想を得たこちらの靴。
高校生の時、地元のセレクトショップで販売されていたこちらのフォルメ [FORME] の靴に心を動かされ、高校卒業と同時に靴づくりを学びに浅草のエスペランサ靴学院に入学されます。2年の就学後、靴関係の企業に内定されますがそれを辞退して、紹介というところから徐々にの靴づくりを始められ今年で7年目を迎えられています。
When 小林 晃太 さん
当時、FORME のアトリエにて、ビンセント・ギャロという俳優兼アーティストのアルバム「Recordings Of Music For Film」に出会い、同じくギャロのアルバム「When」がブランド名になっています。
FORME へのリスペクトも込められたネーミングであるのと、小林さんご自身も大好きなアルバムなのだそうです。
When you come near to me,
I go away.
When things are clear to me,
I go away.
という独特な世界観の、悲しい曲でした。
極上の存在感
どうしてもギャロの音楽観を切り離せないままこの記事を書いていますが、小林さんの靴もどこか無機質で、動というよりは静、カラフルというかモノクロ…そんな雰囲気を漂わせているように感じます。
決してネガティブな意味ではありません。いただいたお写真の彩度や背景の雰囲気にもよるものと思いますが、色のある鮮やかな印象というよりは、シンプルだけど極上という印象。
存在感がドバドバに出ています。お写真いくつかご覧いただければこの世界観伝わると思います。
既成靴にはないフォルム、作りの繊細さ、革の滑らかな質感がそう思わせるのでしょうか。
僕は奇をてらった靴も好きです。攻めた靴にも心踊ります。しかし、これほど『どストレートど真ん中』で勝負されたら、指を加えるしかありません。
足元を抜群に引き締めてくれる、絶対に飽きのこない魅力です。
尖った靴もいいけどさ、やっぱりラウンドトウの黒のストチはいいですよね、と思わざるを得ない雰囲気です。
謙虚だけど確かに感じる意思の強さというか、そんな印象を勝手に持っています。
この写真なんてもう意味があるようにしか思えません。
このシンプルなアッパーにこの出し縫いと目付けの感じ!
靴づくりについて
東神田のアトリエ
When のブランドサイトの理念にこうあります。
「靴づくりを通して、お客様と社会に新たな価値観を創造し、人生を変えるきっかけをつくる。」
靴づくりを始めた当初から、小林さんのお客さんは特段靴が好きというわけではない方がほとんどで、そうなると靴への価値観が我々靴好きとは違う場合が多いわけです。靴のお手入れもご存知ないでしょうし、靴べらを使う習慣がない方や靴紐を解かないで履く方がいらっしゃるかもしれません。
そういうお客さんに対して、まず靴の扱い方や道具としての価値をお伝えする、というところから小林さんの靴づくりははじまっています。
靴だけでなくても生活の中で日常的に使うものとの出会いで、ものに対する価値観が変わることというのは、意識せずとも誰もが経験することです。そういう気付きが人生というもの豊かにしていくんだろうなぁと思います、とおっしゃっていました。
小林さんが靴好きではないお客さんと接することが多かったからこそ生まれた考え方です。
当然、我々のように修行期間を経て足に馴染ませるという、所謂靴好きの「革靴との付き合い方」も知らないお客さんなわけですから(ハンドソーンのビスポークシューズはそれが必要ない場合が多いと思いますが)、いきなり足に合って履きやすいものを提供しなければいけない。でなければ、痛い靴 = 悪い靴と判断されかねません。
さらに、靴が好きというわけではないお客さんとは共通言語がほとんどないわけですし、ビスポークシューズはこうあるべきという靴好きやメーカーとしての常識は、お客さんにとっては極論どうでもいいわけで、常にそのお客さんを見てその人が快適に履けて気に入ってもらえる靴を作るという考えをお持ちです。
ただし、靴好きではないお客さんの場合は、デザインやフィッティングを任せてもらえる場合が多いので、お客さんが希望する方向性を見極められたら、あとはご自身の感性や経験をその靴に詰め込む。そんな自己表現という名の挑戦を続けられています。
そのように気持ちが入る靴づくりをされているからこそ、小林さんの感性がガツンと詰まりまくった、世界観がハッキリした靴ができあがるのかもしれません。
また、例えば僕みたいに足が小さくてサイズが少ない方や逆に足が大きくてお困りの方の受け皿でもありたいというようなこともおっしゃっていました。
脱ぎ履きの多い日本の文化的な理由なのか、レイジーマンのご依頼が多くご自身もレイジーマンの木型は得意とおっしゃっていました。
どれも素敵です。
逆に小林さんがお客さんのために作ったのではなく、ご自身のためだけに作った自己表現の塊のような靴も見てみたい…。
KOKON のハンドメイドライン
石川県金沢市の靴店 KOKON さんという名前は靴好きであれば聞いたことのある名前かと思いますが、そこでも小林さんの靴をオーダーすることができます。KOKON の靴には東京の靴職人さんが作られているものがあって、それと同じように KOKON ブランドの中に小林さんの作るハンドメイドラインの靴がもうひとつあるという位置付けです。
何度もやり取りを重ねながら開発された木型で作られる靴で、KOKONさんの意向だけでなく、そこに小林さんの考えも反映された木型です。
詳細やお問い合わせなどは When webサイトから。
最後に
素敵な靴のお写真がたくさんインスタに掲載されていますので、是非ご覧になってみてください。
インスタ:@s_when
考えたことはありませんでしたが、靴を知らないお客さんに対して靴をお届けするのと我々靴好きを唸らせる靴とでは、また違ったアプローチが必要なのかもしれないなぁと思いました。言われてみれば当たり前なのかもしれませんが、靴好き故そういう考え方を忘れていたことに気付かせていただきました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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