革のダイヤモンドとも称されるコードバン。
中でもナチュラルカラーのコードバンという非常に珍しくデリケートでセンシティブな素材を使った靴のエイジング記録です。
2019年の12月に届いたので、ちょうど3年経ちました。
まぁほんっとによく履いた靴ですね。
とても気に入っています。
ナチュラルコードバンの色の変化
こちらが現在。
そして、これが新品。
色が濃くなりました。
光の当たり方で比較するのは難しいのですが、3年後の現在、色が濃くなり、シワとツヤが増しました。
この靴のスペックは後ほどご紹介しますが、夏に履くことを想定してオーダーしたものなので、色は濃くなってほしくない靴でした。
そうだ、スペイン・マヨルカ島のカルミーナの工場現地でオーダーさせてもらった靴です。恥ずかしいほど拙い英語で。笑
しかしながら、どんな靴であっても薄い色の革を薄いまま保つのは本当に難しい。
この靴と出会って、避けられない色の変化を目の当たりにし、多くの経験と学びを得ました。
そんな思い出深い靴でもあります。
雨も紫外線も存分に浴び…
ただ、これは仕方がないことでして、コードバンはタンニン鞣しの革なので日光に当たると色が濃くなります。好きすぎるあまり夏にバンバン履いたので、そりゃ濃くなっても仕方ないですよね、ということです。
逆にクロム鞣しの革は油分が抜けたりケアを怠ると色が薄くなります。
なので、エイジングに失敗したというわけではないと思いたい。
同じようにナチュラルコードバンをお持ちの方がいらっしゃったら、不安に思わないでいただきたいのです。
あなたの靴も同じようにある程度は濃くなりますから。
また、日光だけでなく雨に打たれたこともありました。
ご存知の通り、コードバンは銀面がないため吸水性が抜群です。シミや水膨れになりやすい、デリケートでセンシティブな素材としても有名です。
クリーナーで雨ジミの色抜きを試みましたがどうにもならず、結果濃くなる一方でした…。
ソールもナチュラルだったのですが、雨の影響でつま先だけ濃くなってしまいました。つま先だけ濃いのはなんか気持ち悪いので、最近はソールにも少しオイルを入れて色を均一にするよう試みています。
雨の日も履きたいくらいこの靴が気に入っていた、ということです。
いや、雨の日に履いたんじゃなくて、晴れてたら雨が降ってきたが正解。
コードバン特有のシワとツヤ
しかしながら、コードバン特有の「シワ感」は存分に味わわせてくれるため、いくら色が濃くなろうがそこはやはりコードバンです。
ツヤと濃くなった飴色が相まって非常に魅力的じゃありませんか?
ただ、割と大きめで、しかもだらしなく広がったタッセルを2つぶら下げているので、甲の履きジワを強調したいというよりは、全体的な艶感を楽しむのが良さそうです。
新品の時よりもツヤ感は圧倒的に増していますので、いい育ち方かと。
でもこれくらいボリュームがあるタッセルの方が、なんというか「ぶら下げてる感」があって良くないですか?
コードバン靴のお手入れ頻度
コードバンは元々油分を豊富に含む素材です。
ただ、環境や時間の経過によって油分が少なくなると、毛羽だったり艶が鈍くなってきてしまいます。
また、ロウや油分を過剰に含ませると、革が屈曲する際、履きジワからそれが滲み出てきます。(これをスピュウと呼びます)
というわけで、過度なお手入れによって色が濃くなりすぎるのも避けたいので、本当に最低限のお手入れにとどめました。
頻度というより、スピュウが出たら少しクリーナーで拭いて、デリクリを塗布する、という感じです。
ブラッシングするだけの時もあれば、逆にオイルを塗布して寝かせたこともありましたが、一番楽なのはオイルを含ませたブラシで表面にうすーくオイルを乗せて馴染ませるというズボラケアでした。
艶出しはオイルが理想的
コードバンはコードバン層という馬の臀部にのみ存在するコラーゲンの繊維層を同じ方向に寝かせて平らにすることで、あの特有のツヤを出しているわけですが、素材本来のツヤを楽しむのであればロウ分はそこまで多く必要ではないはずです。
という意味では僅かにオイルを加えて、表面をレザースティックで整えてあげれば十分ツヤは出るということになります。
かっさ棒で擦りまくってきました。
未だかつて僕の靴の中で、これほど体重をかけられた靴はないだろうというくらい、かっさ棒でぐりぐりやられた靴でもありました。
クリームはロウ分の無いもの
この靴に限っては色付きのクリームが使えないので、無色のクリーム一択ということになるのですが、ロウ分が多いクリームはスピュウになりやすいため、できるだけロウ分の少ないクリームで仕上げてきました。
主にデリクリ。稀にオイル。
そんな感じです。
コードバンに限らず他の靴もそうですが、僕はあまり乗せないケアを心がけています。
僅かにオイルを含ませて、少しロウ分乗せたらそれで満足という感じです。つまりツヤツヤを目指していないということです。

靴のスペック
こちらの記事でもご紹介をしていましたが、この靴は結構おもしろい仕様で、ナチュラルコードバンに加えて、アンラインドでフレキシブルグッドイヤーでもあります。
アンラインド
アンラインドとは裏地の無い仕様。
ランラインドとはいえ、もともとコードバンのコシがあるため、他のアンラインドの靴よりは全然ハリがある靴です。
なので、アッパーが伸びてゆるくなったという感覚はほぼありません。
アンラインドだから多少伸びるかなと思っていましたが、さすがコードバンです。
アンラインドなので、ホーウィン社のロゴも見えたり見えなかったり。
フレキシブルグッドイヤー
さらに、フレキシブルグッドイヤーというリブテープを使っていない製法です。
構造的にはハンドソーンを機械で作る、みたいなイメージでしょうか。アンラインドと相まって、めちゃめちゃ履き心地は楽です。
カルミーナはカスタマイズオーダーがネットでできますが、そこでフレキシブルグッドイヤーを選ぶことができます。
楽なのでおすすめです。
新品のときの記事でも製法についてご紹介していましたので、よろしければ。

デザインバランス
夏に短パンで履くので、全体的に薄くて、履き口が広めのこのデザインバランスもとても気に入っているポイントです。
甲の上部も丸くて、非常にかわいらしい。
履きやすさ、デザインバランス、素材感など…さまざまな理由で、とにかくたくさん履いた靴でした。それだけ履いたらそりゃ出し縫いも見えてきてますわね。
サイドも継ぎ目がなくて、シンプルですごく贅沢な靴。
この靴が3年後どうなっているのか、そんなことを想いながらまた夏にゴリゴリに履いていこうと思います。
この靴がまた3年後にどうなっているのか、そんな時間的な尺度で見ることができるのは、経年変化のおもしろさであり、エモさでもあるりますよね。特に色の変化が楽しめる靴は。
明るい革は色が変化することはある程度仕方がないものと考えるとして、それをネガティブなものと捉えるのではなく、楽しみとして感じさせてくれた靴でした。
今年もお疲れ様でした。
大変お世話になりました。

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