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サイドエラスティックの失敗から学ぶ靴の素材選定の話 [Anthony Cleverley]

誰しも失敗をし、それを糧に学び、成長していく。
東京にきたばかりの頃、web制作会社でクライアントと直接やり取りをするディレクターという職務に従事し、世間知らずの田舎者だった僕はそれはそれは失敗続きの毎日で、会社に迷惑をかけまくり倒したし、僕自身も辛い想いをした。その次の会社でもデカいクライアント相手にまぁ失敗を繰り返して、周りの方にサポートしてもらいながら本当にいろんなことを経験させてもらった。ありがたいことだ。
失敗はいつしても気持ちのいいものではなかったけど、今となってはあの頃失敗を恐れながらも数をこなす攻めの姿勢だった自分を褒め称えたい。

革靴においても多くの失敗を経験して、うまく付き合えるようになってきた。
ようやくなってきた。

今回の革靴

  • Brand : Anthony Cleverley
  • Model : “Churchill”
  • Design : Side Elastic
  • Size : 5
  • Sole : Leather Sole



木型と装飾の圧倒的存在感

アンソニー・クレバリー [Anthony Cleverley] チャーチル [Churchill] というモデル。
クレバリーらしいチゼルトウで攻めたシルエットの靴だ。装飾の多い複雑なデザインではあるが、少し高めのヒールとこのつま先のシルエットも相まって既成靴の中では圧倒的な存在感を放つ靴だ。

このデザインについても少し思うところを書かせていただきたいが、それよりクレバリーのこのシルエットには脱帽だ。ローファーだと少々ロングノーズに感じるし、好みが別れるところだと思うが、どのデザインも基本このチゼルに乗せて成立させてしまうのは、このブランドならではだ。

レイジーマンと呼ばれるこの「サイドエラスティック」というデザインには、細い革で覆われた伸縮素材が存在する。サイドエラであれば靴のデザインがどうであれ、この並行する線が何本も入ることになるわけだが、その存在感をうまく緩和してるのがこのウイングチップのデザインなのではないだろうか。
ステッチや穴飾りによって靴全体に繊細な装飾を施すことで、この存在感の強すぎるエラスティック部分を馴染ませる、ウイングチップだからこそ成立するデザインだ。
靴紐を模した薄革の装飾というアイデアも秀逸。考えた人は天才だ。

ただ、クレバリーのRTWではローレンス [Lawrence] というプレーンなサイドエラもあるが、それはそれでいい。靴紐を模した装飾はないのでレイジーマンと呼べるかは不明だが、このあたりはもう好みの問題だろう。

そしてこのブランドビジュアルを体現するシューツリーも素敵だ。
クレバリーはいい。もう1足くらい欲しい。
ただめちゃめちゃ高い。

レイジーマンとの付き合い方

先日も申し上げた通り、僕は滑らかで透明感のあるスムースレザーが大好物なのだが、そうではない革を見ると少しでも「もっちり滑らか」な質感を出したいという欲求が働き、オイルを入れてしまう。
靴によってはそれでもいいかもしれないが、レイジーマンの場合だけはおすすめはできない。

この靴はこのパリッとしたドレス感が魅力ではあるけれども、どうも革のコシが強く、なかなか手強い靴だなぁと感じていた。
以前こちらの記事でご紹介したストレートチップのボディー [Bodie] はすごく滑らかでもっちりとした好みの革を使っているけれども、この革はなんでこんなに硬いんだろうと不思議に思っていた。同じブランドなのに、靴によって革の素材選定が全然違うんだなぁと。

それに関してはこの靴を履けば履くほど納得で「紐靴を模した紐靴でないこの靴」は当然のことながらサイズ調整ができない履物だ。なので、ローファーやスリッポンと同じく革のコシがなくなってしまうとユルさを感じやすくなる。しかもサイドにエラスティック素材があるので、革が柔らかくなりすぎるとますます甲の抑えが効かない。
つまり、靴のデザインに合わせて、長く履いてもコシを保てるヘタらない革が選ばれているのではないだろうか。

逆にオイルを入れすぎてしまうと革は柔らかくなるが、その結果この立体的なシルエットと履き心地を損なう。キツめで靴を買うことが多いので紐靴ならそれでもいいが、この靴はそうではない。結構オイルを入れてしまったので全体的に少し靴がゆるくなった気がするし、甲のまわりの立体感も緩やかになり丸みが出てきた。

新品当時からめちゃめちゃキツいフィッティングではなかったのと、グッドイヤーの沈み込みが出たのも原因だと思う。
見た目的にも履き心地的にも、革が柔らかくなりすぎてしまうと都合の悪いこの靴に対して、それを促すお手入れをしてしまったのは僕の失敗だった。今まで革の柔らかい表情が見たくてミンクオイルを塗ってきたが、しばらく前からは水分の多い乳化性を使いながら革の様子を伺っている。

しかしながら、27万の靴を失敗と捉えるのは精神衛生上良くないので、良い経験をさせてもらったと思うのが良さそうだ。やはり失敗はいつしても気持ちのいいものではないけれども、あの頃と同じくこれからも失敗を恐れながらも数をこなす攻めの姿勢でありたい。

そしてスリッポンと同じくこのサイドエラスティックというデザインは脱ぎ履きが便利だ。もう1〜2足、違うデザインのサイドエラが欲しい。次はもっとキツめのサイズで欲しい。

ジョージ・クレバリー とアンソニー・クレバリー 。 英国靴ブランドとしては比較的新しいブランドですが、その見た目やフィ...

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革靴ジャーナリスト/ブロガー

Kohei Kusumi

『革靴の魅力や靴磨きの楽しさをもっと多くの人に知ってほしい』という想いでブログやYouTubeで情報発信を行っています。
シューメーカーのブランドサイトやオンラインショップの制作・カスタマイズ、広告運用を受け持ったり、ブランディングや商品開発のコンサルなども手がけています。

月間最高ページビュー数:41万回
・webサイト設計、制作
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