2023年 Spring & Summer の新作の展示会が開催されるということで、トレーディングポスト青山本店へお邪魔してきました。
トレーディングポストといえばインポートシューズから国産靴、またオリジナルブランドまで多数展開している、歴史ある革靴のセレクトショップですが、今回はその中でも販売足数の多いクロケット&ジョーンズ [Crockett & Jones] に関するおもしろいお話が聞けたので、そのあたりを重点的にご紹介させていただきます。
堅実なものづくりへのポリシー
Edward Green
英国靴ブランドでも大手メゾン傘下にあるブランドは、時代に合わせてスニーカーのようなコンフォートシューズを展開しているところも多く見られます。
ただ、昔ながらの革靴だけを今でも作り続けているブランドもあって、それに代表されるのがエドワード・グリーンやクロケット&ジョーンズのような、老舗英国ブランドです。
ここ数年の疫病禍で、ドレスシューズに対する需要が落ちたのは日本だけでなくイギリスもその他の国も同じで、革靴においてもコンフォートな流れを強く感じます。
スニーカーのような見た目のものでなくても、ローファーのようなカジュアルなものから、履き口を広く取ったベルジャンシューズ、また機能的にもコンフォートなアンラインドの靴やフレックスソールや軽めのソールのものも増えた印象です。
良くも悪くもそこに断固逆行する姿勢を見せるのは、大手メゾンが持つ資本力と製造体制の違いもあることと予想しますが、でも一番は自分達のものづくりに対するポリシーに誇りを感じているから。
どこも、クラシックなドレスシューズというカテゴリの中で試行錯誤しながら、同カテゴリ内で時代に合わせて価値を見出せる靴づくりを続けているようです。
今回の展示会もやはり、そんなクラシックなドレスシューズという大きな括りの中でのコンフォートな仕様やデザインのものが多く見られました。
一方で、ブランドの歴史と技術を感じさせるクロケット&ジョーンズのアーカイブコレクションという新作もあり、そのコントラストにブランドの強いこだわりと、それとは逆に、抗えない時代の流れを感じます。
Main Collection
Main Collection
一見普通のローファーやスリッポンですが、色味や素材がカジュアルな装いに合わせやすくなっている、メイングレードコレクションの展開です。
スーパーフレックスレザーソールという屈曲性の高いレザーソールの仕様なので、見た目にも履き心地にもコンフォートなモデルです。
木型とデザインの柔軟性
英国靴に限らずインポートシューズは、我々日本人にとってかかとの大きいものが多いのも事実です。
しかし、日本をひとつの市場と捉え、日本人向けの木型を展開してくれているのがクロケット&ジョーンズの特徴でもあります。
ただ、吊り込み代(しろ)も変われば、靴の型紙も変わって、デザインバランスも変わってくるので、ひとつのデザインを違う木型に載せ替えるというのは、決して簡単な話ではありません。
さらに木型だってサイズごとに作る必要があるし、その木型用の型紙も、中底や本底の抜き型なんかも必要になってくるわけで、ひとつの靴を作ろうと思ったら実は結構な設備投資が必要になります。
おそらくトレーディングポストを運営するプレステージシューズさんとの長いお付き合いの中での信頼関係もあると思いますが、クロケット&ジョーンズは日本市場に向けての開発や設備投資に柔軟に対応してくれています。
当初は日本人向けに開発された木型だったけど、そのフィット感が評価され本国でも採用されている「逆輸入」的ポジションの木型もあったりします。
こちらの367Eという木型です。
Hand Grade Collection
歴史もブランドネームもあって、さらに技術力もあって、なおかつ日本向けの木型を展開してくれているときたら、やはりクロケット&ジョーンズを履きたいと思う人も多いことは請け合いかと。
いろいろ履き比べをした結果、やはり履き心地を求めてクロケットに戻ってくる方も多いのだとか。
Hand Grade Collection
ウイングチップサドルローファーも素敵。
とにかく、日本でクロケット&ジョーンズが愛される理由を垣間見た気がします。
技術力の賜物・アーカイブモデル復刻版
多くのブランドのOEMも請け負い、かつてはジョンロブの靴も作っていたクロケット&ジョーンズですが、その技術力の高さを活かした革靴を展開しようというのが同ブランドの「ハンドグレードコレクション」です。
上質な素材へのこだわりだけでなく、底の仕上げがヒドゥンチャネル(縫い目が見えない仕様)になっているのがハンドグレードコレクションの特徴です。
そのハンドグレードコレクションの技術力を活かして、過去のアーカイブの中から現代的にアレンジして作られたという位置付けの「アーカイブコレクション」も2023SSのモデルで展開される予定。
アーカイブコレクションは3足。靴の隣に過去の作品の写真が置いてあります。
それはそれはキメの細かい美しい革を使い、ステッチのピッチも細かく、非常に精緻なつくりのビスポークシューズの写真かと思いきや、それは過去に同社が既製品として販売していたモデルとのこと。
靴好きの方々なら、間違いなく一目でその凄さがお分かりいただけると思います。
ただ一言、見事でした。
もう一度言いますが、既成でこのクオリティを作っていたのです。
大きめの穴飾りも印象的で、現在の既成ラインナップと違います。
ただ、当時の木型はかなり細いので、それを現代の細身の357Dという木型で作ったもの。
こんな靴を既成で作ってたんだと、圧倒されました。写真だけでも見る価値があると思います。
早くて2月から、商品によっては5月から販売されるものがあるようです。
クロケット&ジョーンズ以外にも各ブランドから新作が展示されていましたので、春夏に向けての靴をお探しの方は来年2月以降トレーディングポスト青山本店に足を運んでみてください。
アクセス
- トレーディングポスト 青山本店
- 住所:〒107-0061 東京都港区北青山3-5-2 EVOL AOYAMA 1F/2F
- 場所:トレーディングポスト青山本店
- 電話:03-5474-8725
COMMENTS コメントを投稿する