工場見学

原皮が鞣されて革になるまで…タンナー工場見学【植物タンニン鞣し・クロム鞣し】

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工場見学

 

スコッチグレインのヒロカワ製靴さんのご好意で、兵庫県姫路市の株式会社山陽というタンナーさんにお邪魔させていただきました。鞣しの工程をざっくりご紹介させていただきますので、社会科の工場見学のような気持ちでご覧になってみてください。

 

 

塩漬けされた原皮の保管

 

鞣されて革となる牛の原皮(げんぴ)は、屠殺(とさつ)された後、腐食を避けるためにこのように塩漬けにされて鞣し工場に送られ、常に10〜12℃で温度管理をされた倉庫で保管されます。
原皮の状態だとまだ毛が残っていてなかなか生々しい見た目なのでそちらは最後に掲載しておきますが、このように綺麗にたたまれて届きます。

 

 

 

 

保管後、鞣す工程に入る前に皮につけた塩を水で洗い流します。
折りたたまれて塩漬けされているので、このような大きなタイコと呼ばれるタルでグルグルと回しながら塩を洗い流します。ドラム式洗濯機の要領で、生後2年程度の牛の皮なら一度に120〜130枚程度を同時に洗浄することができます。

 

ちなみに、革が一枚できるまでに約1トンの水が必要になると言われています。
タンナーは必ず河川に隣接しているのは、日本に限らず世界中で共通です。

 

 

 

次は石灰漬けと呼ばれる工程で、アルカリ性の薬剤で革のタンパク質を膨張させて繊維をほぐします。(アルカリ膨潤と呼ばれます)
その時点で一時的に皮の厚さが5〜6cmほどに膨れ上がっているので、床面(銀面の反対側)の繊維をカットし、カットされた繊維はコラーゲンやゼラチンの原料として活用されます。

 

確かこの機械だったはず

 

 

鞣し(なめし)

次は鞣しの工程です。
鞣しの方法は2種類あります。植物タンニン鞣しとクロム鞣しです。石灰漬けの段階ではアルカリ性だった皮を鞣し剤が酸性に戻すため、膨張していた繊維が元に戻り、皮の繊維がさらにほぐれて柔らかくなるというわけです。
鞣すという時は『革』を『柔らかくする』という感じでできていますが、この工程こそが鞣すという言葉の所以でもあります。

 

 

植物タンニン鞣し

 

こちらがピット。
植物タンニン鞣しをするための槽です。ここに植物タンニンの濃度の違う液体が各ピットに入っていて、濃度の薄いピットから順に浸けていきます。濃度を変える理由は、最初に濃い液体に浸けてしまうと表面だけに液体が浸透して皮の中まで十分に浸透しないことがあるからです。
3週間から1ヶ月ほどこのピットに浸けて鞣します。

 

佐藤我久さん

 

植物タンニンで鞣された革は染料を入れたり仕上げをする前は、このように生成り(きなり)のうっすらタンニンの色素が含まれるヌメ革になります。
革靴のアッパーだと1.2〜1.4mmの革が使われますが、厚みのあるヌメ革は靴の底材やバッグやベルトなどの革小物に使われる場合も多いですね。

 

 

クロム鞣し

 

そしてこちらがドラム。
先ほどと同じく回転式で皮とクロム鞣しの薬品を入れて回すことで鞣されます。タンニン鞣しよりも時間が短縮できる方法です。
クロム鞣しで鞣された革は、一時的にクロムの薬剤の色が革に染み込むため、このように青みのある状態で加工をされていきます。この状態をウェットブルーと呼びます。

 

ピットとドラムの両方を保有しているタンナーは珍しく、日本だと山陽さんだけと伺っています。また、世界的にもだいたいクロム鞣しの革が8割程度、植物タンニン鞣しの革が2割程度の割合で生産されていると言われています。

 

ウェットブルー

 

こちらはオランダの牛の原皮ということもあり、傷や血筋なども少なく非常に綺麗ですが、この段階で初めて革の品目が決まって等級が決まります。
過去の統計があるので、原皮の産地によってそこまで大きく革の等級が変わることはないのですが、想定外に低い等級のロットがあるとこの時点で低い等級の革に設定される場合があるということです。

 

 

シェービング

 

品目が決まったら必然的に革の厚みや仕様が決まるため、その仕様に合わせて薄くするシェービングを施します。
カットされた革の繊維は肥料などの原料として再利用されます。

 

 

 

 

また、革の外側の余分なところはこの段階で手作業で切り落として次の工程に入ります。

 

 

 

染色・加脂

 

次はドラムで染色と加脂(かし)を行います。文字通り革に油脂を入れる工程です。この段階ではお湯を使うことで、脂が溶けて革の繊維の中に浸透しやすくなります。
また、色ごとにタルを使い分ける場合があったり、サンプルの革を染める専用のタルがあったりと、広い工場内にはとにかく大小様々なタルが設置されています。

 

また染料も種類が多く、必要に応じて混ぜて使われています。薬品の種類も1,000種類以上あるらしく、在庫管理も大変そうです。

 

まだまだほんの一部です

 

 

乾燥

 

ここまでは全て革が濡れている場外で加工されますが、ここでようやく乾燥をさせます。
しかし、革は乾燥させると体積が減って縮みます。革は面積で売られる製品なので縮んでほしくありません。なので短時間でかつ低温で乾かすことで革を縮めない設備が備わっています。
このように革が空を舞う乾燥機や電磁波を使う乾燥機など、とにかく設備が多くそのぶん広い土地がないと難しい産業であることもわかります。

 

 

塗装・艶出し

 

こちらはガラスレザーの樹脂コーティング加工なので、革表面に均等に樹脂をコートします。
他の革であればスプレーを吹きかけて塗装をするものもあります。革の仕上げによって使い分けられてるので、塗装用の設備だけでも3〜4かもう少したくさんありました。

 

 

スプレー装置を経て、こうなります。

 

 

 

アイロン・型押し

 

アイロンがけをし、革の表面を整え艶を出します。
機械でアイロンをかける設備もあるのですが、職人さんが手作業することで微調整を加え、より均等に革の表面を整えることができるというわけです。

 

 

ピカピカのローラーで革の表面を整える機械も。

 

 

 

 

こちらの板。底面にうっすら模様があるのがわかります。これは型押し用の板で、これを革に押し当てて力を加えることで型押しの革が生まれます。
この型もいろんな種類があって、革の品目によって使い分けます。

 

 

検査・計量

 

出荷前の検査工程です。
こちらも職人さんが1枚1枚目視と手作業で確認をされていました。

 

 

 

 

これ、革を通すと自動で面積を計測してくれる機械。
革って形が複雑なので、こういう機械がないと計測は難しいのかもしれませんね。

 

 

 

こんな流れで皮が革になっていくのです。

 

原皮

 

飯野さん

 

 

天然原料故の難しさ

先ほど革を鞣した状態でようやく品目が決まるというお話をしましたが、逆にいうと鞣しの工程を施した革であっても製品にならないものもあるわけですね。特に革靴にはトラと呼ばれる首や肩に見られるシワや血筋、キズなど天然の跡を避ける傾向にありますから。
しかし、工場見学をオーガナイズしてくださったヒロカワ製靴さんはそういうタンナーさんの事情をご存知なので、製品にならない革をいかに靴に使うかというところに知恵を絞られてきました。
そうしてできたのが、ご存知スコッチグレインのスパイダーとかマトリックスというモデルですね。

 

スパイダーは蜘蛛の巣のように革を縫い合わせるので手間がかかりますが、少しでも革の余った部分を再利用しようと考え出されたモデルです。

 

金箔のスパイダー

 

 

また、マトリックスはウェットブルーの状態で革に傷を入れて仕上げることで、革にもともとあったシワや血筋を目立たなくさせるという効果がありますから、タンナーさんとしても靴メーカーさんも嬉しいアイデアというわけです。

 

奥野さんのマトリックス

 

 

廣川社長が自ら傷を入れる動画です。この日は3名マトリックスを履いてる方がいらっしゃいました。

 

 

 

5時間やると腕がパンパンになるそうです。笑

 

 

最後に

 

タンナーさんだけでなくメーカーさんのご苦労を知ると、革を大事にしなきゃなという想いが強まります。僕は比較的してる方かと思いますが、靴に限らず革製品のお手入れをもっと多くの方にしっていただきたと改めて思った工場見学でした。
めちゃめちゃおもしろかったです。貴重な体験をありがとうございました。

 

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是非ご覧ください。

 

 

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