1年前、J.M.WESTONのアイコンシューズ シグニチャーローファー [Moccasin 180] というモデルを購入いたしました。
23.5cmの足で、普段UK5やUK5.5を履いて幸せに暮らしているのですが、何を血迷ったか4のCウィズを購入しまして、結局1年間で外で履いたのは4回という、失p…いえ、非常に低コスパな買い物をしました。
イタいとかキツいではなく、足の血が止まって痺れを覚えるほどのキツさだったのですが、めげずに部屋履きを繰り返した結果、最近ようやく2時間くらいは履いていられる程度にまで馴染みました。何度も諦めては再挑戦し…という孤独な戦いを強いられた1年でした。
しかしこの失ppa…いえ、この戦いを経験したことで J.M.ウエストンというブランドの美学を垣間見ました。
これがすごくおもしろい気付きだったのです。
圧倒的な堅牢性
J.M.WESTON – Mocassin 180
小さいサイズだから馴染んでもキツいことは当然理解しています。それでも諦めずに何度もオイルを入れて長いこと部屋履きで馴染ませてきましたが、ちっとも馴染まない。笑
巷ではよく「修行が必要な靴」と言われ、堅牢な靴の代名詞的存在です。なので手強い靴であるということは十分理解はしていました。
実際履いてみて感じた手強さは2つありました。革質と底材。
①コシのある吸いにくい革素材
まずは革質について。
昔はどういう革を使っていたか存じませんが、僕が購入したこのローファーのアッパーはクリームやオイルの吸い込みが非常に少ない革でした。さらにパリッとした強いコシのある革を使っています。
他の靴はオイルを塗ると、しっかり吸い込んで翌朝ぷっくりもちっとした質感になっているのですが、ウエストンは一晩経っても、革表面にうっすらオイルが浮いている感じが見てとれるのです。
革は少しだけ柔らかくなっているので多少は吸ってはいるようですが、ガンガン吸い込む感じではありません。
よく使っているレーダーオイルのご紹介はこちら
購入当初は、足がむくんだ夕方だと足を入れることさえできなかった 180 が、今では入るようになったわけですから、確実に革が伸びて底も沈んだはずです。とにかく革に伸びてもらわないと、そもそも足が入らないわけですから、かなり乱暴にオイルを入れて部屋履きをしてきたわけですが、それでも革のコシが失われておらずパリッとした表情を保っています。
ライニングも同様にしっかりとしたコシのある革を使っています。
吸い込みの強い革はオイルを含むとかなり柔らかくなるので、キツ目のサイズの靴を選ぶ僕には都合が良いです。しかし、吸いすぎて油分過多になると、革が柔らかくなりすぎてクタッとしてしまうというデメリットもあります。
ウエストンの革は吸いにくいだけでなく、クタッとしない革を選ぶことで、長く履いてもそのパリッとした表情を維持することを意図して設計されているのではないか、ということです。
アンソニー・クレバリー [Anthony Cleverley] のチャーチル [Churchill] というサイドエラスティックの靴がございます。以前こちらの記事でご紹介した、同じくアンソニークレバリーのボディー [Bodie] というそストレートチップのモデルがあるのですが、チャーチルは革がパリッとしていて硬く、一方でボディーはもっちり柔らかい革が使われていることに疑問を覚えました。
僕は革としては後者の方が圧倒的に好きだったので、なんか不公平だなって思っていたのですが、サイドエラは紐靴のようにフィット感の調整ができない靴です。なので長く履いて革が伸びるとサイズ感も緩くなってしまいます。
靴のデザインや構造によって革を使い分けているのでは?というブランドの思想に触れられた気がします。
ボディーのご紹介はこちら
個人的には吸う革の方が断然好きだったのですが、こういう吸わない(吸いにくい)革も悪くないと思った、ウエストン2年目の夏でした。
②媚びない底材
バスタン社 [Bastin & Fils] という、ウエストンにのみ植物タンニン鞣しのレザーソールを納める『こだわりの権化』みたいなフランスのタンナーがあります。
とにかく密で硬い底材を、手間と時間をかけて作っています。このソールもウエストンの堅牢性を物語る要因のひとつと言えます。
柔らかいレザーソールには、馴染みの良さや履きやすさはありますが、小石がボコボコと埋まったり雨に濡れると毛羽立ったり摩耗が早くなるものあるのも事実です。
しかしこのバスタンのレザーソールはシングルソールであってもゴリゴリに硬く、小石がバンバン埋まることもなく、絶対に摩耗させないという強さ感じます。ゆっくりと時間をかけて足に馴染み、長く履くための素材です。
果たしてその硬さが足にいいのかはわかりませんが、足入れした時の柔らかさみたいな第一印象の良さではなく、硬くてヘタらない素材と長く履ける堅牢性こそがウエストンの美学。消費者に媚びるようなそぶりは一切見せません。
修行が必要であってもそれを承知で履きたいと世間に思わせる靴、というわけです。
そんなウエストンの美学を妄想し、ひとり胸が熱くなります。
ベーシック故の使いやすさ
J.M.WESTON – Great Classics Tassel loafers
実は 180 よりも Great Classics というシリーズのタッセルローファーが好きだったのですが、モカシンがスキンステッチになっているせいか、16万円(2年前)とかなり高価だったのと、くるぶしの下がどうも当たるのが気になって断念しました。
一方でこの 180 はフレンチローファーの代名詞のような靴です。
ローファー党を公言しておりますので、180 は経験しておくべきでしょうということで購入しました。180 はベーシック故、ジャケパンスタイルに合わせてもいいでしょうし、オフに履いてもいいでしょうし、という合わせやすさ・使いやすさが魅力なのだと思います。
ウエストンはベーシックでこの上なく上質な素材の靴を提供されているという印象です。
結論、サイジングは重要
J.M.WESTON The half-hunt derby 598
その点今回の 598 は5Cなので安心です。
この4月に値上げすると知って、3月末に駆け込みオーダーをしました。5Cは在庫がないからとフランスで作っていただいたようで、4ヶ月後の7月に届きました。5Dは丸の内店に在庫があったのですが、かかとが抜ける気がして5Cにしました。
届いて数日しばらく部屋履きをしていますが、こちらもやはりオイルをバンバン吸い込む革ではなさそうです。革の断面からはオイルを吸い込んで色が濃くなりますが、表面からはあまり積極的に吸っていないのがわかります。
パリッと感を維持しようとするブランドの強い意思を感じます。
あと、ウィズ展開も豊富で、モデルによってはAからFまで揃えるという徹底ぶり。(確かGもあったんじゃないかと思いますが、勘違いだったらすみません)
ウィズ展開が多いということは、足長と足囲の二次元的にサイズが存在するわけなので、足長で合わなければウィズを変えて足に合うものを探すことができるというメリットもあります。
その数の在庫は一体どうすんねんと思いますが。笑
さらに今回の 589 はダブルソールなので、ソールの返りが付くまでかなり時間がかかりそうです。
ストームウェルトに加えてコバが張っている仕様なので、アウトソールの面積が広いです。なので、かなり安定感はあります。細身の靴ばかり選んできた僕にとってはかなり新鮮な履き心地です。
とにかくこの靴はサイズ的には問題ないので、焦らず自然に足に馴染ませていこうと思います。
僕の好きなオイルを入れるというお手入れはこの靴には通用しない。それならばすぐに馴染まなくてもいいので、かてぇかてぇとボヤきながらウエストンの美学にどっぷり浸かってやろうと思います。
是が非でもパリッとした雰囲気を保って履いていきます。
J.M.WESTON PARIS
フランスの靴ですので。
パリッとね
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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